○第3話○ 芽生えた恋(その4)






 この前は色々見ている余裕などなかったけど、怜二の泊まっている部屋は普通よりもちょっとだけ広いと程度だった。スウィートルームにいて当然の人間なのに、そうしないのはさっき言っていた事が本当なのだと伺える。

『ウチはね、広すぎてイヤなんだ』

 なんだか哀しくなった。

 誰も帰ってこない家が寂しすぎて孤独で家を出たのだろう。
 だけど、家を出た今も結局は一人だ。やっぱり孤独は変わらないんじゃないだろうか?


「怜二、一緒にお風呂入る?」

 まりえにとっては何となく出た言葉だった。

 しかし、それを聞いた怜二は、紅茶をカップに注いでいるところだったが、ガチャンとポットを落とし、グルンと振り向いたかと思ったら、そのままで固まってしまった。

「あのね、よく弟とも一緒にお風呂入ったのよ? 体洗いっこしたり湯船におもちゃ浮かべて遊んだりして楽しかったわ」

 まりえの思考のズレに怜二は目眩をおぼえた。

「で? オレ達も今からそうやって風呂はいるの?」
「・・・・・・」

 怜二はまりえの側まで近寄り抱きしめた。
 彼女の耳に口をあてて囁く。

「なら、色々させてくれるんだ?」
「えっ」
「まりえさんの裸見せられて何もしないでいられるわけないでしょ?」

 それを聞いて、やっと自分の発言の大胆さに気づく。
 真っ赤な顔になり、体を離そうとしたが怜二は抱きしめた腕をゆるめない。

「やっ・・・・・・ちがっ・・・私、1人で入る・・・ッッ」

 ジタバタもがいていると、意外なまでにあっさりと腕が外れた。

「先どうぞ、オレ後で入るから」

 そう言って、ベッドに座りTVをつける。
 何事もなかったかのように普通にTVを見始める怜二は、やはり余裕そのものと言った感じに見えて、すこし悔しかったが素直にバスルームへと向かった。

 やがてシャワーの音が聞こえ出すと、怜二はバフンとベッドに寝ころんだ。


「やば・・・・・・暴走しそう・・・・・・・・・」

 先どうぞと言いながら、今すぐにでも風呂場に飛び込みたいのを必死で堪えていた。
 余裕などとんでもない。
 さっきからドクドクと心臓の音が五月蠅いくらいだ。

 少し経つと音が止み、やがてバスローブを着たまりえがやってきた。
 風呂上がりで紅潮した頬が色っぽい。
 気のせいだろうが目も潤んでいるように見える。



 ・・・・・・・・・・・・

 もう、我慢の限界だ。


 テレビを消し、無言で立ち上がる。

 気づいたらまりえを抱きしめて、柔らかい唇に自分のを重ねていた。

「ん・・・っ!? ・・・・・・れい・・・・・・んぅ・・・」

 夢中で舌を絡め、体の熱が一点に集中していく。

「んはぁ・・・怜二、シャワーは・・・あの・・・」
「・・・このままじゃダメ? オレ・・・・・・も、我慢できない・・・まりえ、さん・・・シたい・・・・・・」

 懇願するような怜二の瞳は、この上なく色っぽくて目が逸らせない。

「・・・・・・ぅん・・・あの、・・・・・・さっき言ってた・・・・・・無茶は、そのぅ・・・・・・・・・・・・」

 自分の言っていることが相当恥ずかしいらしく、殆ど消え入りそうな位の小さな声。

 しかし、その姿が逆に怜二に火をつけてしまう。
 それが分からないまりえは、荒々しく唇を貪られ、呼吸もままならないキスに目をパチパチさせて混乱している。
 そのまま抱きかかえられ、ベッドに寝かされながらもキスは止まなかった。

「れ、怜二・・・・・・ッ・・・あっ・・・・・・」

 耳の付け根から首筋を舐められビクリと体が震える。

「まりえさん、カワイイ・・・」
「怜二っ、ねぇ怜二ってば・・・あんっ・・・!」

 胸を揉みしだかれ突起を舌で転がされ頭が痺れる。
 肋骨の辺りからおへそ、そして下腹まで舌と唇を使って激しく愛撫され、その間も手は休むことなく胸を揉んでいた。
 待ってと言いたいのに、どんどん快感に支配されていく。とまらない。

「ぁ、・・・やぁっヤメッ」

「やめないよ、オレの体、まりえさんに刻みつけてあげるから」

 そう言って太股を抱え込み、股の間に顔を埋めて舌を這わせた。

「きゃぁ、や、そんなトコ、やめてぇ・・・・・・あ、あっ・・・」

 ぴちゃぴちゃと、子猫がミルクを飲んでいるような音をさせながら、時折蕾を口に含んだり、舌を硬くして中に差し込んだりする。ソコはビクビクと痙攣し、恥ずかしいほどの液を滴らせていく。

 恥ずかしい・・・
 恥ずかしいのに・・・えっちな声が・・・・・・
 自分を全くコントロールできない。

 確実に追いつめられて、どんどん押し上げられる。
 休むことの無い愛撫は彼女の全てを飲み込んでいくようだった。


「ッんぁあ、あ、あ、あぁ、も・・・・・・だめぇ・・・・・・ッ」


 だが、
 もう少しで、と言うところで怜二は体を起こした。

 まりえの頬は赤く染まり、荒い呼吸のせいで胸が上下している様がどうしようもなく悩ましい。
 そんな様子を見て、彼の唇が僅かにつり上がり、細めた目がやや潤んで甘い吐息を吐き出す。
 彼自身もまた、淫らで色気に満ちていた。


