6月 SENSEITO MONOCHROME

2006/6/1

山沖


ちょっとした視線や動作で、
トモがしてほしいことはわかった。

でもすぐにはのらない。
はぐらかして、焦らして、トモから腕をからめてくるまで何もしない。

そしてトモから寄ってきたら、溺れるようにキスをしてやろう。
高橋と姉ちゃん

2006/6/4

有働


「有働!すごい美人が呼んでるで!」

試合10分前のロッカールーム、集中して闘志を燃やしているときに、先輩がオレを手招きした。
「これが年上の情熱的な彼女か?」
先輩がニヤニヤ耳打ちする。
「へ?」
扉を出ると・・・・・

「ね・・・・姉ちゃんッ!」
「へへ、ゆうちゃん、来ちゃった!」
「なんや、有働の姉ちゃんか〜」
姉ちゃんは美人と言われて照れつつも嬉しそうに笑った。

うわ、どうしよう!一番来てほしない四番目の姉ちゃんが来てしもた!
高橋もロッカールームにいるのに!
慌ててこの場から姉ちゃんを離そうと思った次の瞬間には
「おお!有働!お姉さんが来てるらしいな!」
高橋がドスドス出てきた。

うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!
オレは頭を抱え込む。

「あ、どーもどーも、はじめまして!」
ほんまに美人やな〜と高橋はオレのわき腹をつつく。

姉ちゃんを恐る恐る見たら・・・・・・

やっぱり、目を見開いて凍ってた。


2006/6/5

「と・・・・とにかく今から試合やから、姉ちゃんはスタンドに戻って!」
何か言いたげな姉ちゃんの背中をグイグイ押して扉を閉めた。
「なんや〜、お姉さんに冷たいなぁ、ゆうちゃん」
こっちの気持ちも知らんと、高橋はノホホンと言い
「よっし!ほな今日も気合入れて行くか!」
とメンバーに声をかけた。

笛が鳴って試合がはじまった。
でもオレはスタンドにいる姉ちゃんが気になって、パスミス、ノッコンを繰り返す。
(今日は先生が用事で来れんで良かった・・・)

姉ちゃん、美人やから会社でもすごいもてると思うんやけど、
あれ以来誰とも付き合ってへんもんな。
野洲さん、ほんまにええ人やったから、忘れられへんで当然やと思う。
オレかてそうや。
それでも最近やっと明るく笑えるようになってきたのに、
ソックリな高橋と会ってしもて、泣き暮らしたあの時にまた戻るんやないかと、
それが心配やったんや。

そんなことを悶々と考えていたら、

「有働ッ!危ない!!」

オレは相手のタックルをまともに受けて倒れこんだ。


2006/6/6

「痛・・・・ッ!」
思いっきり倒れて、肘から出血した。
ラグビーは出血したら血がとまるまで一時退場しなアカン。
止血しようとベンチに戻ったら、腕組した高橋が
「ゆうちゃん〜、上の空でどないしたんや。
 調子悪いんやったら今日はこのままベンチで座ってろ」
さっきの流れでオレを「ゆうちゃん」呼びながら、口調は怒ってた。
こういう時の高橋は厳しい。
その言葉にしょんぼりしていたら
「ゆうちゃん!ゆうちゃん!大丈夫ッ?!」
いきなり姉ちゃんが顔面蒼白でベンチに走ってきた。
「血が出て!大変!!」
オレの腕を掴んで高橋に叫んだ。
「あの、治療!治療してください!」
「なぁに、こんな傷はヤカンの水をかけて、唾つけといたら治ります」
高橋は頭を掻いて、アッケラカンと答えた。
その言葉に驚いた姉ちゃんは
「そんないい加減な処置して、ゆうちゃんの腕が使えなくなったらどうするんですか!」
「ハハ、大丈夫、気合で治りますよ」
「気合て・・・!あ、あなた、それでも教師ですかッ!」
姉ちゃんは本気で怒った。
「ね・・・姉ちゃん・・・・」
「大丈夫ですってお姉さん、はい、ヤカン」
高橋はすこし困った顔をして、でもヘラヘラ笑いながらヤカンを差し出した。
「もういいです!私が治療します!」
姉ちゃんはオレの腕を掴んだまま、ベンチを後にした。


