ヴァンパイアシリーズ『呪縛』より
秘密(後編) |
3.意外に気の合いそうな男たち 「はーーっくしょんッ!!」 古典的ながら、噂されてくしゃみをしたのは他でもない、乾である。 彼は宮殿に滞在中のクラウザーを誘って森の散策に出るところだった。 「大丈夫ですか?」 「・・・ん? 大丈夫大丈夫、美女が噂してるんだろ」 乾はニッと笑い、何か思いついたらしくクラウザーの側に寄っていく。 「ところでさぁ、バアルって美女が多いよなぁ。王子だとその辺りってどうなの? イロドリミドリ?」 「・・・・・・は、いや・・・・・・あの・・・・・・」 唐突な質問にクラウザーは真っ赤になって俯く。 面白い反応に乾は益々楽しそうにニヤニヤして、追求を強めてみることにしたらしい。 「この国と違って一夫多妻もOKなんだろ〜? その辺りどうなのよ、ん? 童貞ってコトはないだろ〜?」 「どっ・・・ッッ・・・・・・〜〜〜、・・・・・・」 下品な質問に乳白色のクラウザーの顔は益々真っ赤になった。 恐らく彼にこのような質問を投げかけるような輩など、一人もいなかっただろう・・・・・・ 「・・・・・・じょ、・・・女性をリードする為に・・・多少の・・・・・・経験が必要という考えは・・・・・・あるかと・・・・・・」 「だよなぁっ、俺達話が合うみたいだな」 「・・・はぁ・・・そ、そうですか。・・・でも、妻は一人しか要りません・・・」 「えぇ〜〜〜!?」 驚いて仰け反る乾にクラウザーは小さく咳払いして、柔らかく微笑んだ。 「フィアンセがいるんです。私は彼女だけを幸せにしたい・・・」 「・・・・・・へぇ・・・、そりゃそっか・・・、・・・・・・美人?」 「えぇ、とても。神に愛された造形とは彼女の事を言うんですよ」 「うわ〜・・・すごいノロケ・・・・・・、一度会ってみたいもんだね。アンタの方がよっぽど神に愛されていそうな造形しといて」 「そんな事はないですよ。・・・・・・あ、美濃様だ・・・」 「ホントだ、ひとりなんて珍しいな。・・・おーい、姫さま〜〜!!」 ブンブンと大きく両手を振って呼びかけると、美濃も両手を振って返した。 「これから森の散策に行くんだ。良かったら姫さまも一緒にどう? 可愛い子がいると楽しいんだけどな」 彼女は女性に優しい乾の扱いがとても好きらしい。 嬉しそうに頬を染めて着いていきそうになるが・・・・・・ハッとして『だめなの〜』と両手でバツを作った。 「どうして? 多摩が怒る?」 「ううん、そうじゃなくてね。ちょっと用事があるの」 「そっか、そりゃ残念。また誘っても良いかな?」 「うんっ、今度は行くね。ばいばーい」 美濃は大きく両手を振って満面の笑みを作ると、嬉しそうに去っていった。 「・・・かーわいい。イタズラしたくなっちゃうね」 「・・・い、乾殿っ!?」 「ジョーダンジョーダン、・・・・・・・・・っと、今度は多摩だ・・・・・・ありゃ姫さまを追いかけてきたな」 「そうなんですか?」 「そうそう、おーい、多摩〜〜!!」 再び乾が両手を振って呼びかけると、美濃が去っていった方向へ向かおうとしていた多摩はピタリと足を止めた。 「・・・・・・なんだ」 遠目にも目立つな〜と思いながら、乾は楽しそうに笑う。 「あんまり姫さまに無茶するなよ〜」 「・・・・・・い、乾殿ッ・・・」 乾の発言にクラウザーが驚いて狼狽える。 こういう会話は全く免疫がないのだ。 しかし多摩は全く動じることなく口を開いた。 「・・・・気絶させなければ大丈夫なんだろう?」 そう言って、スタスタと足早に去っていく多摩の姿に乾は『う〜ん』・・・と唸った。 「・・・・・・なんだか、多摩がどんどん成長してくなぁ。前はあんな切り返ししなかったのに。ちょっと寂しい」 「・・・っ、貴方という人は・・・・・・」 「さぁ、俺達もさっさと行こうじゃないの。・・・・・・・・・宮殿にいると巽に色々手伝わされちまう(ぼそ)」 「え?」 「いやいや、こっちの話」 「・・・?」 「それよりフィアンセの話、もっと聞かせてよ。聞きたい」 「え? そうですか?」 クラウザーは頬を染めて、歩き出す乾の後に続いた。 色々と話を聞き出す乾の巧みな言葉にクラウザーはすっかり気が逸れ、フィアンセ話にしどろもどろだ。 