一歩ゼンシン!(後編)







「ジローちゃんって、信じらんないくらいばかだね」

「・・・」

「何で言ってくれなかったの!?」

「・・・言えるわけ・・・ない」

「だからばかだって言ってんの!! ばかばかばかばか、大バカ!!!!!!」


 何もそんな連呼しなくても、と思ったけど、もはや言い返せる気力もなかった。
 僕に出来ることと言えば、こうして項垂れることくらいなもので・・・


「もう、勘違いしないでよっ! どうしてそんな風にとるわけ!? 私は愁の事今は何とも思ってないし、普通に喋ってたつもりだよ、ジローちゃんの先入観でそう見えるだけなんだからっ!! 好きだって言ってるじゃない、信じてよ、ジローちゃんが信じてくれなかったら、私の気持ちはどこへやればいいのよっ!!」

「・・・志穂?」

「私だってね、ずっと気になってたんだからッ。ジローちゃんが触れてくれないのは、私が初めてじゃないからなのかなって、ホントは好きじゃないのかな、同情でつき合ってくれてるのかなって・・・なによっ、なによぉっ、バカバカバカバカバカ〜〜〜〜〜ッ!!!!!!!」

「・・・・・・・・・」




 ───だ、大爆発・・・

 凄い迫力で、口を挟む余地がない。
 だけど、こんなに感情を露わにして泣きわめく志穂なんて、初めてで・・・


「・・・あ、あの〜・・・」

「バカッ、アホジロー! 死んじゃえっ!!!」


 スゴ・・・子供みたい・・・


 でも、もしかして
 そんな風になるほど、僕の事・・・

 そう思っても・・・いいのかな。

 自惚れなんかじゃないのかな。


「僕は・・・志穂が・・・好き・・・だよ」
「私だって好きだよっ、ジローちゃんに負けないくらい好きなんだからっ!!!」

 怒った顔して涙をポロポロ流して、それは普段の志穂とは全然違うんだけど。
 これもひっくるめて志穂なんだって・・・思った。
 そう思えると、無性にその姿が可愛くて愛しくて仕方が無くなる。


「何でそんなに泣くの?」
「だって・・・ジローちゃん、絶対私と別れるとかそんなこと考えてた」

 うわ、鋭い。
 っていうか、別れを切り出されると思ったってのがホントなんだけど・・・

「そ、そんな事無いよ、思うわけないじゃない」
「うぅ〜〜〜っ、ホントに? ・・・私のこと、好き?」
「・・・す、す・・・好き・・・だよ」
「なんでどもってるのぉ!?」
「ちがっ、だって、告白とかって・・・滅茶苦茶恥ずかしいんだからねッ!!」

 そうなんだ。
 好きとかそんなの慣れなくて。
 でも、今言わなきゃって思ったから。


 だけど、こんな時に志穂には悪いんだけど。
 今はそれより何より、どうにかしたいと困り果てていることがあって・・・


「・・・あのさ、そろそろ、どかない?」

「え?」


 志穂は、泣きわめいてるときもずっとずっと、僕の上に乗ったままだった。
 それは今のこの状況でも変わりはなくて、これは流石にもやもやとしたイケナイ感情だって生まれてくるっていうもの。
 僕だって健全な男子高校生。
 好きな子の柔らかい身体をこんな風に感じてしまったら、理性を保つのは大変なことなんだ。


「・・・・・・・・・やだ」

「えぇ!?」

「・・・ジローちゃんがスッゴイ奥手だって事はわかった。けど、私、不安だよ、キスだって数える程度で」
「さ、さっきキスしたじゃ」
「あれは、私からでしょ!?」
「・・・・・・」
「何よっ、私の気持ちも知らないで! ジローちゃんを押し倒すのにどれだけ決心がいったか知らないでしょ、今日の朝からドキドキして大変だったんだから」
「朝から!?」
「だって当の本人はいつもボ〜っとして全然その気がないし・・・ッ、だけどジローちゃんが好きで好きでどうしようもないんだもん。だからジローちゃんが今まで私にくれたものとか、何度も思い返して自分を励まして」
「・・・? 僕があげたもの?」

