『約束』
○第6話○ 君のために出来ること(その2) 「・・・・・・っ、ストップ!」 レイは美久の腰を掴み、自身の先端が彼女の中心に押し当てられる一歩手前で行為を中断させた。 「・・・っ、・・・・・・えっ!?」 美久は突然のことに、もの凄く驚いた顔をしている。 どうやら中断させられた意味を理解していないようだ。 どうしたものかと、レイはひとり小さく息を吐いた。 「・・・あのさ、ソレ絶対入らないと思う」 「え・・・? だって・・・この間はちゃんと・・・」 「この間は、美久の準備がある程度は整っていたし、オレの方も・・・まぁ、そういう状態だったし」 「・・・?」 いまいちそれが何のことかよく分かっていないらしい。 確かに一生懸命なのは認めるし、ある程度尊重してやりたい気もする。 しかし、先ほどからズボンを脱がせたり下着を脱がせたりする動作で、不器用な分やたらと敏感な部分を無意識に刺激されてしまい、微妙に身体が反応してしまって中途半端にやる気になっている状態だ。 たとえ、これがもの凄く興奮している状態だったにしても、彼女にこれが手に負えるとは思えないのだが。 「でも・・・私の準備なんて別にしなくても・・・」 「無理に入れたら痛いよ?」 「・・で・・・でも・・・少しくらいなら我慢」 「出来ない」 「・・・っ」 「・・・そんなことしたら美久の身体が傷つくんだよ。そんな行為に何の意味があると思う? そんなのは一方的な陵辱行為と同じだ・・・、この前のが似たようなものだったじゃないか・・・、虫のいい話だって思うけど、あんなふうにはもう繋がりたくないんだよ・・・」 「・・・・・・」 「オレの言ってること、分からない?」 真っすぐ見つめて諭すようなその眼差しは、とても真剣だ。 レイはこの行為は一人だけでするものじゃないって、・・・そう言っているのだろうと美久は頭の隅で考える。 美久にしてみれば単純に身体を繋げれば彼を治せると思っていただけだったのだが、どうやらその考え方は間違っていたようだと、レイに言われて少しずつ理解する。 「・・・ごめんなさい・・・・・・」 「謝らないでいい。・・・強制するような言い方をしたオレも悪かった」 「・・・・・・・・あの・・・・・・じゃあ・・・・・・私、どうしたらいい? このままだといけないなら・・・何をすれば先に進めるの・・・?」 困り果てて聞いてみると、レイは小さく笑って美久の頬を撫でる。 「・・・それはオレに任せていいんだよ」 「・・・・・・え」 「今のオレにだってそれくらいは出来る」 「・・・・・・あ・・・・・・う、うん・・・」 全部自分でするものだと思っていたので、彼のその言葉はとても心強くて美久は思わずホッとしながら頷く。 だけど、少し動くだけでも今のレイの身体には負担じゃないだろうか・・・その想いは消えず、彼の表情を窺った。 レイはその様子を見て笑みを浮かべると、腕を掴んで自分に引き寄せた。 やわらかく唇を重ね、それが合図となって彼の手がTシャツの中へ滑り込み、器用にもブラジャーのホックが簡単に外されてしまう。 「・・・・・・っ・・・」 急に胸がスースーして何とも心許ない。 恥ずかしくなって反射的に身を捩るが、片手でしっかりと腰を抱き込まれて逃げることは出来そうもない。 そのうちに彼の指が脇腹を撫で、胸の頂をやんわりと刺激した。 「・・・あっ・・・・・・っ・・・」 「・・・逃げない」 「・・・、・・・・・っ・・・でも・・・・・・、・・ん・・・っっ」 レイは一つ一つに反応を返す美久を楽しそうに見上げ、Tシャツを胸の上まで捲り上げ、形の良い乳房に思わず目を細める。 「・・・やっ・・・そんなふうに見ないで。あんまり・・・大きく・・・ない、から・・・っっ」 「そんなことないんじゃない?」 首を振って真っ赤になる美久を見ながらレイは少し前のことを思い出す。 そう言えばクラスの男が美久の胸がどうこう言っていたような気がする・・・と。 しかし、自分以外の男が厭らしい目で彼女を見ていたなど気分の良いものではなく、こんな時にろくな事を思い出さない自分に舌打ちしたい気分だった。 