それを楽しそうに聞きながら、乾は二人が去った方へ一瞬だけチラリと視線を向ける。 ・・・・・・姫さま、大変だなぁ。 心の中でそんな事を思いながら、彼はクラウザーと森の中へと消えていったのだった。 4.ヒミツ・・・? ピィ、ピィ、・・・ッ、ピィピィ、 「あ〜、やっぱりこんな所にいた・・・っ!!」 美濃は興奮のあまり頬を紅潮させながら地面にしゃがみ込んだ。 昨日の湯浴みの際、どこかから動物の鳴き声が聞こえたような気がして、それが気になって仕方がなかったのだ。 長い間、森の中ですら此処には生き物がいる気配は無く、動物など見たこともなかった。 だからこんな事があるなんて夢みたいな出来事で。 もし見つけたら、後でみんなをビックリさせようとここまで一人でやってきた、というわけだったのだ。 ピィ、ピィピィ、ピピピピ、ピーーー 元気に鳴くそれを見つめながら、はて・・・と美濃は首を傾げる。 この子って・・・もしかして・・・・・・ ───カサ・・・ ふと、後ろでかさかさの土を踏む音がした・・・ような気がした。 ハッとして振り返る。 と・・・ 「・・・・・た、多摩ッ・・・」 「・・・・・・・・・、・・・・・・何だその生き物は・・・・・・」 ピィ、ピィ、ピピィ、ピッピーーピー けたたましい鳴き声に多摩は若干退き気味のようだ。 立ち止まったまま、その場から動こうとしない。 「・・・たぶん・・・竜の赤ちゃん?」 「・・・・・・リュウ・・・・・そんなものが何故此処にいる・・・」 「・・・・・・・・・わかんない。迷子かな? お母さんとはぐれちゃったのかも・・・・珍しいよね、竜なんて小さい時に一回だけ見たきりだよ」 「・・・・・・・・・」 ピイィ、ピイー、ピー、ピピピピピピ、ッピー 「・・・・・・っ・・・、・・・・・・っっ・・・」 その竜の子供は多摩を見るなり、彼の足下に近づいてスリスリと頬を寄せて『ピィ』と甘えるように鳴いた。 「・・・・・・・・・」 「多摩のこと、お母さんだと思って甘えてるんじゃない?」 「・・・・・・なんだと・・・・・」 多摩は頬を引きつらせ、全くもってどう対応したら良いものか分からず、石のように固まった。 しかし放っておけば放っておくほど竜の子供は激しく甘えだし・・・スリスリスリスリと多摩の足に身体をすり寄せて・・・・・・ 「・・・・・・もしかしてお腹空いてるのかな・・・お母さん、ごはんちょうだいって言ってるんじゃない?」 「・・・・・・・・・・・・・・」 ごく・・・ 多摩は困惑するあまり喉を鳴らした。 自分に何が起こっているのか理解不能といった様子だ。 そして、その数瞬後に彼が真っ先に考えたことは、『現状回避』だったらしい。 少しの沈黙期間を挟み、彼は重々しく口を開いた。 「おい、・・・おまえ」 「ピィ」 「・・・少し向こうへ行っていろ」 「ピィィ〜・・・」 「・・・・・・、・・・餌は後だ」 「ッッ! ピィ!!」 竜の子は、まるで多摩の命令に従うように大きく鳴くと、そのままテテテッと走り、近くの木の陰へとサッと身を隠した。 そしてご機嫌を伺うように顔半分だけをぴょこんと見せる。 それを見て、多摩は小さく頷いてみせた。 「それでいい。呼ぶまでそこで待機しろ」 「ピピッピー!」 「・・・・・・・・・」 多摩は、小さく溜め息を吐いた。 心なしか疲れた表情を滲ませているように見えるのは気のせいなのか・・・。 しかし美濃はそんな多摩の気を知ってか知らずか大興奮ではしゃいでいる。 「すごーい、多摩すごいすごい!!」 「何が凄い」 「会話した、あの子言うこと聞いたよ、あんなの見たこと無いよ〜。ところで何食べるか知ってるの?」 「・・・・・知るわけ無いだろう」 「巽なら知ってるかも。後で聞いてみようよ・・・っ、んッ・・・」 そんな事はどうでもいい・・・というように彼は美濃の唇を己の口で塞ぐ。 周囲に湿った音が響き、美濃は突然の出来事に小さく藻掻いた。 「・・・そう言えば、今朝はまだおまえを抱いていない」 耳元で囁きながら多摩はやんわりと胸に触れる。 「・・・あっ、やだっ、こんなところでやだっ! あの子が見てるもん」 「だからどうした、大層なことではないだろう?」 小さな抵抗を無視するように、ゆっくりと身体中に指を滑らせる。 