名前を呼ぶとパパはすっごく喜ぶ。
手を叩いて嬉しい! って感じじゃなくて、『なぁに、僕は幸せだよ』って、そういう顔するの。
私はパパのその顔が大好き。
だけど、あんまり言ったことないんだよね・・・
前はえっちの時だけでも・・・っておねがいされたりしたんだけど、どうしても照れちゃって最近じゃ全然。
喜ぶの分かってても恥ずかしくて、やっぱり慣れなくて。
だってずっとパパだったんだもん、そう簡単には呼べないよ。
あぁ、パパのあの顔、本当に好きなんだけどな。
ソファに座ってテレビを観てるパパの横顔をじーっと見ちゃう。
優吾、優吾、優吾、優吾・・・
心の中だと言えるのに。
私はパパの首にぎゅっと抱きついた。
「どうしたの?」
急に抱きつかれたのにも関わらず穏やかなパパの声。
抱きしめた腕をとんとん、って撫でてる。
「パパ、あのね、あのね・・・っっ、あの、ね」
「なぁに?」
私は勇気を振り絞って、パパの耳元で小さく小さく囁いた。
「・・・・・・・・・ゆーご」
い・・・言っちゃった。
うわ〜、恥ずかしいっっ!!
やっぱりどうしようもなく恥ずかしくてパパの肩に顔を埋めてしまう。
無理無理、私はパパのままでいいよ・・・そう思っちゃう。
けど・・・いつまで経ってもパパの反応は無くて。
おそるおそる顔をあげてみた。
───あ、
パパのほっぺ・・・あかい!?
うわうわうわ〜〜〜っ、やったあぁ〜っ!!!
すっごい得した気分だよぉっ!
「ユーゴ、ゆーごっ、大好き、優吾っ♪」
調子に乗って何度も呼んじゃう。
こんな顔見れるんなら何回だって言っちゃうもんね〜♪
「優吾、あいしてる〜っ♪♪」
きゃあっ、パパ、耳までまっかっ!
すっごぉ〜い!!
ぎゅうっ!
「・・・・・・えっ」
気づいたら・・・パパの手は・・・抱きつく私の腕をぎゅっと握り締めてて。
あれ? って思ってるとパパの顔がこっちに向いた。
すっごい至近距離。
こつん、っておでこがぶつかった。
あ、ちょっと熱いかも。
パパ、体温も上がってる? な〜んてね。
「今夜・・・・・・覚悟してね?」
そう言ってパパは、ちゅっ、ってキスをした。
あれ?
あれ?
あれれ???
うえぇええええええええっ!?!?!?
───もしかして、こういうの・・・自業自得って言う・・・?
その夜、そんなつもりじゃなかった・・・っていう私の言葉は綺麗サッパリ無視された。
代わりに「もう一度名前、呼んで」って言われて。
素直に答えたら嬉しそうに微笑んでくれた・・・
けど。
その顔大好きだよ?
すっごい大好きなんだよっ?
なのに、なのにっ!!!!
もうっ、しばらく名前でなんて呼ばないっ・・・っっっ
・・・数時間後、指一本すら動かせない程くたくたになった私は、
そう堅く心に誓ったのだった・・・・・・・・・
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