レイはその考えを振り払うように、今度は美久の身体を自分の方に倒して彼女の胸に唇を寄せる。 「・・・ひゃっ・・・・・・っ」 そのまま舌で刺激してやると、美久は目に涙を溜めて頬を桜色に上気させ、切なそうに息を漏らす。 「・・・あっ、・・・レイ・・・・・・っ、・・・っふ・・・ぅ・・・」 レイはその扇情的な光景を目の前に、愉しそうに笑みを浮かべた。 そして、腰を掴んだ手を下腹部までなぞるように這わせると、既に自分でショーツを脱ぎ去ってしまった所為で何も穿いていない彼女の一番敏感な部位に直に触れ、長い指をくねらせる。 「やぁあ・・・っ!?」 「・・・大丈夫。前も似たような事してるよ」 「・・・あ、ぅっ、・・・ふぅっ・・・んんっ」 ツプッと指をひとつ中へ埋め込ませる。 それはレイが思ったよりも容易に入ってしまい、ゆっくりと抜き差しを繰り返していくと、美久から甘い吐息が漏れ出した。 そのまま様子を見ながら指を増やすと更なる刺激に追いつめられたのか、彼女の瞳から大粒の涙が零れる。 「はっ・・・あっあっ、あっ、やぁ・・・ん・・・ふ、・・・っあっ」 「わかる? 美久の中、どんどん濡れてきてる」 「・・・やぁ・・・ちが・・・っ」 「ちがうの? じゃあ、この音は?」 ぐちゅぐちゅ、と中を掻き回すと卑猥な水音がリビングに響く。 美久は更に真っ赤になって首を振っていたが、レイに刺激されるたびに自分の中が濡れていくのが分かるらしく、慌てて腰を上げようとした。 しかし、それは今の自分の目的に反すると思いとどまったのか、もう一度腰を下げてがくがく震えながらレイの指を受け入れる。 「美久の身体がオレを受け入れようとしているんだよ」 「・・・・・・あっ・・・・・・っ、んぅ・・・はっ・・・あっ、あっ、」 「わかる?」 「・・・ん・・・やぁ・・・、レイ・・・っ! わか・・・っ・・・、た、からぁ・・・っ、・・・やめ・・・っ、もう・・・へんに・・・なっちゃ」 首を振るもそれでやめる筈もなく、レイは一層強く中を掻き回して敏感に反応してしまう場所ばかりを執拗に刺激した。 「あっあっ、だめっ、あっ、あ、あ、あ・・・ッ」 「・・・いいよ、イッて」 指だけであっという間に美久を追いつめ、胸の突起を口に含むと甘噛みをして舌で何度も弾く。 美久はビクンと身体を大きく震わせ、喉をのけぞらせると一際高い声で啼いた。 「ああっ、ああっ、レイ、やあぁ、・・・あああーーーっ!」 断続的に指を強く締め付け、彼の名を叫びながら果てる姿は何とも言えない征服欲を掻き立てられ、胸が熱くなる。 「・・・美久・・・・・・可愛いね」 苦しそうに息を吐く美久に構うことなく、レイは彼女の唇を奪うように口づける。 ねっとりと舌を絡め、一方では労るように頭を撫で、そしてもう一つの手では休むことなく下腹部への刺激を延々と続ける。 「・・・・・・んっ・・・んんぅ・・・・・・っ!! ・・・あっ、・・・はっ、・・・も・・やだぁ・・・っ、ん、ふぅ・・っん」 唇の隙間から苦しげに喘いで訴える姿がたまらない。 一度達したことによって刺激に敏感になったのか、抵抗しているくせに強請るように断続的に指をキツく締め付けている。 小さく藻掻き、逃げようとする姿が愛おしく、レイは容赦のない狂おしいまでの刺激を間断なく与え続けていく。 「・・・やぁっ、・・・レイ・・・ぁっ、、んぁあ・・・っ」 巧みに動く手や舌の動きは、抵抗を赦さない。 上に乗った美久の方が余程自由に動けるはずだが、その身体は少しも思うようには動かせず、レイが与える刺激に従順に反応するばかりで全く制御が出来ないようだった。 「・・・あ、あ、やぁあーーーっ、っ、・・・・・・・・・・・・あぁ、っ・・・ん・・・・・・・・・はッ・・・、ぁ・・・」 続けざまに呆気なく達してビクビクと奮える美久の様子を、レイは満足そうに眺める。 しがみついて熱い息を吐き出し潤んだ瞳から涙の粒が零れたのを見て、彼はそれを舐めとりながらゆっくりとじらすように指を引き抜いた。 