放課後、智が生徒会室で1人でいると、パタパタと可愛らしい足音が聞こえてきた。
「智くん、もう帰れる〜?」
ひょっこりと顔を覗かせ、鈴音が現れた。
智は、ここでも新聞を読みながらコーヒーを飲んで、実に落ち着いた空間を見事に作り上げている。
この学校の生徒会室では、コーヒーはインスタントではなく豆から挽いたものをドリップして飲むことが出来、奥には会長の為の部屋も用意され、彼の座っている椅子も高級そうな黒い革張りのものだった。
驚きなのは、所謂社長椅子のようなそれに智が腰掛けても不思議と似合っていることだ。風格さえ漂っている。
とにかく、様々な特別な待遇も、与えられた仕事量を考えれば当然と言えるほど彼は多忙を極めていたし、生徒や教師からの信頼も一生徒へ向けられるものとはとても思えないほどだった。
「リン、ひとり?」
「そうだよ」
智は少し考えるような仕草をして、すぐに鈴音に顔を向けると穏和に微笑んだ。
「じゃあ、リンにもコーヒーを御馳走するよ。入っておいで」
「わ〜い」
にこにこしながら、ドアを閉めてソファに腰掛ける。
智はその間にコポコポとコーヒーをカップに注ぎ、部屋中に芳ばしいいい香りが漂いだす。
砂糖とミルクをたっぷり入れて鈴音に渡すと、彼女は嬉しそうに微笑んでそれを受け取った。当然ながら彼女の好みなど、熟知している。
「なんかさぁ、こういうのってワクワクするね。学校でこういうのカッコイイねぇ」
「そう?」
「智くんは普通かもしれないけど、わたしはドキドキするなぁ」
猫舌の彼女は入れたての熱いコーヒーを飲むことが出来ず、フーフーと口を尖らせながら一生懸命冷ましている。
その姿がとても可愛らしくて智は目を細めた。
「リン、こっちにおいで」
「うん?」
首を傾げながら立ち上がり、智に近づくと、カップを取り上げられて、それに目を奪われているとふわりと抱きしめられた。
智は、小さい彼女をこのまま思い切り抱きしめたらどうなってしまうだろう、と頭の中で考えながら、鈴音の顎を持ち上げ彼女に口づける。
「・・・んっ」
そのままで、ブラウスのボタンを器用に外し、空いている片手はスカートの中に滑り込ませる。滑らかな彼女の太股がとても心地よく、いつまでも彼女に触れていたいという気にさせた。
鈴音はこの二年間続けられた智との行為を一度も拒絶したことはない。
初めての時こそ怖がったり痛がったりしたものの、慣れてくるに従って智のするままに身を任せるようになった。
しかし、今日はちょっといつもとは様子が違う。
何せ生徒会室だ、いくら会長専用の部屋だとはいえ、ドアを閉めただけではいつ誰が来るかわからないし、学校でそういうことをするなんて考えたこともない。
鈴音は唇が離れると困ったように目で訴えた。
「大丈夫、今日はもう何もない。誰も来ないよ」
「・・・で、も・・・・・・」
「平気だよ。オレがリンに嘘をついたことがある?」
「・・・・・・・・・ナイ・・・」
「だよね?」
「・・・・・・・・・・・・ぅ・・・、ん・・・」
まだ戸惑いの色は見せているものの小さく頷く。
鈴音は何にしても、智に対しても愁に対しても首を横に振るということは記憶を辿る限り殆どない。
どうやらそれは、絶対の信頼を寄せている存在だから、という彼女なりの無意識の法則のようだった。
智はそれを利用して彼女に告白したが、それで彼女が手に入るのなら手段など何でもいいと思っていた。
思っていた通り彼女は自分の恋人になったし、今だって自分の腕の中にいる。
これからもこうしていくのは自分だけだ、そんなことは疑いもしないが、もう1人の片割れが唯一彼を脅かす存在ではあった。
智はそこまで考えを巡らし、苦笑した。
ソファに組み伏せ、あられもない格好をしている目の前のこの子はもう既に手に入れている。何を怯える必要があるというのだろう。
彼はショーツの隙間から手を滑り込ませ、直接触れると彼女の息を呑む音を聞いた。
「リン、もう濡れてる」
クチュリ、とわざと音をたてて秘部をなぞり濡れた手を彼女に見せつける。顔を真っ赤に染め、見ないように目を瞑り、顔を背ける姿が愛しくて鈴音の頬にキスをした。
ブラジャーをたくし上げ、形のいい可愛らしい胸についたピンク色の蕾を口に含み、舌で転がす。
その間、鈴音は、はぁ、と小さく息を吐き、目を閉じて快感に堪え続けている。
