『ラブリィ・ダーリン2』

○第4話○ 告白1〜兄・秀一の場合〜(その3)







 その夜、華が一人寂しく優吾の帰りを待っていると、秀一が酔っぱらってフニャフニャになってしまった優吾を担いでやってきた。


「すまない」

 幸せそうな顔をして、殆ど夢の中の優吾は、秀一の背中で気持ちよさそうにしている。
 男が男をおぶっている図というのは、端から見たらとても奇妙だったに違いないが、秀一は飲ませてしまったという責任感から、こうして重いのを覚悟して送ってくれたのだろう。

「ううん、ありがとう。パパ、重かったんじゃない?」
「あぁ、良い運動になったよ」

 やんわりと微笑み、優吾をひとまずソファに寝かせる。
 秀一は大の男を背負ってきた疲労からか、肩を回して身体を解している。


「優吾が酒に弱いのは知っていたが、益々弱くなった気がするな」
「ん〜、ほとんど飲まないからかな。でも、秀一伯父さんはお酒強いのに、不思議だね」
「社長なんてやっていると酒を飲む機会が多いからな。まぁ、それでも、前からあまり酔うと言うことはなかったが・・・、優吾の場合は体質だろう」

 言いながら、横で無防備な寝顔をさらしている優吾を見て苦笑する。
 優吾は、昔から酒にはめっぽう弱かった。
 しかし、少しならば、と思い、飲ませてしまい、同じような結果になるのはこれで一体何度目だろうか。

「伯父さん、ハイ、お水」

 華は台所から水を一杯持ってきて、秀一に差し出す。
 酔っているようには見えないけれど、何となくこういう時は水を出すべきかなと思った。

「あぁ、ありがとう」

 コップを受け取り、それに口を付ける。
 丁度喉が乾いていたから素直にありがたいと思った。


 そして、

 ゴクゴクと喉を鳴らして飲んでいる間、
 秀一は、唐突にあることを思い出してしまった。


 勿論、目の前の華に対しての・・・


 優吾の言葉を───








「・・・華」

「ん?」

 だが、幼さの残る、愛らしい表情で首を傾げる姪を見て、あの優吾の台詞は嘘だったのでは、という疑念をどうしても抱いてしまう。
 何気なく話しかけてしまったが、何をどう話すべきかなど見当もつかない。

 秀一は言葉に詰まってしまったため、とりあえず何でも良いから話題を、と思い、考えを巡らせた。

「・・・あ、・・・あぁ、いや・・・学校の方はどうだ? 楽しいか?」
「うん、それなりだよ〜。友達もいるし」
「そうか」


 学校のことを聞いておきながら、頭の中ではまとまらない考えがぐるぐると渦巻いている。


 ───本当なんだろうか。

 本人から聞いたこととは言え、目の前の少女が優吾と・・・なんてどう考えてみても想像に難しい。
 かといって華に直接聞くのは躊躇われる。

 暫く頭の中で自分がどうすべきか模索していた秀一だったが、これといった良案を思いつくわけでもない。
 考えるほどに迷路の中を彷徨い、抜け出せなくなる。
 絶対解けない難問と分かりつつ、無理矢理挑戦しているようなものだ。

 彼は、軽く息を吐き出すと、何かを吹っ切るように立ち上がった。


「さて、帰るかな」

「え〜!? もうちょっとゆっくりしてけばいいのに〜。秀一伯父さん最近ちっとも来てくれないんだもん、寂しいよ〜」

 腕にしがみついて拗ねる華を見て、その仕草や表情の可愛らしさに思わず笑みがこぼれてしまう。
 滅多に見ることが出来ない彼のこんな表情も、華には自然と向けられる。
 それは、本人には全く自覚のない事らしく、華を自分の娘のように思ってしまう、という彼の言い分は本当のところのようだった。

「明日も仕事だからな。また近いうちに来るよ、今度はお土産持って」
「うんっ♪」
「じゃあ、また。ちゃんと戸締まりするんだぞ。今日の優吾はあてにならないから」
「そうだねぇ」

 ばいばい、と手を振り秀一を見送る。
 無邪気な笑顔で見送られ、彼は少々寂しげに目を細めた。



 ───華と優吾、か・・・


 再び複雑な心境になり、出ない答えを探しながら、それでも自分の答えを見つけ出そうと思い、秀一は帰っていったのだった・・・・・・・・・











▽  ▽  ▽  ▽


「パパ〜、ちょっとだけ起きて〜」
「・・・ぅん・・・」

 ソファで気持ちよさそうに寝ている優吾に話しかけてみるが、小さく頷くだけで全く起きる気配を見せない。

「ねぇ、ベッドまで行こうよ。風邪ひいちゃう」
「・・・・・・ん」

 返事をするのは条件反射なんだろうか。
 こんなになってしまうなんて、一体どれくらいの量の酒を飲んだんだろう・・・

 ちょっと溜息を吐いて、とりあえず寝室からタオルケットを持ってこようと立ち上がる。
 いくらなんでも華一人で優吾を寝室まで運ぶなんて不可能だ。
 仕方ないが、今日はソファがベッド代わりという事で決定だろう。




