○第3話○ 芽生えた恋(その1)






 それから、怜二は毎日のようにまりえの前へ姿を現した。


 まりえの方も、彼と過ごす時間は何よりも楽しくて、気がつくといつも笑っている。
 駆け引きなどまるでない、ただ素直に自分を見つめる瞳、それがくすぐったいけれど妙に嬉しくて。
 だからなのか、怜二の前では自分を飾ったりせず、素直な気持ちでいることが出来た。


 そして。

 いつしか、彼が会社の前で待っている事を期待している自分。

 そんな気持ちの変化は自分でもよく分かっていたけれど、それがどういうものなのか、今ひとつ掴みきれないのだ。


 それに、彼が何故ここまで自分に執着しているのか、未だにわからない。


 私が過去を思い出せばわかるの?

 でも・・・・・・
 いずれは私の元を去っていくのかもしれない。
 今だけなのかもしれない。

 熱が冷めれば・・・・・・


 ぞくり、と体を震わす。


 それは、イヤ・・・だ。
 ・・・そんなの考えたくない。


 でも、前の時だって何も言わず突然いなくなってしまった。


 誰かを好きになって、もしまた失ったら・・・?


 こわくて仕方がないの。
 もう二度とあんな思いはしたくないのよ。

 失うのがこわい、いやだ、
 きっともう耐えられない・・・・・・



 だけど


 そう思っている自分こそが彼に執着しているんじゃないの?

 頭の隅でもう一人の自分が囁いている。







その2へつづく

<<BACK  HOME  NEXT>>


『キミだけを見ている』扉>>>


Copyright 2003 桜井さくや. All rights reserved. Never reproduce or republicate without written permission.