『ラブリィ・ダーリン2』番外編・1

【その7】






13.それでもやっぱりパパが好き




 セーターの下で優吾の手が好き勝手に動いて、洋服が少しずつ上にずりあがっていく。
 首筋を舐められ、熱い吐息が耳元に吹きかかり、華の身体がビクンとふるえた。


「・・・ぁあっん・・・・・・やぁっ・・・っ、ふぅ・・・っく」

「・・・・華ちゃん、カンジてるの?」

「やっ、そんなこと・・・ナイ・・・もんっ!」

 ふるふると首を振り否定するけれど、頬をピンク色に上気させて、瞳を潤ませていれば一目瞭然。優吾を喜ばせるだけだった。


「すっごくカワイイよ・・・っ!」

 上着を胸の上までたくし上げ、ぺろぺろと舌で愛撫しながら、胸を揉みしだいていく。
 華は息を弾ませ、フルフルと身体を奮わせながらも、優吾の身体を押し返そうと僅かな抵抗を試みた。

「・・・やぁ・・・っ、ふぁ、っん!」

 だが、優吾はわざとカンジやすい所を強めに刺激してくるので、どんどん追いつめられてしまう。

「パパ・・・ぁっ!」

 優吾は素直に反応してしまう華が可愛くて仕方なかった。
 目を潤ませ、顔を真っ赤にして、上着は胸の上まで捲り上げられ、彼の上で足を跨いでいる姿は、正にあられもない姿というヤツで本当に堪らない・・・優吾はゴクンと喉を鳴らし、自分の理性が崩壊していく気がしていた。
 そして、ここが家なら気兼ねなく全部脱がせてしまえるのに、と、かなり残念な気分だ。

 でも・・・っ!

「もっと気持ちよくしてあげるからね・・・!」

「・・・っ、やあんっ!」

 今度はスカートの下から手が忍び込んできて、ショーツの上から中心を撫でられた。
 今日はミニのスカートだし、今は優吾を跨ぐ格好でかなり際どく捲れ上がってしまっていて、そのうえ、自由に身動きがとれない。
 なのに、優吾が中心に触れるのはあまりに容易い体勢で・・・


 優吾はショーツの隙間から指を入れ、直に触れてきた。

「・・・・・・ね、・・・スゴイ濡れてる・・・」

 耳の側でわざと囁かれて、顔が真っ赤に染まる。

 恥ずかしかった。
 こんな所でこんな体勢なのに・・・っ

「・・・やだぁ・・・っ、ちがう・・・のぉっ」
「いいんだよ、僕もスゴイドキドキしてる。今の華ちゃん、カワイくて・・・ホント、どうしよう・・・止まらない」

 熱い吐息が耳にかかる。
 ゾクゾクさせる声音は、華をもっと追いつめて。

 中に指を挿れられると、

「ふあぁ・・・っあん!」

 ビクビク奮えながら優吾にしがみつくことしかできない。
 こんなに余裕が無いのに、幾度も出し入れされて。
 明らかに優吾はナカが締め付ける様子を楽しんでいる。

「・・・やっ、・・・だ、めぇ・・・・・・っ」
「気持ちイイ?」
「・・っ、・・・パパっ、あぅ・・・ふっ・・・あっあっ、」

 返事をしないでいると、指を増やされ、更に奥まで指を挿れられて、何度も何度も擦られた。

「カワイイ反応♪ ・・・ね、どう? ココ、気持ちイイ?」
「・・・ああっ、ふああぁんっ・・・っ!」

 溢れていた生理的な涙がポロポロと零れる。
 華は頬を染め上げながら観念して何回も頷いた。
 だけど、ソコまで来ていた限界を知っているかのように指が動くから・・・

「だめぇっ、あぅ、っん・・・っ! ああぁあっんっ!!!」

 呆気なく絶頂を迎えてしまい、ギュウッと優吾にしがみつく。

 優吾はそれを満足そうに笑っていた。
 だけど、そんな彼自身もまた頬を上気させていて、これ以上は我慢の限界だった。
 うっとりと華の唇を塞ぎ、その間に彼は自分のスーツのズボンのファスナーを下ろし、自身を取り出すと、彼女の中で踊らせていた指を引き抜いた。