 と、


「・・・華、ちゃん・・・」

「ん?」

 突然名前を呼ばれ、振り返ると、優吾の目がうっすらと開き、ボーっとした顔でこっちを見ている。

「あれ? パパ、起きたの? じゃあ、お部屋行こうよ。ベッドでちゃんと寝よう?」

「・・・・・・ちゅってキスしてくれたら・・・・起きる」

 目を閉じて、華を待っているようにジッとしている。
 その様子が子供っぽくて、思わず噴き出してしまう。
 こんなの絶対酔っているとしか思えない。

 華の笑い声を聞いた優吾は、片目を薄く開け、ちょっとだけ拗ねたように訴えかける。

「わかったよ〜、ちゅってすればいいんだよね?」
「うんっ♪」
「はい、チュウッ」

 彼の唇に、ちょん、と軽く触れるだけのキスをすると、優吾はそれだけで嬉しそうにしながら、約束通りモソモソと起きあがった。

「ねぇ、華ちゃん」
「ん?」

 返事をすると同時に、優吾が華の肩に両腕を回してきた。
 そのまま彼の顔が急激に近づき、おでこがこつんとあたった。



 そして、


「・・・しよっか」

「なにを?」

 言ってる意味がよく分からなくて聞き返す。
 しかし、優吾は彼にしては珍しく不敵に笑っているだけだ。

 やや不審に思い、

「パパ?」

 口を開いた瞬間、

 彼の唇が激しく重なってきて、目を見開く。

 後頭部を優吾の腕で固定され、息苦しいほどの抱擁を受け、彼が何を言っているのか一気に理解してしまった。


 しよっか・・・って。

 え、えっちの、こと・・・だよね?


 こんな風に積極的な言葉で言われた事なんて殆ど無くて。
 そう思ったら、もう心臓がバクバクしてどうしようもない。
 受け止める唇も、ただ翻弄されるだけで自分からは動かすことも出来なかった。


「・・・ぅんっ、・・・はぁっ、パパ・・・どうし・・・」

「華ちゃん、好きだよ」

 熱っぽく見つめられて言葉が出てこない。
 優吾は、そんな華を軽々と抱き上げると、愛しそうに何度もキスをしながら寝室に入っていく。


「パパ・・・、あの・・・酔ってる、んだよね?」

 質問には答えず、優吾は華の首筋にキスを降らせながら、ベッドに横たわらせ、服を脱がせていく。
 華は、その触れる唇や手の動きに動揺して、事の成り行きに逆らうことが出来ず、ただ成されるままだった。


