「で? 何で私になにも言わないであんな勝手なことしたのッ!?」
「ビックリしたでしょ♪」
「もうっっ、そういう問題じゃないでしょッ!!!」
あれから、食事した後社長とは別れて、今は怜二のホテルにいる。
いきなりバラした真相を聞こうじゃないの、とまりえは怜二に詰め寄っていたのだ。
「だってさ、兄さんもまりえさんの事、好きになったらイヤじゃん? 出来ることは早めにやっとかないと」
・・・なにを考えているんだか・・・・・・・・・
お陰で私なんか、明日から社長にどんな顔して会えばいいの? とか考えちゃって、全然食欲が出なかったわよ。
「いつか言うことだし、いいじゃん?」
それは、そうなのかもしれないんだけどね。
「えっちだってあんなにしたんだし、いいじゃん?」
話が変になってきたし。
怜二の手が私の服を脱がし始めて目が色っぽく潤んできてる。
「ね、きょ、今日はやめよ? 私、あの・・・・・・今日はちょっと・・・・・・」
ギュッと脱がされないように服を押さえると怜二にキスをされる。
深い深いキス。
「・・・・・・んぅ・・・・・・・・・怜二・・・お願い」
「そのお願いはオレの身体が受けつけておりません」
なにバカみたいな事言ってるのよぉ!
するり、とスカートの中に手が入ってきた。
「ひゃ、今日はヤなのッ・・・・・・まだ中が擦れているカンジがして・・・・・・ッ」
ふと、怜二の手が止まった。
と言うか、身体全体が硬直してる?
「・・・・・・?」
「・・・・・・・・・・・・まりえさんって時々スゴイ発言するよね・・・・・・でも、そんなこと聞いたら興奮しちゃって余計止まらないんだけど?」
スゴイ発言?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ
中が擦れてって・・・・・・・・・うわぁ・・・・・・
ハズカシすぎる・・・なに言ってるの、私!!!
自分の発言にやっと気づいた時、既に怜二の手によってまりえのストッキングは殆ど脱がされていた。
「あ、ああんッちょ・・・・・・れい、じ、やだって・・・」
怜二はちらり、とまりえを見た。
「優しくするから・・・・・・一回だけ、・・・・・・ね?」
そんなときの声も鳥肌がたつくらい艶めかしくて・・・
戸惑いながらも小さく頷いてしまった。
「・・・・・・嬉しい、あいしてるよ まりえさん」
熱い吐息が首筋にかかり、それだけで身体に力が入らなくなってしまう。
溺れちゃう
どんどん際限なく好きになっていく。
優しくされればされただけ、激しければそれだけ、あなたが好きになる───
どうしてなんだろう・・・・・・
「・・・・・・さん・・・・・・まりえ・・・・・・・・・」
遠くで声が聞こえる。
でも、それが段々近くに近づいてくる、低いけれどよく通るその声は・・・・・・
「あ・・・・・・まりえさんっ」
ぼやけた視界の先には怜二の顔。
「よかったー、気を失っちゃうんだもん怖かったぁ・・・!!」
心持ち情けない声を出しながらギュウッと身体を抱きしめられた。
怜二の肩が少し震えてる。
気を失ったの?
「ゴメンね、辛かった?」
辛い?
ううん、そうじゃない。
「怜二が、好きだなぁって・・・思ってた」
顔をあげた怜二の顔は泣き笑いのようになっていて、髪を掻き上げるように顔を触ると本当に幸せそうに笑った。
一緒にいた時間なんて関係ないんだね。
何故か無性に愛したくなるの・・・・・・・
「オレね、もっと早くまりえさんにちゃんと会いに行けば良かったな・・・・・・」
「・・・・・・そうね、何で見てるだけだったの?」
本当に信じられない。
見ているだけなんて暗いことするようには全く見えない。
そりゃ、初めて会ったときはこの子絶対オカシイって思ったし、一度だけ見た怖い顔もスゴク異常だって思ったけど、あれ以来怜二がイヤだと思ったことなんかない。
普通より強いんじゃないかと思える独占欲だって好きなら逆に嬉しい気持ちもする・・・・・・・・・
第一この顔だけでも相当もてるだろうに。
「年下だし、相手にされないと思ったから・・・」
あぁ、なるほど。
「でも、その割にははじめの日随分大胆だったよね」
「アレは・・・・・・最低なんだけど・・・・・・もうこんなチャンス二度と無いと思ったから無理矢理既成事実作ろうと思ったんだ・・・・あの時は自分の気持ちにせっぱ詰まっててまりえさんの事考えなかった・・・
一番考えなきゃいけないことだったのに・・・・・・それに、今までのオレじゃ、あそこで拒否されて当然なんだ」
「・・・・・・怜二?」
いままでの、怜二?
「驚くかもしれないけど、人の気持ちなんて殆ど考えたこと無かった・・・・・・みんなオレが笑っていれば喜んで言うこと聞いてくれたし、いつも笑ってたのだって、冷たい顔して命令するよりスムーズにコトが運んだから・・・・・・実際、今だってそうだし・・・・・・」
そうやって自分のコトを話す怜二はもの凄く傷ついた顔をしてる。
「オレは最低なんだよ・・・だけど、まりえさんと一緒にいて初めてちゃんと人のこと分かろうって思った。自分の力でどうにかしたいと思った・・・・オレのこと好きになって欲しいって・・・」
飯島という家が怜二をこんな風にしてしまったのだろうか。
両親はいつも仕事で、兄も年が離れていたために、殆ど一緒に遊ぶこともなく、使用人がいたとしても全て怜二の言いなりだったのだろう。
たまに家族と接する機会があっても、人なつこく笑っていれば『良い子だ』と思うだろうし・・・・・・。
だから、言いなりにならなかった私は、怜二にとって今まで見てこなかった色々な物を見直すキッカケになったのかもしれない。
「オレ、このままじゃおかしくなりそうだ・・・直ぐにでもまりえさんと結婚したい。そうすればもっといつも近くにいられるのに・・・」
「・・・・もっと近くに?」
「うん」
結婚かぁ。
言われて嬉しくないわけがない、たとえ今はまだ無理だってわかってても。
「子供は女の子2人で、家族みんなでいつも笑ってるんだ、きっと楽しいね」
「女の子2人? 決まってるの?」
「そうだよ、まりえさんにソックリの双子の女の子」
へんなの。
私は怜二に似た男の子がいいけどな。
でも
幸せだね、きっと。
そんな夢、本当に私も一緒にみていいのかな。
「まりえさん?」
「・・・・・・安心して良いよ、怜二だけだから。怜二だけ私のココロに、入ってもいいって許してあげる・・・」
怜二は息を呑んで唇を震わせた。
「うれしい・・・・・っ!」
人って、こんなに誰かを好きになれるんだ。
これ以上ないって思うのに、ドンドン好きになるの。
一緒にいるだけで幸せってスゴイよね。
第6話へ続く
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