 ハッキリ言って何かをあげた記憶は・・・ない・・・んだけど。

「そう、愁にフラれた後、ずっと落ち込んでた私に何も言わずにジローちゃんが側にいてくれたこととか、繋いだ手が温かかったこと、初めてのキスでジローちゃんが緊張しすぎてガタガタふるえてたこととか、だけどその後好きって言ってくれて、でも抱きしめてた腕がガチガチだったこととか、最初のデートではジローちゃんお腹壊しちゃってトイレばっか行ってたけど、青い顔しながら家までちゃんと送り届けてくれたし、そういうこと全部全部、ジローちゃんが私にくれた思い出だか・・・っきゃあ!?」



 もうね、なんていうか、やけっぱち。


 志穂にそれ以上僕の恥ずかしい過去を口にして欲しくないっていうのと、そんな小さな事まで大事に憶えててボロボロ泣いてる志穂がカワイイっていうのとごちゃまぜになって。

 つまり、咄嗟に身体が動いたんだ。
 志穂の腕を引っ張って思いっきり引き寄せて抱きしめて。
 その柔らかい唇に自分のを押しつけて、驚いてる志穂に構わず舌を滑り込ませて彼女のを絡め取ってやった。

「・・・んぅ・・・ふ」

 息が出来ずに苦しそうな志穂の声が、喘ぎ声にも聞こえて・・・
 ただ、抱きしめてキスしている今、彼女が僕の上に乗っているということだけが気に入らなかった。


 だから・・・僕はそのまま身体を回転させて


 ───あ、志穂を組み敷いてる・・・・・・・・・・・・


 ついさっき、志穂にどいてって言ったばかりなのに。
 それなのに。




「・・ジ・・・ロー・・・ちゃん」

「・・・っ・・・!」


 マズイ、マズイって、そんなとろんとした顔で。
 女の子が下にいるってだけで、こんなにも気分が違うものなんだろうか。

 何というか、独占欲?
 いや、征服欲・・・え〜と、支配欲・・・というか、そういうのが出てきて・・・
 否応なしに反応してしまった、僕の下半身・・・・・・っっ



「好き、・・・ジローちゃん」

「・・・〜〜〜っっ!!」




 僕の理性が───『ぷっちん』

 そんな音とともに、砕け散ったような気がした・・・・・・



 そうなると僕の手は自分の意志とは思えないくらい、荒々しく志穂の制服の下に手を突っ込んだりして、彼女の胸とか、足とか、それはもう好き放題に触りまくった。
 乱れた制服を見て更に興奮してしまい、息が荒い自分を遠くに感じたけれど、それがまるで変態のようだなんて、そんな事を考える冷静さは微塵もなかった。

 そして、僕の手は徐々に徐々に下に降りていき、彼女のショーツ越しに秘部をなぞり、ソコが湿っていることを知ると、その薄布を一気に引き下ろした。



「・・・ん・・・恥ずかしい・・・・・・」


 顔を真っ赤に染めて身を捩る志穂が可愛くて、その身体をもっと羞恥に染め上げたいと思った。
 指をツプリとナカに埋め込んでみる。


 ・・・これは・・・想像以上に、


「志穂、カンジてるの?」

「あん・・・やぁ・・・っ・・・」

 反応する都度その場所を執拗に攻めて、耳元で問いかけた。
 志穂は瞳を潤ませて小さく頷いてくれる。


 やばい、やばい、すごいえっちで・・・カワイイよ。


 スゴイ・・・・・・好きだ。




 彼女の乳房を口に含んで、舌で弄ぶ。
 そうすると、志穂の女の子の部分がヒクヒクとしてきて、次から次へと液体が流れ出してくる。ホント堪らない。


「・・・・・・志穂・・・・・・いい・・・の? ホントに・・・止まらないよ?」

「いいの・・・っ、ジローちゃんが好き、だから・・・・・・」


 きっともっと彼女を感じさせるべきなんだと思う。
 男と女は違うから、準備だってもっといるんじゃないかって。


 ───でも、もう限界。
 僕はズボンのベルトに手をかけた。

 男の限界なんていうものは、結構呆気なくやってくるものなのかもしれない。



「・・・ああんっ!!」


 己を宛い、一気につき入れる。
 その衝撃で体を反らした志穂の喉に噛みつくようなキスをした。

 あぁ、駄目だ。
 おかしくなりそうだ、コレだけだって気持ちがよすぎる。

「・・・動く・・・よ」

 言うと同時に腰が勝手に動きだす。
 視覚が志穂の艶めかしい姿を映しだして、沸騰しそうな興奮を彼女にぶつける事でしか解消できない。
 ヤバイ、本気で、気持ちよすぎて止まらない。


