『ラブリィ・ダーリン2』より

ある男のとある休日【営業課長・月島視点】







 ども、本社に栄転してきた月島です。
 ちなみに『ラブリィ・ダーリン2』番外編の【One and only】にちょっとだけ出てるんで、詳しいことはそっちを参照してくれるとうれしいかな。

 今日は会社の施設のプールに友達数人連れてやってきた。
 彼女もいないし、こんな所男一人でくるのはやっぱり寂しいもんで。
 だから、せめてヤローだけで騒ごうってね。
 ま、そんな歳でもないけど、たまには生き抜きしたいからさ。
 (カワイイ子がいるかもしれないし、そこでどんなロマンスあるかわかんないっしょ?)

 それなりに楽しんでたヤロー5人。
 オレは喉が乾いたからプールから上がって、自販機にジュースを買いに行く。


 と、


「あれぇ? もしかして月島さん?」

「えっ」


 聞き覚えのあるカワイイ声だった。
 オレは驚いて振り返る。


「あ〜、やっぱりそうだった! こんにちは」

「あ、あぁっ!」


 ハナちゃんだ!!!
 うわうわうわうわっ、やっぱスッゴイカワイイ!!!


 突然声かけて来た相手は、飯島専務の娘さんのハナちゃんで。
 もう二度と逢えないと思っていた相手だった。

 しかもしかも、水着姿!!
 真っ白な肌で、童顔のくりんとおっきな瞳が真っ直ぐオレを見てる。
 ぷるぷるのピンクの唇が“月島さん”って名前を呼んだ、ウレシイよ、憶えててくれたんだね。
 オレの中の興奮度が一気にMAXに達しそうでヤバイ、ってか、水着だから興奮しちゃだめだって、いやいや、そう言う意味の興奮じゃなくて、落ち着けオレ!!!


「こ、こんにちは。今日は誰と来たの?」

 良かったら一緒に・・・って続けるつもりだった。

「うん、パパと一緒に来たの、ほらあっち」

 指差した先には飯島専務が。

 うっ、男のオレから見ても程々に付いた筋肉がイイ感じだ。
 それにあの甘いマスク。いつ見てもモテそうで羨ましい・・・

 案の定、周りにいる女どもがチラチラと見てひそひそ喋りながら頬を染めている。


「あはは、パパぼ〜っとしてる。じゃあ、月島さん、私行くね!」
「あっ、ハナちゃん」
「え?」

 オレは何も考えずに、ただ引き止めたくて名前を呼んでしまった。
 けど、真っ直ぐな瞳に返す言葉が無くて。

 えっと、えっと、


「そう、・・・っ、あのさ、水着、似合ってるよ」


 思いっきり爽やかスマイルで。
 ここは営業マンとして、どんな誉め言葉でもサラリと言えてしまう、いわば特技みたいなもんだ。
 (この場合、本心だけど)


「えへへ、ありがと〜。じゃあね〜」

ハナちゃんは嬉しそうに照れてはにかんで、手を振って専務の方まで走っていった。

カ、カワイ・・・っ
(鼻血でそうだ!!)



 それから、オレはプールへと戻ってヤロー5人で虚しく泳いでいたんだけど。
 噂以上に仲がいい専務とハナちゃんに驚いた。

 嬉しそうに腕をくんだりして、とっても楽しそうに笑ったかと思えば、専務は「カワイイ」を連呼して何度もハナちゃんを抱きしめる。
 ハナちゃんも恥ずかしそうにするものの、あの年頃の子にありがちな【父への拒絶反応】というものが全く見られず、ちょっと嬉しそうに見えた。
 何となく恋人同士みたいで錯覚しそうになった。


 ・・・でも、親子だし。


「もうカワイすぎだよっ、チュってしたくなっちゃうじゃないかぁっ!」
「ひゃぁっ、ダメだよぉ」


 ・・・羨ましいほど仲がいいよな・・・・・・


「ね、パパ。聞いていいかなぁ」
「なぁに?」
「水着、・・・似合ってる?」
「うん、とっても。次はワンピースにしようね!」
「・・・? うん。でも、パパ、水着選ぶときワンピースには全然興味示さなかったよね」
「そんなこと無いよ! 華ちゃんが着たらなんだってカワイイからね!!」



 専務はムキになって、ワンピースを連呼していた。
 まぁ、確かに何着てもカワイイだろうけど、肌の露出加減がオレ的には今のがサイコーだったりして・・・



 それはそうと。

 今日で二度目だ。
 モチロン、ハナちゃんとの偶然の出会いが。

 これで三度目があったら・・・
 そう思うとオレは胸の奥がザワザワしてきて、何度も何度も楽しそうなハナちゃんに目を向けていた。


 それから、オレに気づいた専務が挨拶してくれたんだけど、妙にハナちゃんを後ろに隠してガードしているように見えた。
 もしかしてオレの目線イヤらしかったのか!?

 ・・・なんて思ったけど顔を見ればいつも通りだし、ハナちゃんも普通だし。
 元々あんまり深く考えないオレの思考はそこまででストップして、三度目の出会いを期待しつつ、ちょっとした未来まで想像してしまった。



 ───飯島専務を『お義父さん』なんて呼ぶ日があったりして♪


 なんてね。





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