「・・・あっ、・・・っ」
「ん、カワイイ声。もっとたくさん聞かせて?」

 胸を触られながら耳元で囁かれ、顔が熱くなる。
 瞳を潤ませて優吾を見つめると、彼は堪らないといった風にキスをして、その唇は胸の頂きまでゆっくりと下っていった。


「あ、っ・・・ん・・・やぁんっ」



 何だか今日のパパはちょっと・・・、

 かなり強引な気がする。


 それに、漂う空気がちょっと違うような・・・



 そのうえ、

 華の胸を愛撫しながらチラリ、と上目遣いで見る目が・・・
 上半身がややはだけて、見え隠れする素肌が・・・


 な、何か異様に色っぽいよぉ〜〜っ



「華ちゃんの胸、ドキドキしてる♪」

 嬉しそうに胸に耳を当てて、その間も手を休めない。

 こんなのされてたらドキドキなんて止まるわけがない。
 ホントにいつもと何か違うし・・・


「・・・ぁっ、・・・っ!」

 優吾の手が突然下に伸びて、華の中心を捉えた。
 ぴくん、と反応する身体は益々熱に浮かされていく。

「・・・ぅん・・・っ、パパ・・・っ」

「気持ちイイ?」

 目の前に現れた優吾の目は潤んで、怪しい光を讃えている。
 彼に逆らうことなど思いつかない、魔力を秘めたような視線を受けて、更に心臓が跳ね上がった気がした。

 華が真っ赤になって小さく頷くと、優吾は嬉しそうにしながら尚も指を滑らせる。


「・・・・・・ん・・・ぁ・・・っ・・・」

「ねぇ、華ちゃん」


 そのまま指が中に入ってきて。
 バラバラに動いて出入りを繰り返す。

 まともな思考がどんどん奪われていく。


「ねぇ?」

「・・・んっ、な・・・に・・・っ」


 息があがっている華とは対照的に、余裕の顔としか思えないほどの甘やかな微笑。





「本当に僕にならどんな風にされてもいいと思ってるの?」


 甘えを含んだような声。

 だけど、今日は、何だかそれが、ちょっと警戒すべきもののように聞こえて・・・


「・・・え・・・」


「・・・本当に?」


 華が戸惑っていると、優吾は答えを求め、追いつめるような微笑みを浮かべた。


「・・・ぅん・・・思ってる・・・よ?」


 小さく答えると、彼はそれに満足したのか、目を細めて唇を重ねてきた。
 溶けてしまいそうなキスに、自分からもそれに応えた。



 そして、


「それなら大丈夫だね。もっと気持ちイイ事してあげる」


 耳元で甘く掠れた声で囁いた。
 同時に熱い吐息がかかって、それだけで熱に浮かされそうだ。






 と、


 優吾が突然視界から消えた。






「・・・・・・?」



 足を大きく広げられて。

 その間に顔を埋めて中心に触れるものには覚えがある。




 ・・・・・・あっ


 えっ!?


 ま、まさか・・・っ!?



「あっ、わっ、わっ、ダ、ダメ、やぁああん!」


 華の足を抱え込み、身動きがとれないようにして、這い回るのは彼の舌以外の何ものでもなかった。


「やだぁっ、ソレは恥ずかしいって言ってるのに、やぁあっ!」

 華は顔を真っ赤に染め、足をジタバタさせて精一杯の抵抗を見せたが、全く通じないようだった。
 ピチャピチャという音をさせながら、優吾はそれを一向にやめようとしない。

 彼がどうしてこんなことまでしたいのか分からないけれど、時々こうやって舌を這わせてくることはある。

 でも、恥ずかしいからイヤだって泣きそうになると直ぐに止めてくれるのに。
 確かに気持ち良い? って聞かれたらノーって言えない。

 けど、これってホントに恥ずかしいんだよ。


「パパ、やめっ、ぅぁん・・・っ、あ、あ、ダメ・・・やぁあっ!」

 首を左右にプルプルと振りながら懸命に堪える。
 激しい快感の最中、それでも羞恥の方が勝って、身体を捩る。
 しかし、動けば動くほど自分を追いつめていくだけのようで、頭の奥がビリビリした。

 こんな指も舌もでグチャグチャにされたら・・・






 と、その時、


 突然、優吾の動きが止まった。



「・・・・・・っ、・・・はぁ、はあっ・・・・・・」



 ・・・もしかして、


 止めてくれたんだろうか?



 そんな淡い期待を込めて息を整えていると、優吾は少しだけ体を起こして、華に視線を向けた。


「さっきはいいって言ってくれたのに・・・?」


「・・・えっ?」



 ───さっき・・・?



 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




「・・・・・・っ・・・!!」



 うわ。



 し、しまった・・・っ

 なにされてもイイって・・・言った。



 こういうのも・・・含むんだ・・・




 パパは、


 私が返答に詰まっている間、もの凄く哀しそうにしてて。
 こんな事を嫌がったからって哀しそうにされるのもどうかと思うんだけど。

 でも、今さっき言った言葉が、ここであっさり無かったことにしてしまうっていうのは、自分の気持ちが軽いものだって思われそうで・・・

 それだけは絶対にイヤだと思った。


「うっ・・・うそじゃ、ないよ」

「・・・ホント?」



「す、好きなように、して、いいんだからっ!」



 ・・・うぅ・・・・・・っ



 ───とんでもない事を言ってしまった。

 華の言葉を受けた優吾の顔が、まるでそう言われることを予測していたかのように、ニッコリと微笑みを浮かべる。



 ・・・・・・後悔先に立たず・・・だよね・・・




「あぁっ・・・っく・・・!」

 程なく舌先が奥に入ってきて、唇で突起を挟み込まれる。
 一時中断したにもかかわらず、体の奥から発する熱は前以上に高まり、頭の下の枕を思いきり握りしめた。

 弱いところを執拗に攻められ、その場所から逃げるように動こうとしても、呆気なく引き戻される。
 そうすると、今度は更に強く攻められて、もう逃げ場なんて無いのに、追いつめるだけ追いつめて。


「・・・ふぁ・・・あっ! ・・・・・・んっく・・・っ・・・あっ・・・っ、あぁっ、ぃやああぁんっ!」


 華の背中がしなり、ビクンッ、と激しく波打った。


 抑えていたものが呆気なく瓦解して、なだれこんで。
 全身に稲妻が走ったような衝撃に支配される。


「ああっ、あっ、はぁっ、やああぁんんっ・・・・・・ん・・・ん・・・・・・っは・・・っ・・・ぅ・・・・・・」


 頂点に押し上げられ、何度も何度も奮える身体。

 その間も動き続ける優吾の舌の感触は、気がおかしくなりそうなほど華を翻弄し続けた。







その4へつづく


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