「・・・あっ・・・ぅっ、ふ・・・っ・・・」 「少し・・・・身体が動かせそう」 「───、・・・ッ、・・・え、・・・ほ、ほんとう!?」 「うん」 既に目的を見失いかけていた美久は一気に現実に引き戻された。 ならば、今の行為で彼に何らかの力を与えられたと言うことになるんだろうか。 一体どういう理屈か全く理解不能だが、もしそうならこの恥ずかしさも報われるというものだ。 そう思ってレイの顔をじっと見つめる。 ・・・・・確かに・・・言われてみれば、目覚めたときよりも頬に赤みが差している・・・ような気がする。 けれど、美久を見上げて笑みを浮かべる姿は冷静に分析することさえ許してくれない。 彼は濡れて光る自分の指を、一本一本見せつけるように厭らしく舐め始めたのだ。 「やぁ・・・っ、や、やだーっ!! ・・・そんなの舐めちゃだめーっ!」 美久は真っ赤になってその手を掴んだ。 あまりに意地悪に笑みを浮かべるレイに、それ以上はやめてほしいと必死で懇願する。 「オイシイよ? 美久の味」 「やあぁっ!!」 耳を塞ぎたくなる言葉ばかり。 途轍もない羞恥に涙が溢れてきた。 レイは楽しそうに笑みを浮かべたが、流石にこれ以上苛めると本気で泣きそうだと思ったのか、名残惜しそうにしながらも指から唇を離した。 「もうしないよ」 「・・・んっ・・・うぅ・・・レイ・・・・イジワル・・・・・・」 頬を真っ赤に染めた顔が、本当に可愛くて笑みがこぼれる。 彼女を見ていると可愛くて堪らなくなって苛めたい衝動に駆られるが、傷つけたいわけではないのだ。 「・・・美久・・・、おいで」 「・・・・・っ、・・・・う、うん」 小さく頷き、ゴシゴシと涙を手の甲で擦る姿は幼子のようで、先ほどあれだけ喘いでいた彼女とのギャップにおかしくなる。 レイは美久の腰を持ち上げるとその中心に己をあてがい、不安そうな彼女を安心させるために出来るだけ優しい口調で話しかけた。 「・・・痛かったら言って・・・・・無理にはしないから」 「・・・・・・うん・・・」 優しい声音と表情が功を奏したのか、彼女はホッと胸を撫で下ろし、僅かに笑みを浮かべる。 ・・・これだけ不安なくせに、よく自分から挿れようとしたよな・・・ 先ほどの美久を思い出すと、顔が笑ってしまいそうになる。 一生懸命で、目が本気で、とても可愛かった。 「・・・いくよ?」 「・・・っ・・・、んっ・・・・・っ」 少しずつ、レイにとっては拷問のようにゆっくりと挿入していく。 美久はまだ、受け入れることに慣れていない。 だから、少しでも痛みを感じさせないように、表情の変化ひとつ見逃さないように細心の注意を祓う。 「・・・・・・ふっ・・・んんっ・・・、・・・っっ、っ」 美久は汗の粒を額に浮かべ、苦しそうに眉根を寄せていた。 初めての時よりは幾分ましなのかもしれないが、それでもまだ痛みがあるようだった。 美久はレイを見下ろし、気遣うように自分を見上げる彼を見ながら顔を顰める。 「・・・・・・あっ・・・っっく・・・ぅ・・・・・・レイッ・・・・・・」 こんな時、何か・・・痛みを誤魔化せる方法があればいいのに・・・ それともこの行為を繰り返すうちに、いつかは痛みも消えるのだろうか・・・ 「・・・・・・いっ、っ、っっ、・・・んんっ・・・っっ、っ」 そして、身体の中がいっぱいになったと思った瞬間、レイのやや乱れた吐息とともに中に押し入ってくる感覚が止まった。 「・・・・・・っ、・・・これで・・・全部・・・?」 「・・・・ん・・・・・・っ、・・・、・・・っ、・・・がんばったね」 そう言って目の端を赤くして息を乱すレイの顔はゾクゾクするほど色気がある。 小さく喘ぎながら僅かに眉を寄せて・・・ほんの少し開いた唇からのぞく赤い舌にさえ目が離せなくなってしまう。 「レイ・・・」 「・・・ん」 「・・・・・・好きだよ」 彼の瞳に自分が映っていると思うだけで涙が零れる。 無くさなくてよかったと、美久は心からそう思って彼にしがみついた。 その3へつづく Copyright 2006 桜井さくや. 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