「あ・・・っん」

「・・・挿れるね」

「・・・っあっ!」

 僅かに華を持ち上げて一気に貫いた。
 華は衝撃に身体を反らし、優吾が抱き抱えていなければ後ろに倒れ込んでいたかも知れない。


「・・・っ、・・・はぁ・・・っ、華ちゃん・・・っ」

「・・・あ、・・・あっ、・・・熱・・・い・・・っ、パパッ、・・・っ!」


 普段の時より、凄く深くてちょっと苦しくて、ナカが焼けるように熱い。
 それでも、不安定な体勢だから逃げる事も出来ず、むしろ優吾にしがみついて、より密着してしまう。


「華ちゃん、・・・んっ・・・っ、すごい・・・っ」


 こんな体勢じゃ満足に動けないのに、いつもよりも限界が直ぐそこにあるような気がした。
 ギィ、ギシッ、ギシッ、と椅子が断続的に音を響かせ、彼は華の身体を幾度も持ち上げては降ろしてを繰り返し、自らの腰も突き上げた。

「あああっんっ、やぁっ、パパぁっ、・・・っ、こんな、の。おかしく、・・・っ、なっちゃう・・・っ!」
「はぁっ、はあ、・・・っ、イイよ、すごくカワイくて、えっちだね・・・っ」
「・・・やぁん!」
「華ちゃん、だいすきだよ・・・っ」



 ホントにね、僕がこんな風になる人、他にいないよ?

 時々、コワイくらい自分を制御出来なくなって、どうしたらいいんだろうね。



「ああっん、・・・パパ・・・ッ、すき、・・・っ、大好きっ」


「・・・っっ」


 荒い息を吐き出し、理性の欠片が粉々に砕けていく気がした。

 優吾は動きを早めつつ、そんな自分に苦笑する。




 ───まいったね・・・


 こんな所でされてるのに。
 それでも華ちゃんは僕を許しちゃうの?


 強要したのは僕なのに、
 翻弄されているのは僕のほうだね。


 大好きだよ、
 何度言っても足りないよ。

 僕にとって、『好き』って言葉は華ちゃんにあげるためにあるんだって思えるくらい。



 ぜんぶぜんぶ、


 華ちゃんが僕だけのために存在してたなら良かったのにね。








「・・・華ちゃん・・・っ!」


「ああああ、ああんっあ、ああ、ふぁあっ」


 ギュウッと締め付けがキツくなって、華の身体が限界を迎える。
 力一杯優吾にしがみついて、大きく揺らされた瞬間、彼女はビクビクと奮えて達してしまった・・・

 優吾はそれを見届けると、愛おしそうにキスを繰り返し再び腰を揺らしていく。
 それから華が何度目かの絶頂を迎えたとき、眉を寄せて苦しそうに喘いで熱い吐息を漏らしながら、彼女の中に漸く自身を解き放ったのだった───

















14.One and only──キミは唯一無二の存在──




 ───1時間後。



 二人は帰宅するべく、優吾の車に乗り込んでいた。
 とは言っても、車を走らせているわけではなく、駐車場に停めたまま車内に座っているだけなのだが。


 華は専務室でしてしまったことを後悔していた・・・

 そして、何度目かの言葉を吐き出す。


「パパのばか・・・っ」
「・・・ごめん」

 言うたびに謝る優吾。
 それしか思い浮かばない。


「・・・お気に入りの下着だったのにっ」
「・・・・・・ご、ごめんね」

 恥ずかしすぎるよ・・・っ
 あんなに激しくするから・・・っ



 ───・・・コレは、つまり、・・・・・・アレである。


 下着を着けたままの行為というのはリスクもあるわけで、終わって正気に戻り、色んな液体でぐちゃぐちゃになってしまったことに気がついた。
 まさかそのまま履いたままでいることも出来ず、華は何も着けずに所謂“のーぱん”というやつで専務室から出る羽目になった。
 当然今もそのまんまなわけで・・・

