1月 SENSEITO MONOCHROME

2008/1/4

稲嶺


寝正月も飽きた。
有働らは順調に勝ち上がり、まだ花園や。

「高校、大学のラガーマンにとって年末年始
 家におらんのは何より誇らしいことなんや」

有働はそう言うた。

勝ってる証拠やから、早々に帰って来ぉへんことを願ってるけど、
ほなオレは何年、一人の正月を過ごさなアカンのやろう。

有働…あいたいな。
2008/1/8

山沖


なにも知らず、真っ白だったトモ。

怯えないように優しく、大切に、(時に強引に)
数日、数ヶ月、数年、時間をかけてゆっくり教え込むのは
何よりも快楽だった。
2008/1/11

高橋


「有働さ〜ん!彼氏がおいで〜!」
「ちッ…違いますってッ」

その声に福娘が振り向いた。
「あれ?」
有働の姉ちゃんはオレを見るなり
「ゆうちゃんは?」
こんにちは、とか、こんばんは、の挨拶もなくいきなり弟や。
「逃げられました」
「え〜ッ!引きずってでも絶対連れてきてって言うてたのに!」
「年頃の男の子は恥ずかしいんですよ」
「ゆうちゃんに福娘姿、見てほしかったのに」

十日戎の神社。
有働の姉ちゃんは普段と全然違って見えた。
「高橋先生って、ほんまに役立た…」
「綺麗ですね」
「え…」

柄にもなく、すこし赤くなった有働の姉ちゃん。
「これが福娘のコスプレですか」
「コスプレちゃいます!もう!!嫌い!!」
笹でしばかれた。
2008/1/17

稲嶺


「あいつに今この瞬間トライさせるためなら、死ねると思うときがある」

以前、真顔で有働がとんでもないことを言うた。
オレはどんな愛の言葉よりも勝てへんと、ショックを受ける。

知れば知るほど、ラグビーって究極のチームスポーツやと思う。
希薄な人間関係のこの世の中で、なんの躊躇もなく「自己犠牲」的な言葉を
ラガーマンはよく口にする。
生身のカラダはってぶつかって行ってるんやから、
あいつらとにかく絆が強くて気持ちが熱い。

そんなヤツらが、羨ましい。
2008/1/20

有働


わっ

わっっ

わっっっ
2008/1/21

有働


「8番、出血!」

レフリーが笛を吹いた。

ラグビーでは出血している選手は試合に加われず
血が止まるまで一時退場せなアカンルールや。
(ワールドカップである国の主将なんか、試合中まぶたを切って、
 その場で縫い、すぐに試合に出てきた…すごい)

腕から出血した有働はトボトボベンチに向かう。
さっきまであんなにイキイキと元気良くプレイしてたのに
血が出た途端…ていうか、血が出てるとレフリーに言われた瞬間
イキナリ力なくしょんぼりした。

もともと男は痛みや血に弱いとはいえ、そのギャップが妙に可愛い。
2008/1/28

有働


「ゆうちゃん、ちょっとそこのリップとって!」
「お姉ちゃんの分の牛乳もちょうだい〜!」

実家の朝はパンとか味噌汁のにおいではなくて
化粧とか整髪料とか香水の匂いで充満していた。
そしてオレは毎朝、パシリやった。
化粧とか髪を整えるのに手が離せへんから
あれを取れこれを取れと四方から声がかかる。

…どんなに忙しくても化粧とか髪をいじる時間はあるんや。

「そんな顔や髪をいじくり倒しても大して変わらんのに…」
とか言おうものなら、四方からピーチクパーチク
凄まじい口の攻撃があるのはわかってるから
大人しく指示されるものを取って渡す。

「ゆうくん、そこのゴム取って」
「これ?」
「うん、ありがと」

絹みたいな髪をしなやかな手つきで結う。
幼い頃から髪をお互い結うのを見ては、
あんな複雑な髪型が短時間で綺麗に仕上がるのが不思議やった。
オレみたいなぶっとい指では無理や。

あんまり見てると
「ゆうちゃんもやってほしい?」
って言われるから、今日も大人しく指示されるものを取って渡す。

2月 SENSEITO MONOCHROME