『キミだけを見ている』扉>>>

○第6話○ それぞれの日常(その4)


◇まりえのいつもと違った日常◇


 学校の門の前で立ち止まり、感慨深げに校舎を見渡す女性がいた。それは何を隠そうまりえなのだが、その様子はいつもとは少し違っていた。


 来てしまったわ。


 久々の母校・・・・・・楽しい思い出もあったけれど、金持ちジュニアのおばかさん学校。
 それなりに偏差値は高かったけど、あくまで編入試験受けて転校してきた人や、わざわざここを受験してきた人にとっての話。
 殆どはエスカレーター式だから、幼稚園から大学まで何もしないで卒業できちゃう。

 お金さえあれば。

 私は、高校までここにいたけど、大学は違うところを受験した。
 いい加減、バカみたいな人間関係にウンザリしちゃったし・・・・・・

 始めてつき合った彼はここの学校を受験して入ってきた人だったっけ。

 何もかも輝いて見えたなぁ・・・
 意志の強そうな瞳とか、何にでも一生懸命な姿とか・・・



 うん。

 大丈夫、もう前ほど苦しくはならない。
 少し前だったらここに来るのさえイヤだったもの。

 怜二が想い出に変えてくれた。

 あっ、と。いけない、早くあおいに宿題届けなきゃ、ついでにお弁当も作ってきたの。
 5時間目だったからランチとる前にって、気合入れて作って来ちゃったわ。

 喜ぶかしら?
 待っててね、あおい





その5へつづく

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