 優吾は自分の所為でこんな事になったわけだから、勿論何も言えず・・・
 先程のやりとりが延々と車の中で繰り返されていた・・・というわけだった。


「それにっ、肝心な答えっ! 聞いてないしっ!」

「───え?」

 優吾はきょとんと華を見る。
 そんな彼を見て、更に不機嫌になった。

「さっきの電話だって、教えるって言ったのにあんなコトするんだもんっ! 言いたくないならそう言えばいいのにっ、誤魔化すみたいにスルなんて・・・っ、やだよっ!」

「えっ、・・・ち、ちがうよ!」

 驚いて慌てて否定する。
 華は『何がちがうの!?』という目で・・・


「そうじゃなくって、・・・だから、ね・・・アレが答えなんだよ?」
「・・・は?」
「僕が栗田さんに言ったのは、今恋人とえっちしてるんだよってコト。話に進展が無いし、そろそろ電話切りたかったし」
「・・・・・ウソついたの?」
「結果的に・・・ウソじゃないよね? さっきしちゃったし」
「〜〜〜〜〜っっ」


 ───それであんなトコでシタの!?

 もうもうっ、パパのばか〜〜〜〜っ!!!


「・・・・あの、華ちゃん」

「・・・・・・・・・」


 返事がない。


 無視された!? とショックで助手席の華に目をやると、頬を膨らませたまま涙目で見上げていた。
 今の華にとっての、コレが精一杯の返事らしい・・・・・・


 うっ・・・っ、
 華ちゃん・・・怒った顔・・・かわいい・・・・・・っ


 きっと優吾の心の声が華に聞こえたら余計に怒ったに違いない。


「・・・えっと・・・、あのね? 僕、栗田さんには何もされてないよ? あの時寝ちゃって、Yシャツのボタン外されてる感覚はうっすらあったんだけど、それ以外は何もされてないから」
「そんなのわかんない。パパは寝てたんでしょ?」
「だからね、キスとかは絶対されてないんだって」
「どうして断言できるの!?」
「栗田さん、真っ赤な口紅つける人なんだよ。ちょっと触れるだけでも痕がついちゃう、それくらいね。・・・だけど、口紅の痕なんて僕のどこにもついてなかったんだ」
「・・・・・・そうなの?」
「そうなの。高辻くんが直ぐ戻ってきてくれたお陰だけどね。慌てて洗面所に駆け込んで隈無くチェックしちゃったよ。大丈夫って分かって一気に力抜けてさ」


 ホントに?
 そう思ってじっくり優吾の顔をのぞき見る。

 ・・・確かにウソをついているようには見えない。
 目が泳いでないし。


 う〜んと考える華を見て、優吾は笑った。


「ねぇ華ちゃん」
「ん?」

「な〜んにも心配する必要ないんだよ?」

 華の頭をふわりと撫でて。
 どこまでも甘くやわらかい、とろけるような微笑を浮かべる。


「大丈夫、僕は絶対に華ちゃんを裏切らない」


 絶対、だよ。
 その意味わかるよね?

 優吾の眼がそう言ってる気がして。


「・・・・・・・・・あっ」


 華は、自分だけは何があっても優吾を信じなければいけなかったのだ・・・と、言うことに漸く気づいた。

 何だかいっぱい疑って嫉妬してしまった・・・
 そんな自分の弱さが恥ずかしくて。

 優吾は微笑んで何度も華の頭を撫でた。


「・・・ごめんなさい・・・他の人がパパに触れたと思ったら・・・どうしようってそればっかりで・・・だっていつも一緒にいる私でさえパパに触れたいって思っちゃうんだから、他の人だってそうなんだって・・・そう考えたら・・・こわかったの」

 華はそう言うと、しゅんとなって俯いた。

 私って・・・スゴイ心が狭い・・・

 私はこれ以上のコトをヒカルくんにされたのに、
 パパは許してくれたのに、


 ・・・・・・きっと、私よりもずっとずっと苦しかった筈なのに。



「・・・何かウレシイなぁ・・・・・・」

 優吾が赤くなってポツリと呟く。


 ───え?


