「洋介ぇ〜〜〜〜」
顔をぐしゃぐしゃに歪めて、抱きついてきたまりえを見て、洋介は心底驚いた。
「ど、どうしたんだ!? 何か、あったのか!?」
「うぅ・・・・・・もーダメ、もぅ・・・ッ、わあぁぁッ」
まりえから携帯がかかってきたときから、彼女は既に泣いていた様子だったが、まさかここまで凄いことになってるとは思わなかった。
昔から、大抵のことはそつなくこなすものの、どうにもならなくなると、こうやって洋介に泣きついてきた。
普段は穏やかなのに、泣くときは子供みたいに盛大な様子を知っている者は非常に少ない。
だけど、ここまでスゴイのは・・・
千里がいなくなった時以来か・・・・・・・・・・・・
「まりえ、とにかくな、泣いてていいからどっか入ろう? じゃないと風邪ひく」
「風邪なんて、ひけばいいのよ〜、・・・うぐッ、・・・うっうっ」
オイオイ、言ってること意味わかんねーぞ?
こりゃ、ダメだわ
「ほれ、はやく」
「なによぅ・・・」
「おんぶ」
「ぅっく、・・・恥ずかしいから、やだ」
「今更、恥ずかしがるような関係かよ? 俺の今の中腰でいる体勢の方がよっぽど恥ずかしいだろ!!」
確かにそうだった。
中腰で、両腕を後ろにまわし、まりえを待っている姿は相当滑稽だ。
かなり躊躇いがあるものの、まりえは仕方なく洋介の背中に体をあずけることにした。
「うぅ、・・・やっぱり恥ずかしいもん、みんな見てるし・・・うっうっ、ぐず」
泣くか恥ずかしがるか、どっちかにしてくれ。
この場面で間違いなく一番恥ずかしいのは洋介で、彼はまりえの足を抱えると、猛ダッシュでカラオケボックスに逃げ込んだ。
▽ ▽ ▽ ▽
「・・・少し落ち着いてきたか?」
「ん゛・・・・・」
ようやく涙が退いてきて、受け答えが少し出来るようになってきた。
「じゃあ、言えるよな? 何があったか」
「ん゛・・・・・」
まりえは深呼吸を数回した後、ようやく話し始めた。
「千里くんが、いたの」
「・・・なんだって!?」
「本物だった・・・昔よりちょっと大人っぽくなってたけど・・・・・・」
「・・・それで、泣いてたのか・・・・・・」
その答えに、まりえはフルフルと首を横に振る。
「泣いてたのは、それじゃない。・・・千里くんに会って泣いたのもホントだけど」
「・・・・・・じゃあ、何だ・・・?」
言われた途端、再び涙が溢れてきた。ボロボロと止め処なく流れてきて、もうどうしようもない。
「千里くんのいなくなった原因、・・・・・・・・・怜二だったのっ!!!」
その後はまた、わぁっと泣き出して収拾がつかなくなってしまった。
しかし、まりえの言ったこの内容。
洋介は顎に手をあてて、暫く考え込む。
そして、何度か同じようなやりとりを繰り返して、ようやく事の成り行きを伺い知ることが出来た。
その2へ続く
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