『Kissしたくなる10のお題』

04 目覚まし代わり!?(side 華)







 パパが酔ってる・・・ものすごく。
 久々に見たよ、こんなになってるの。


 しかも、飲ませたのは例によって例の如く、

「すまん」

 秀一伯父さんなんだ。

 どうやらパパにお酒を飲ませると面白いらしくて、つい沢山飲ませてしまうらしい。
 と言っても沢山、というのはパパにとって・・・って意味。
 秀一伯父さん曰く、『俺の1/3も飲んでない』んだって。
 仕方ないよね、パパお酒弱いし秀一伯父さんみたいにいっつもガブガブ飲んでる人とは違うんだから。


「あ〜あ、・・・いつもこんなになっておぶってくるのに、秀一伯父さんもよく飲ませるよね」

 ホントにね、いっつもそう。
 パパは細い方だけど結構背が高い。
 例えマンションの前まではタクシー使ってても、おんぶするのはかなり大変だと思う。
 毎回毎回よくやるなぁって呆れちゃうよ。


「たまに飲むと色々話し込んで、つい・・・な」
「ふぅん。男同士の話ってやつなんだね」
「まあな」

 私は秀一伯父さんにお水を一杯渡して、ソファで横になってるパパにも飲ませようとしゃがみ込む。
 こういう状態で飲ませるのってなかなか大変なんだよね。


「パパ〜、お水飲んで」

「・・・・・・ん〜・・・・・・えへへへへ」


 ・・・・・・パパ、笑ってるし・・・
 秀一伯父さんによると、笑い上戸って訳でもないらしいけど。


「パパ、お・み・ず!」

「・・・・・・おみじゅ・・・ほしー・・・」

「・・・・・・っ」


 ・・・・・・・・・・・・おみじゅって、パパ・・・っ
 舌っ足らずな口調で・・・

 横で秀一伯父さんの肩が震えてる。

「秀一伯父さん!?」

「・・・くっくっく・・・・・・っ、・・・あ、いや・・・・・・本人は普通に言ってるつもりなんじゃないか?」

「つもりって・・・言えてないし」


 トロンとしてこっちを見てるパパ。
 『お水くれないの?』ってことなんだろうな、たぶん。


「あのね、身体起こさないとお水飲めないよ? そのままだと咽せちゃうし最悪お水が零れちゃう。だから起きて、ね?」

 私だってある程度は手を貸すけど、パパを起こせる力は無い。
 パパは『ん〜・・・』って言いながらも起きる気はないようで、そのまま目を閉じてしまった・・・。

 こんな時秀一伯父さんは楽しそうに見てるだけで何もしない・・・絶対わざとだ。
 ジトッと見てやったら秀一伯父さん、ごほん、って咳払いをして立ち上がった。


「すまないな、俺はこれで帰る。これから会社に一度戻らなきゃいけないんだ」
「えっ、今から!? 明日じゃダメなの?」
「さっき飲んでる時に電話があってな、それだけ片づけてくる」
「仕事しすぎだよぉ・・・倒れちゃやだからね」
「あぁ、・・・ありがとう」

 そう言って、ぽん、と私の頭に手を置いて笑う。
 周りにはクールとか言われてるけど、秀一伯父さんの笑った顔ってスッゴイ優しいんだよね。大好きなんだ。


「見送りはいいぞ、優吾を介抱してやってくれ」

 立ち上がりかけた私を制止して、秀一伯父さんは上着を着て帰っていく。

 改めて思うけど・・・
 何で結婚しないのか不思議だ。

 すっごいモテるって聞いたことあるし、チャンスが無い訳じゃないと思う。
 前に聞いた時ははぐらかされちゃったけど、パパは言ってた。
 『秀一くんは、この人だ! って言う人に出会ってないだけなんだよ』って。

 確かにね、誰でも良いわけないもんね。
 そう思うと『この人だ』って人に出会える事ってスゴイよね。
 私はラッキーかも・・・うん。


 気を取り直してパパに声を掛ける事にした。


「パパ、お水飲もう?」

「・・・・・・・・・ん・・・・・・・・・」

 だけど、小さく頷いただけでパパの目が開くことはなくて・・・
 規則的な呼吸音に切り替わってて、殆ど寝ている状態なのかも知れない。


「もう・・・っ、じゃあ後で喉乾いたら自分で飲んでね。今日はここで寝る?」

「・・・・・・や・・・ぁ」


 無意識に近い状態でも否定する。
 起きないんだからここで寝るしかないと思うのに。


「じゃあ後で起きる?」

「・・・・・・や・・・・・・」

「なら起きて」


「・・・・・・て・・・・・・っ・・・る・・・っ・・・」


 パパの唇が僅かに動いて何か言ってる。
 とは言え殆ど聞こえないんだけど。


「なぁに? パパもう一回言って」

「・・・ん・・・〜・・・」

「パパ〜」

「・・・〜、し・・・・・・たら・・・・・・っ、・・・・・・る」


 ・・・・・・ダメ。
 もごもご言ってるだけで解読不可。


 でも・・・何言ってるかは大体わかったよ・・・・・・



 パパの口、『る』のままで止まってて。

 つまりそれって、・・・・・・そうじゃないのかな。
 前もそんな事あったし。


『ちゅってしてくれたら起きる』


 ちがう?



 私は暫く考えてたけど、別に間違っててもいいかと思って実践してみることにした。

 ほんのりピンクの頬が何だかかわいいな。
 そう思ってパパの口にキスを落とす。



 すると・・・

 パパの睫毛がふるふると震えて。
 うっすらと瞼が開いた・・・

 相変わらずトロンとした表情に違いは無いけど、思った通り意識は戻ったらしい。
 パパのサラサラの髪を撫でてみると、気持ちいいみたいでうっとりしてる。


「・・・・・・・・・華・・・・・・ちゃ」

「なぁに?」

「・・・もー・・・いっかい・・・」

「・・うん」


 パパってば、眠り姫みたい。

 眠り姫は王子さまのキスで起きるんだよ。
 これじゃ、あべこべだね。

 そう思いながら、私はもう一度パパの唇にキスを落としたのだった。









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