「あっ・・・ああっ、ジローちゃんっ、もっと優しく・・・ジロー・・・ちゃぁんっ、ああっ!」

「志穂、・・・はぁっ、はあ」


 ごめん、優しく出来そうもない。
 この経験したこともない快感は、自分をセーブ出来ずにガンガン打ち付ける事しか・・・

 最低だけど、わかってるけど、自分では止められなくて。
 結合部から聞こえるイヤラシイ音も僕を更に興奮させて、激しく動く腰は限界地点が近づくほどに勢いを増していくだけだった。



「好きだよっ、志穂が・・・好き・・・っ」


 告白が今の僕に出来る精一杯。
 ぐちゅんぐちゅんってスゴイ音が部屋中に響き渡って、そんな中、単なる野獣と化した僕の目はきっと血走ってる。

「ああっ、いやあ、あっ、あ」


 もう何がどうなっているのかわからない。

 そもそも何故こうなったのか、
 志穂を犯しているのかそうじゃないのかさえもこの状態からは思い出せなかった。


「あぁ、ジローちゃんジローちゃんっ! あああああっっッ!!!!!」




 突如。

 志穂が僕をこれでもかってくらいギュウギュウに締め付けて、抱きついてくるものだから、


 足のつま先から、頭のてっぺんまで、


 ビリビリって快感が全身を一気に駆けて・・・




「・・・・・・っうぁ・・・っ、・・・志穂・・・・・・っっ」





 ・・・うわずった声を発した直後、


 弾け飛んだ。










 あぁ・・・天国ってこんな所なのかもしれないなぁ。




























▽  ▽  ▽  ▽




 10分後───





「ごめんなさい」


 そこには、土下座をしながら志穂に謝る自分の姿があった。


「もうっ、しんじらんない!」

「・・・今度から気をつけます・・・」

「今度!? またスル気なんだ? あれだけ私とするの嫌がってたのに!?」


 別に嫌がってたわけじゃないけど・・・
 でも、今は平謝りするのみ。


「あんなに激しいの、初めてだったら絶対耐えられないんだからねっ!」

「・・・はい、ごめんなさい」

 全くその通りです。
 志穂が初めてじゃなくてよかった・・・初めてだったら絶対嫌われてたよ。いや、それだけじゃ済まないかもしれない。


 僕がしょんぼりと項垂れているのを見て、志穂がふぅと溜息を吐いた。
 あぁ、僕ってホントかっこわるい。



「・・・ねぇ、聞いていい?」

「うん」

「・・・私のこと好き?」

「う、うん」

「・・・・・・気持ちよかった?」

「・・・・・・・・・・・・めちゃくちゃ・・・よかったです・・・」

 あんなに気持ちイイものだなんて思わなかった。
 自分でするのなんて比べものになんないよ。


「そっか・・・」
「志穂?」

「・・・良かったぁ・・・」

 安堵したように志穂は微笑んだ。


「・・・ホント言うとね、ジローちゃん、ちょっと・・・かっこよかったよ、なんて」

「えっ」


 上目遣いで照れたように言われて、驚きとともに愛しくて可愛くて仕方なくて志穂を抱きしめた。
 スゴク細くて小さくて、温かくてやわらかい。


「本気にしちゃうよ?」

 僕の問いに応えるかのように、きゅっと志穂が僕を抱きしめかえしてきた。
 あぁ、めちゃくちゃ好きだよ。

 明日からは愁に嫉妬するのはやめよう。

 誰かを見て自信を無くすなんて日常茶飯事だけど、
 志穂が僕を見てくれるってことは、僕にも少しは良いところがあるのかなって、ちょっとは自信を持ってみようって思う。


 僕らしく志穂を見ていくからさ。

 それでいいよね?






BACK  NEXT

2004.12.31 了



Copyright 2004 桜井さくや. All rights reserved. Never reproduce or republicate without written permission.