「いれるよ」
「え・・・? ・・・ンッ・・・!」


 返事をする間もなく、あっという間に彼のものに奥まで侵入されていっぱいになる。

 だが、彼自身とっくに我慢の限界を飛び越えていたから、本当は自分の事で精一杯だった。
 だけど、いきなり彼女の中に突き入れても苦痛でしかないということは分かる。
 愛撫がどんなものかなんてよくわからないが、まりえが感じると思われる部分を的確に見つけて責めてみると、驚くほど反応してくれた。その姿はあまりにも扇情的で、彼女をメチャクチャにしてしまいたいという衝動に駆られてしまう。

 彼女の中に入り込んで、あまりの快感にそれだけで胸が焼けるようで直ぐにでも動き出したかったが、それを必死に押さえこんて、まりえを抱きしめる。


「はぁ・・・れい、じ・・・私・・・」

「目の前にいるの、オレだからね、こうやって抱いてるのオレだからね、まりえさんっ!」



「ああんッ」


 怜二の激情がそのまま形となって現れたようだった。
 あまりの激しい抽挿にすぐにでも達してしまいそうで目の前がチカチカする。こんな快感がずっと続いたら狂ってしまう。

「まりえさんを愛してるのはオレだから・・・ッ、まりえ、さん・・・ッまりえさんッ」

 わかってる。
 怜二だけだよ。

 すごい

 どうしよう、とまらない。


「れいッ・・・怜二・・・・・・ッあ、あ、あ、あッ、ぃああんッッッ!!!」




 それから、

 怜二の激しさは一向に止むことはなく、


 何度も何度も、繰り返し彼は身体を求めてきた。



 まるで何かに取り憑かれているかのような様子に驚いたものの、私は不思議と、その全てを受け入れることが出来た。







▽  ▽  ▽  ▽


「・・・ごめん」

 まりえを愛おしそうに抱きしめながらポツリと呟く。

「・・・・・・怜二・・・」

 ぐったりとした身体を動かすのは大変だったが、自分の腕を怜二の背中にまわし後頭部を撫でた。

 あ、すごい、髪の毛柔らかい・・・

「・・・・・・風呂上がりのまりえさん見たら堪えられなくなっちゃった」
「・・・ビックリした・・・」
「うん、オレも」

 最初は余裕があるように見えたんだけどな。
 でも、多分この子の性格がそう見させているだけで、途中から実は全く余裕など無いことがわかった。
 この独占欲、みたいなものは想像以上だったけれど。


 だけどそのお陰なのかな
 なんだかやっと解放された気がする

 ホントはずっと誰かを愛したかった
 だけど、それをするのが怖くて、また失うかもしれないと思ったらできなかった


 お互いを大事なもののように抱きしめ合い、くっつきあった肌がとても心地いい。



「私、ちゃんと洋介に言わなきゃね」
「オレも一緒に行く」
「ダメよ、怜二がいると話がこじれそうだから」
「うわぁ、信用無さすぎ・・・っ」
「当然でしょ今日みたいなのイヤだもの! それに私がいけないのよ・・・」

 余りにも無神経な行動に自分がイヤになる。

 猶予期間が欲しいとは言ったものの一応つき合うことをOKしといてこの有様なのだから・・・自分のしたことは最低だ。

 謝っても許されることではない、だけど謝りたい。
 洋介は自分にとってかけがえのない人間だったから・・・もう友達にも戻ることは出来ないかもしれないけれど・・・・・・。


 ふと、時計を見ると9時半をまわっている。

「あっ、やだもうこんな時間! 私帰るわ」
「えぇ〜〜〜ッいつも思ってたんだけど、帰るの早すぎだよ!! 子供じゃないんだからさ、今日くらい泊まっていってよぉ、明日は土曜だし会社休みでしょ?」

 言いながらまりえの身体を撫でまわし始める。

「やんっ、エッチ!! そうはいかないの! ウチの人間結構うるさいから」
「も〜〜ッやだやだやだ!!!!」
「やだはこっちよ! これ以上あの子に不審な目で見られたら、あの家での私のプライベートが無くなるわ!!」

「・・・・・・へ? ・・・あの子? ・・・・・・うるさいのって父親じゃないの?」

「父親はちょっと前からニューヨークなの。ウチの場合弟がね、ちょっとうるさいの。最近帰りが前より遅くなったって、目を光らせてるわ、困っちゃう」

 そう、小さい頃からいつも二人きりだったせいか、自他共に認めるようなシスコン少年に成長してしまった。
 年は怜二よりも1つ下の17歳。

「・・・・・・ふぅん・・・じゃあ、男と会ってるって言えばいいじゃん」

 ふと、弟の顔を思い描く。

「それは・・・・・・・・・・・・やめとく・・・・・・」
「なんで!?」

「泣かせたくないもの」

 こんな事言ってしまうあたり、私もかなりのもんだと思うわ。
 でも、私にとってあの子はずっと愛を与える存在の全てだったから。
 泣いていれば駆けつけて、困っていれば助け船を出し、甘えてくれば抱きしめる、そんな存在だった。
 母親が忙しくて出来ないことは私がやってあげたかった。


「・・・あぁ・・・まりえさん〜〜今日はもう何が何でも帰したくなくなってきた」

「え? ・・・・・・きゃあッ・・・!!!」

 突然覆い被され、再びガッチリと身体を固定されてしまった。
 息をつく暇のない程の激しいキス。頭の芯が痺れてくる。

「・・・・・・んむぅ・・・・・・や、あん・・・」



「他のコトなんて考えられないくらい愛し合おうね♪」


 その目の奥に妖しい光が見えたのを最後に、激しい流れにのみこまれて、気づいたときには外が明るくなっていた。








第4話へ続く

<<BACK  HOME  NEXT>>


『キミだけを見ている』扉>>>


Copyright 2003 桜井さくや. All rights reserved. Never reproduce or republicate without written permission.