「はなちゃん、ぼくのおよめさんになって」
満面の笑みでプロポーズしたのは、小太郎ちゃん(3歳♂)
僕の父方のイトコの子供だ。
ウチは割と親戚関係仲が良くて、そのイトコともモチロン仲が良い。
今回夫婦そろって風邪をひいたらしくて、小太郎ちゃんにうつしたら大変・・・と言うわけで、治るまで預かってもらうと言うことで話がまとまったらしいんだ。
ずっと叔父さん夫婦が預かってたけど、昨日から今日にかけて夫婦で出張になってしまって困り果てたらしい。
それを聞いた僕のお母さんが『それならうちで預かるわ』と笑顔で引き受けて、・・・・・・何故か僕の所に小太郎ちゃんはやってきた。
子供は大好きだから僕も文句は無かったし、小太郎ちゃんは全然人見知りしない子だったから直ぐに仲良くなれて良かったんだけど・・・
問題がひとつ。
小太郎ちゃん・・・小さくてもやっぱり男の子なんだよね。
それはもう華ちゃんにべったり!
華ちゃんもカワイイ姿にメロメロで・・・うん、わかるけどさ。
華ちゃんのおっぱいムニムニ触ったり、ほっぺにチュウをしまくるのは・・・・・・
いや、子供のする事ってわかっててもね、ちょっとは嫉妬・・・するんだよ。
「え〜、およめさん? 小太郎ちゃんが大きくなる頃には私なんておばさんになってるよ?」
「はなちゃんはずっとずっとかわいいもん。だいじょうぶだよ!」
「ホント?」
「ほんとだよ。としのさなんて、あいがあればのりこえちゃうんだから」
小太郎ちゃんは華ちゃんに抱っこされながら、一生懸命愛を語る。
すごいよね・・・この年でこんな情熱的な告白・・・
そして、僕と華ちゃんの年の差と小太郎ちゃんと華ちゃんの年の差が殆ど一緒だと言うことに気がついて、『確かにそうだね』なんて納得してしまう。
でもね、小太郎ちゃん!
僕はそこで納得したままではいられないんだよ。
だってだって、
「小太郎ちゃん、華ちゃんはだめなんだよ」
「えぇ〜っ、どぉして!?」
「華ちゃんはね、他の人のお嫁さんになるって決まってるんだ」
僕は大まじめな顔をして説得にかかる。
だけど、小太郎ちゃんは悲しい顔をして・・・目をうるうると・・・
な、泣いちゃう・・・かな・・・っ
「はなちゃん、それほんとう?」
小太郎ちゃんは、訴えるように華ちゃんに問いかけた。
「う・・・ん・・・・・・・・・・・・ごめん、ね」
華ちゃんはちょっと迷う仕草を見せたけど、素直に認めた。
小さい子相手でも嘘はいけないって思ったのかなあ、そういうのすごく感動してしまう。
でも、小太郎ちゃんは・・・懸命に泣かないように口をへの字にしてる・・・
か、かわいい・・・っ
僕は小太郎ちゃんのがんばってる姿が愛しくなって、もう一度頭をなでなでした。
それに刺激されちゃったのか、ポロポロッと涙の粒を零した。
「そのひと、ぼくよりはなちゃん、たいせつにしてくれる?」
そんな可愛らしい顔でジッと見つめるものだから、華ちゃんはグッときてるみたいだ。
だけど、どう答えて良いのか・・・華ちゃんはう〜んと唸って悩んでる。
で、チラッと僕の方を見て・・・
「パパ、小太郎ちゃんより大切にしてくれる?」
って、首を傾げた。
あぁもう、スッゴイカワイイっ
「モチロンだよ、世界で一番、ぜったいに誰よりも大切にするよ」
「えへへ、よかった」
当然のように言った僕の台詞に、華ちゃんは嬉しそうに笑ってる。
素直に受け止めてくれるから僕も嬉しくなっちゃう。
一方、小太郎ちゃんは僕たちのやりとりにちょっとビックリしているようだった。
交互に僕たちを見て・・・
「・・・ゆーごくんがはなちゃん、およめさんにするの?」
あ・・・すごい。
子供の視線って、本当に真っ直ぐなんだよね。
だからこそ嘘をついちゃいけないんだって思う。
「そうだよ」
そう言うと、小太郎ちゃんは黙り込んだ。
自分なりに一生懸命考えているのかも知れない。
僕も華ちゃんもその様子を見守ることにした。
と、
「はなちゃん」
「なぁに?」
ちゅうっ!
「「・・・・・・っっ!?」」
小太郎ちゃんは・・・華ちゃんの口に見事なまでの不意打ちのキスを・・・した。
華ちゃんはビックリして目をパチパチしてる。
僕は驚きのあまり固まっていたけど、直ぐに我に返って華ちゃんに抱っこされてる状態の小太郎ちゃんをガバッと引き剥がすように抱き上げた。
「小太郎ちゃんっ、華ちゃんに、なにを、なにを・・・っ」
「ゆーごくん」
ちゅうっ!!
「・・・・・・っっ!?!?」
な・・・・・・なんだなんだ!?
今度は僕の口・・・、キスされてる?
僕は小太郎ちゃんの考えてることがサッパリ分からなくて、これまた華ちゃんと同じく目をパチパチして驚いてた。
「あのね、ゆーごくんもはなちゃんも、ぼく、だいすき」
何とも言えない・・・、無垢な笑顔。
こんな真っ白な小さな子にしか出来ないような、とびっきりの笑顔だ。
ぎゅって抱きついてくる小太郎ちゃんは小さくて子供特有の甘いかおりがして・・・スゴクかわいくて仕方なかった。
これって、小太郎ちゃんなりに僕たちを認めてくれたって事なのかな。
「ありがとう」
僕は自然とそんな言葉を口にしていた。
小太郎ちゃんが帰ったその夜、僕は華ちゃんに聞いてみた。
『キスされてどうだった?』って。
そしたら、『小太郎ちゃんって、パパのちっちゃい頃の写真に似てるんだもん。うれしかった♪』って満面の笑みで言われてしまった。
それはそれでちょっぴり複雑な気もするけど、僕も密かに思ったことがある。
近い将来僕たちにもあんな子が授かるといいな・・・
・・・なんて、ちょっと気が早かったかな。
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