タクシーで公園に向かうまでの時間がとても長い。
一体何があったの?
そればかりがぐるぐるぐるぐる。
隣に座ってる洋介が、ガチガチに固まったまりえの身体を解すかのように頭を撫でた。
何も言わず、ただ優しく。
今日は涙腺が壊れてしまったみたい。
やっと止まった涙がまた、じわってしみでてくるんだもの・・・
「洋介、ゴメン・・・私いつも迷惑かけてばっかり・・・」
「ばかだな、そんなくらいお安いご用だ」
笑いながら、今度は頭をぐしゃぐしゃにされた。
だから、今はそういう言葉、もの凄い弱いんだってば。
▽ ▽ ▽ ▽
「まりえ、アレ、千里じゃないか?」
タクシーが止まったと同時に、公園のベンチに座って煙草を吸っている人物が目に入った。それを確認して、洋介とまりえは急いで中に入る。
「千里ッ!」
「千里くん」
二人の声に振り向いた彼は、硬い表情をしていた。
しかし、洋介に気づくと直ぐに表情を崩す。
「洋介、久しぶりだな、相変わらずお前ら仲がいいんだなぁ」
千里と洋介は仲がよかった。
お互い、懐かしそうに、そして少しだけ照れくさそうにしている。
「まぁな、・・・・・・ところで、アイツは?」
千里は、煙草を灰皿に押しつけて苦笑いをする。
「逃げられたわ、足速いったらねーよ」
逃げられた・・・
「・・・・・・どうする? とりあえず話聞くか? まりえ」
千里の真剣な眼差し。
それが何なのか、私は知らなければいけない。
聞いて自分がどうなってしまうのか、それはわからない。
もしかしたら、後悔するかもしれない。
けれど。
まりえは、怜二のことも気になるが、彼の話を聞かないと何も納得が出来ないと思い、小さく頷く。
千里はそれを見て、少し目を細めたあと、静かに語りだした・・・
その5へ続く
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