「あれ? 元気ないね。ん? 頭抑えて何かあったの?」
学校に着いた途端沙耶に言われた。
何故なら朝からたんこぶを作った私の頭はずきずき痛んでるのだ。
おまけに不機嫌そのものの顔なんだと思う。
自分でもわかるもん。
「・・・何もないよ」
目一杯平静を装って言ってみる。
だけど、沙耶は呆れたみたいに笑って・・・
「あのねぇ、そんなふくれっ面で言っても説得力ないよ」
「・・・」
「どしたの?」
沙耶の優しい声に詰まってしまう。
だってそんな風に言われても・・・理由が理由だし・・・・・・
「・・・ベッドから落ちたの」
「へぇっ、華って寝相悪いんだ〜!」
「ちがう!」
「だって落ちたんでしょ?」
「うぅっっ、そうだけどそうじゃないんだもん・・・っ」
「なにそれ」
「・・・くすぐりっこしてたの」
「はぁ〜〜〜〜〜〜!?」
だって・・・
今日に限って私の目覚めが最高に良かったんだもん。
普段は全然なのにパパより早く起きちゃったりして・・・
それで・・・ちょっとしたイタズラ気分で寝ていたパパの脇をこちょこちょってして・・・
っていうか、パパはやり返すとかそう言う余裕無くて、とにかくくすぐられるの滅茶苦茶弱いから藻掻いてただけ。
だけど・・・次第にパパの息が荒くなってきて、顔も真っ赤にして、目に涙なんか溜めちゃったりして。
『・・・・・・っ、あぁっ・・・んっ、はぁはぁっ、やぁっ、華・・・ちゃあんっ! おね・・・っがいいぃっ・・・っ』
ちょっとコレって犯罪だよ。
そう思うくらい、女の子みたいな可愛い声だすからドキッとしちゃって。
それでウッカリ手を滑らせて・・・ベッドから落ちたってわけなの・・・
つまり・・・私が一方的にパパを苛めてただけなんだよね・・・
なのに、頭が痛くてうずくまってる私に謝り倒すパパ。
着替え中も洗顔中も朝食の間も、結局家を出るまでず〜っと泣きそうな顔で心配して謝ってた。
全然悪くないのに、寧ろ私の方が悪かったのに。
「もうバカだね〜、朝から何やってんのよぉ〜っ」
沙耶は『子供じゃないんだからさ〜』って笑ってる。
ど〜せ。
それでたんこぶ作ってたら世話無いよね、わかってるよ〜!
だけど、そんなので不機嫌になんかならないもん。
自分が悪いんだし、パパに怒ったら八つ当たりじゃない。
私が不機嫌なのはね、
そのせいで今日は、おはようのキスもいってきますのキスもしてもらえなかった、ってこと!!
パパってば、たんこぶなんかに夢中で忘れちゃうんだもんっ!
あぅ、興奮したら頭が痛くなってきたぁ・・・っ
・・・・・・明日は大人しく起こされよう。
あれが無いと一日が始まった気がしないのにっ。
いつもの朝が迎えられないなんて、もうこりごり!
Copyright 2007 桜井さくや. All rights reserved. Never reproduce or republicate without written permission.