睫毛が小さく震え、桜色の頬をした彼女の姿は、普段いくら冷静沈着で誰からも信頼の厚い生徒会長という肩書きを持つ彼であろうと、理性を吹き飛ばすのに充分だった。
智が指を動かすたびに卑猥な音を発する彼女の秘部に中指をゆっくりと埋め、同時に剥き出しの芽をつまみ、優しく擦りながら指を出し入れすると、鈴音は小さく奮えた。
「・・・っん・・・・・・っ」
彼のYシャツの袖を皺になるほどギュウッと握り、断続的に与えられる刺激に内壁がヒクヒクと蠢く。
智は、そんな彼女の様子に堪らなくなり、彼女の舌を絡め取りながら激しくキスをして、その間にショーツを一気に取り去った。
ベルトを外して、ズボンを降ろし、張りつめていた自分の分身を解放すると、胸ポケットに入った生徒手帳からゴムを取りだして、慣れた動作で装着する。
愁ならともかく、智の生徒手帳にコンドームが忍ばせてあるなどと、一体どこの誰が考えつくだろうか。
智は鈴音の足を開き、彼女の体の間に自分の体を割り込ませると、中心部に自身をあてがった。
その時初めてビクッと鈴音の体が強張り、少しだけ不安そうな顔をする。
どうやら彼女のは狭いらしく、智を受け入れるときはいつも痛みを伴うらしかった。
智は、彼女の頬を優しく撫でながら、少しでも痛みが少なくて済むように、ゆっくりと自身を沈め込ませていく───
「・・・痛い?」
「・・・・・・ちょっと・・・・・・っ、でも、だいじょぶ・・・・・・」
小さく微笑む鈴音がとても愛しい。
優しく唇を重ね、彼女の腕を自分の首に巻き付けさせて、緩やかに腰を動かしていく。
次第に鈴音の苦しそうな表情が変化し、甘い吐息を漏らし始める。
何度も何度も突き上げ、緩慢な運動だけでは我慢できなくなり徐々に激しい動きに切り替える。肉のぶつかる音と、智が動くたびに鈴音から発する卑猥な音、二人の荒い呼吸音、それらが室内に響き渡り、段々と彼女の締め付けもきつくなる。
「リン、・・・っ」
「・・・っ・・・・・・ん、・・・っ」
鈴音は声を堪え、必死で智にしがみつく。
幾度となく声を聞かせて欲しいと頼んでみたが、彼女は恥ずかしそうにするだけで今まで一度も激しく乱れ鳴く姿を目にすることは出来ていない。
その代わりしっかりと抱きついた腕はふるふると奮え、普段よりも何十倍も可愛く、愛しいと思わせるような表情は彼しか見ることが出来ないものだ。
鈴音の潤んだ瞳を見るだけで、充分彼女が感じていることはわかるし、今はそれで良しとすることにした。
「・・・はぁっ、リン、リン・・・っ」
「・・・ん、智くん・・・っ」
鈴音は小さく彼の名を呼び、突き上げられる刺激に耐えられなくなってきた。それは智とて同じことで、上り詰めるまでにそう時間は要さないだろう。
激しい息づかいと腰使いで何度も彼女を追いつめる。
何度でも一生でも、永遠でも彼女を自分のものにしておく、そんな思いを乗せながら、細いけれど柔らかい鈴音の身体を抱え込むと同時に深いキスをして、小刻みに彼女を揺らす。
「・・・・・・んっ・・・・・・」
暫くしてビクリ、とお互いの身体に電流が走ったようになり、二人は一気に頂点に上り詰めた。
鈴音は身体をガクガクと奮わせ、智はブルッと奮えて鳥肌をたてて欲望を吐き出しながら。
少しすると、二人の力が一気に抜け、崩れ込むように智の身体は鈴音の上に覆い被さった。
ドクドクドクドクと、どちらのものともわからない心臓の音が聞こえてきて、何だか二人の距離が近づいたような気がする。
智はゆっくりと顔をあげ、鈴音の頬にキスをした。
「リンは、オレが好き?」
「うん、好き」
即答。
だが、愁に向かって言う好きとの違いがこれのどこにあるのだろうか。
智に抱かれながらも、決して変わることのない彼女の幼い心。
それには、智も何となくだが気づいている。
しかし、彼女はちゃんと腕の中にいるのだということで自分を納得させ、焦ることはよくないと、じっと彼女の気持ちが自分に追いつくのを待ちつづけている。
そう、時間ならまだ沢山ある。
リンはゆっくりだけど、ちゃんと成長してる。
智は、優しい眼差しで彼女を見守るように微笑みかけた。
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