「・・・な、なにが?」
「だって、華ちゃんが僕に触れたいなんて初めて聞いちゃった」
「そう・・・だっけ?」
「うんっ! めちゃくちゃ華ちゃんに愛されてる気がしたっ!」
「・・・それは・・・当たり前だよ?」

 何を言ってるんだろうと首を傾げて答えると、彼は感無量といった感じでフルフルと歓喜で奮えている。

 ───う・・・っ、ウレシイ・・・・・・っ


「あの・・・パパ・・・怒ってないの?」
「どうして?」
「疑っちゃったから」

 そう言うと、優吾は嬉しそうに表情を崩して笑った。

「まさか。華ちゃんに嫉妬してもらえるような男で良かったって思った」
「・・・・・・え・・・でも」

「僕だって沢山触れたいって思ってるよ」


 優吾はにこにこして抱きついてくる。
 華は、怒るどころか、寧ろ笑っている彼を見て、ホッと胸を撫で下ろした。

 そして、こんな風に解釈してくれる彼が・・・とても好きだと思った。

 抱きしめる腕も胸も暖かくて、心がぽかぽかしてくる。





 ───だが、


「あぁっ、そうだっ、忘れてたっ!」
「えっ」

 今までの余韻もなにもかもぶち壊す勢いで、彼はいきなり華から離れた。
 なぜか『う〜ん』と唸り、今度はハンドルを抱え込んでいる。

「パパ?」

 そして、訳が分からずきょとんとしている華をチラリと見やり、彼は表情を曇らせて。

「ねぇ、副社長ってどんな感じ?」
「はぁ?」

 副社長?
 突然どんな感じと聞かれても・・・

「どんな・・・って・・・」
「カッコイイとか悪そうとか。イメージでいうと、どんな?」
「え〜・・・?」

 ますます訳が分からない・・・
 考えた事なんてないし。

 でも、優吾は華の答えを緊張した面持ちで待っていて、どうやら何かしら言わないといけないらしい。

「・・・じゃあ・・・カッコイイ・・・???」
「えっホント!?」
「頭良さそうだし」
「それって、憧れちゃう?」
「・・・う、ん・・・そう・・・かな・・・・・・?」
「そうなんだ〜っ」

 彼は目を丸くして、かなりうれしそうだ。
 もの凄い適当だったのだが、割と満足いく答えだったようなので、まぁいいかと深く考えるのはやめる事にした。

 優吾はと言うと、

 『華ちゃんが憧れちゃうなんて、スゴイよスゴイよ・・・っ!!!』

 と、相当不純な動機ではあったが、副社長についての個人的イメージを180度転換させていた。
 まぁ、渋々ながらも引き受けなければいけない事より、喜んで引き受ける事の方がプラスには違いないので、秀一が知れば恐らく苦笑しながらも華に感謝するだろう。



 と、今はそんな事よりも・・・



「ねぇ、パパ、そろそろ帰ろうよ・・・早く家に帰ってパンツ履きたいよぅ・・・」

 どこかへ飛んでいってしまった優吾の思考を呼び戻すが如く、華は涙目になりながら彼に訴えかけた。

「ホントに・・・す〜す〜してヤなの・・・っ」

 当然の意見である。
 漸く優吾はその事を思い出し、恥ずかしそうにはにかんで頷いた。

「そうだったね、ごめんね。帰ろう」


 そうして車は走り出したのだった。





 ───帰り道、

 華は疲れたのか安心からか、恐らく両方からだろう、5分もしないうちにすっかり寝てしまった。



「・・・寝ちゃったの?」


 無邪気で愛らしい寝顔に思わず笑みが零れる。




「・・・今日はありがとう」


 起こさないよう小さく囁き、眼を細める。



 ───僕がこんなに幸せなのは、華ちゃんがいるからだね。

 彼は心からそう思った。


 そして、永遠にこの寝顔を独り占め出来ますように・・・と、誰に願うともなくそんな事を心の中で祈り、彼は家に向かうべく車を走らせるのだった。







2006.2.6 了
kissしたくなる10のお題を読む


<<BACK  HOME  NEXT>>



Copyright 2006 桜井さくや. All rights reserved. Never reproduce or republicate without written permission.