『TWINS』
○第12話○ 両想い【前編】 「あん、やぁ」 「リン、カワイイ声、もっと聴かせて」 彼女の上に覆い被さり、首筋を愛撫する。 それだけで鈴音は甘い声をあげた。 二人は近くのラブホテルに入っていた。 部屋に入ると同時に愁は堪らず彼女を押し倒し、まるで手品のように服を脱がしていった。 全て成されるままだった鈴音は、愁の行動の素早さに驚いてしまう。 ここに来るまでとんでもなく速かった。 まるで早送りの映像を見ているみたいで、口を挟めるような状態じゃなかったけれど・・・ 「愁く・・・ん」 「リンの胸もカワイイ、先の方も綺麗なピンクで」 「やぁっ、ねぇシャワー浴びたいよぅ」 「ん〜、終わってからでいいじゃん」 「やだ〜、初めてなのにこんなのっ!」 「は?」 初めて、という言葉にきょとんとして愁は首を傾げた。 鈴音とこうするのは2度目なのだ。 前にラブホテルに入ったときは途中で逃げ出されて未遂に終わってしまったから。 一体何が初めてなんだろうか。 何のことか分からないといった表情の愁に、鈴音は恥ずかしそうに視線を逸らしながら口を開いた。 「・・・だから・・・、あの、お互いちゃんと好きって言って・・・それで」 「・・・あぁ。綺麗な身体で愁に愛されたいって?」 ボボボボッと火を噴きそうな程恥ずかしい台詞をニヤニヤしながら言われて、鈴音は穴があったら本当に入ってしまいたくなった。 どうしてこんな事を恥ずかしげもなく口に出来るんだろうか。 「し、愁くんって、デリカシーないっ!」 「い〜じゃん、全然臭くないよ? それに例えどんなに悪臭が漂ってようが、リンならいいよ」 「やだ〜〜〜っ!!! バカ〜〜〜っ!」 そんな風に言われたら絶対にシャワーを浴びずにはいられない。 何が何でも入ると言い張り、鈴音は暴れ回った後、愁の手の中から逃れ、シャワールームへダッシュで逃げ込んだ。 「なんだぁ?」 取り残された愁は、何か変なこと言っただろうかと考えを巡らすが、結局答えを出せず、ゴロンとベッドに寝転がった。 「やっぱリンって難しいなぁ・・・」 女心なんて一般的なもんはどうでもいいけど、リンの事はなんだって知りたいのに。 リンが何を考えているのか、何をどう思っているのか、体も心も全部。 でも、それはオレには何よりも難しいことで。 だから、今日その一端を知ることが出来て、それが自分への想いだと知り、驚きと同時に歓喜に打ち震えた。 耳元で何度も好きだと囁かれたときは危うく身体が反応するところだった。 あんなリンを見て、もうガマンなんて出来るわけがない。 「シャワーなんて別にいいのになぁ・・・・・・ホントに」 はぁ、と残念そうに小さく息を吐いて、恨めしそうにシャワールームの水音を聞く愁だった。 ▽ ▽ ▽ ▽ 「もうっ、愁くんって信じられない、バカバカッ!!」 文句を言いながら身体の隅々まで丁寧に洗う。 本当にどうしてあんな性格なのに好きになってしまったんだろう。 ちっとも乙女心って言うものを理解していない。 何であんななのに女性にモテるのか信じられない。 ・・・あんなに、 ストーカーみたくされるくらいどうしてモテるんだろう。 今だって携帯にも家にも、沢山女の子からコールが絶えないって沙耶さんぼやいてたし。 思い出したら、何だか胸が潰れそうなくらい苦しくなってきた。 彼こそどうして自分を好きになってくれたのかわからない。 あんなに大勢いるのに、それなのに。 ・・・・・・でも、愁くんは優しい。 さっきまでは悪口いっぱい考えたけれど、何だかんだでいつも助けてくれるし、あったかい。 一緒にいれば楽しいし、いっぱい世話も焼きたくなる。 触れられるのが恐いのは愁くんが好きだから。 今だって触られた場所がドキドキして、そこが心臓になっちゃったみたいだ。 それがずっと恐かった。だけど、今はそれだけじゃなくて。 自分からも触れたいって思ってる。 それに、彼のように素直に自分を表現できるっていうのは一種の才能かもしれない。 好きと言っただけであんな風になるなんて思わなかったけど、全身で嬉しいって言われてるって分かって、そんな愁をもっと好きになった。 そこまで考え、鈴音はふぅっと溜息を吐く。 結局好きになってしまえば、大抵の事は水に流せてしまうようだ。 元々幼馴染みというだけで気兼ねする仲でもないから、言いたいことも我慢せずに言えてしまう。 今更ながら不思議だなぁと思い、シャワーを留め、バスローブを羽織って愁の元へとゆっくり歩いていった。
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