ぴくん、と僅かながら反応する美濃の様子に目を細め、多摩は彼女の口の中に自分の人差し指と中指を差し込んだ。 「・・・ふあ・・・あ、・・・っ」 口の中いっぱいに多摩の指を咥え、舌をぐりぐりと撫でられる。 美濃は何ひとつ言葉を発することが出来ず、緩慢な動作で、その長い指を口から出したり入れたりと何度も繰り返された。 そうやって咥内を好きなように弄られ続け、口を開けているのが苦しくなった頃、多摩は唾液で濡れた指を引き抜いて満足そうに笑みを浮かべた。 「・・・あ・・・ふぁ・・・・・・は、・・・はぁ・・・」 そして、美濃が抵抗を緩めたのを良いことに器用に服を捲り上げ、多摩は彼女の下肢に手を伸ばし、唾液でたっぷりと濡れた指を内部へと沈み込ませていく。 美濃は『ん』と小さく叫んで強く目を瞑った。 「ん、ん、・・・、あっ、・・・あっ、ん」 「・・・なんだこれは。・・・指を咥えるだけで濡らしたのか?」 ぐちゅ、中を掻き回しながら多摩が意地悪く笑う。 「んっ、だって・・・・」 「・・・なんだ?」 耳元で囁かれ、ぞくん、背筋が粟立ち力が抜けた。 「はぁ・・・ぅ・・・、多摩のゆび、が・・・口の中・・・で・・・あんな風に動くから、・・・ダメって思うのにおかしくなっちゃ・・・、あっ、ああっん」 「・・・・・・美濃、・・・何を想像した。指を突っ込まれてどうされることを望んだ?」 「そん、な・・・っ」 「思うままに強請れ、そうすれば全部くれてやる」 多摩は紅い瞳を欲情で濡らしながら美濃に口づけた。 長い指で試すように中を刺激し続け、塞いだ口から『ん、ん』と切ない声が断続的に聞こえてくる。 「・・・・・だから美濃・・・、もっと俺を欲しがれ」 そう言うと多摩は美濃を抱き上げ、すぐ側の湯殿の壁に彼女の背中を押しつけ・・・ 「あぁーー・・・っ・・・」 美濃の中を強く貫いた。 普段よりもずっと深い繋がりに美濃は喉を仰け反らせると、間髪いれず注挿が始まる。 しかも、よりによって弱い所ばかりを集中的に擦られて、彼女は多摩に訴えるように抱きついた。 「あっ、あっ、もっと・・・ゆっくりして・・・っ、おねがい、多摩、多摩、もっとッ、いやっ、ああーっ」 「・・・・・・・っ・・・、このまま何度でも導いてやる・・・」 「・・・あっ、や、やぁ、あー、」 結合部から恥ずかしいほどの卑猥な音を響き渡らせ、内壁が激しくうねる。 繋がったばかりだというのに、美濃は信じられないほどの早さで限界が迫ってくるのを感じた。 「だめ、だめ、だめ、そんなにしたら・・・あっ、あっ、いやっ」 いや、恥ずかしい。 どうして私ばっかりいつもこんなに・・・。 涙を滲ませて首をふる。 多摩の所為だ、ソコばかり擦るから・・・ 多摩がそうやって苛めるから・・・。 だからあっという間に押し上げられて、何も分からなくなってしまうんだ。 「・・・はっあ、あっっ、だめなの、だめなのっ、だめ、だめ、や、や、あっ・・・や・・・・・・いやぁ、あーっ、っっ、あーーーっ」 びくびくびく・・・と身体中を奮わせながら、美濃は呆気なく絶頂に押し流されてしまう。 「・・・・・・んーっ、はっ、・・・あぅ、」 「余計な事は考えるな。・・・・・・おまえは俺の事だけを考えていろ・・・」 美濃は甘い吐息を耳に感じて、切なそうに息を吐き出した。 どうせ多摩は分かってるんだ・・・ 多摩を受け入れるのに抵抗なんて無駄だって、抗う事なんて意味がないって・・・。 唯でさえ、多摩を好きだと認めてからの私は・・・前よりも身体が敏感になって恥ずかしいのに・・・・・ 「・・・・・あっ、・・・・・・は、・・・・・・っ、多摩・・・・・っ」 未だ続く激しい注挿に身体を波打たせ、苦しいほどの想いにその身を支配されながら・・・、 美濃は多摩の首に強く強くしがみついた。 ───ところで、竜の子は・・・というと。 「・・・・・・ピィ・・・・・・スピ〜・・・」 大人しく木陰に隠れたまま、多摩に「来い」と呼ばれるまで寝ていたそうな。 その日から住人が一匹増え、食糧確保の為に頭を悩ませ日々奔走する巽がいたとかいないとか・・・ Copyright 2010 Sakuya Sakurai. 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