2006/6/10

「ゆうちゃんが試合に来てほしくない感じやったん、これでなんとなくわかったわ」
ロッカールームで姉ちゃんがオレの腕を消毒しながら呟いた。
「・・・・・・・・」
オレはなんて答えたらええかわからずに無言でいると、
「でもあの人、外見が野洲くんに似てるだけで、中身は全然似てへんね」
唇をとがらせた。
「え・・・そうかなぁ?」
性格も大概おんなじやと思てたけど・・・・。
「昔、ゆうちゃんが練習で怪我したとき、野洲くんはすごく心配して、すぐ治療してくれたもん」
「あれは、オレまだ子供やったし、体もできてへんかったから・・・・」
「ゆうちゃんはまだ子供です!」
ペンッと叩くようにバンドエイドを貼り付けた。
「いたッ!」
「とにかく腹がたったわ!我が家の大事なゆうちゃんやのに!」
そう言いながら姉ちゃんは立ち上がり
「今後はちゃんとするように、あの人に注意してくる!」
鼻の息も荒くベンチに戻ろうとするんで、
「ちょお!姉ちゃん!恥ずかしいからやめてぇな!」
ズンズン行く細い背中を、子供の頃のように必死で追いかけた。


それ以来、「監視役」と称して試合のたびに姉ちゃんはベンチに来るようになり
「美人のマネージャーができた」
とメンバーは喜んだけど、姉ちゃんにいちいち小言を言われる高橋は
さすがにお手上げ状態で困り果ててた。


おわり
2006/6/12

稲嶺


有働はつねにどこか怪我してる。
男の勲章や。
戦う男ってカッコイイ。

オレの傷は手にあるけど、有働とは全然違う。
2006/6/15

いなうど


「今日の先生の授業で気がついたんやけど五代将軍の生類憐れみの令って、
 オレずっと勘違いしてて、鳥類憐れみの令やと思てた〜」

 「・・・・・その将軍、鳥、メチャメチャ好きやな」

 「うん、江戸の町はニワトリだらけ」

 「不注意で卵割ってしもたら島流しか〜」

 「オレ、卵かけご飯大好きやし、絶対死罪や」

 「有働にとって大変な時代やな」

 「この時代に生まれて良かった!」

 「そうやな〜」(棒読み)
2006/6/18

稲嶺


試合が終わってラグビー場から出ようとしたら
「あ、あの!」
制服を着た女子高生三人が声をかけてきた。
「あの、有働くんとお友達なんですか?」
「・・・・・友達・・・・・?」
って、まさかオレのこと高校生やと思てんのかな・・・・!
眉間にシワを寄せると、女子高生はおびえた表情になった。

有働が試合の後にスタンドのオレに向かって
笑いかけたり手を振ったりするからや。
「あ〜・・・・うん・・・・・まぁそんなとこかな」
不安そうに見上げてた(言うとくけど、オレは171センチや)女子高生は
パッと花が咲いたような笑顔になって
「あの、じゃ、これ渡しておいてください!」
プレゼントを無理やり押し付けて、キャッキャと走り去った。
手作りっぽいお菓子と、どっかのブランドのタオル。
ふん、有働はいつもこんなもんもろてるのか。


「あのぉ・・・・先生、なんか怒ってます?」
「別に」
「さっきのプレゼントのこと?」
「別に」
「プレゼント関係はいつも姉ちゃんらに送ってるから、その・・・・」
「別に!早よセックスしよ!」
イライラと有働の腕を引いた。
2006/6/21

稲嶺


オレは中肉中背で、決してヒョロヒョロもやしっ子やない。
でもまわり(有働や教授や高橋先生)がでっかいから
どうしても非力で小さく見えるのが我慢ならんかった。

で、ム〜キムキィのォ〜モ〜リモリ〜を目指して
有働が毎日やってるトレーニングメニューを試してみる。
運動は苦手やない、むしろ得意や(格闘技同好会会長やしな)。
楽勝楽勝!とはじめたけど・・・・



・・・・・・アイツはバケモンやった。
おんなじ動作、何百回もできるかぁッ!!
逆にカラダ壊してまうわ!

だいたい根気とかコツコツ積み重ねっていうの、
オレに合ってへんから潔く、男らしく、一日でやめた。
寝てても鍛えられるグッズを通販で探してみよ。
2006/6/23

有働


「先生ってちょっとクセ毛やな。先っちょがクルンて」
「うん、雨の日は嫌いや。もっと巻く」
「セックスの後も、ちょっと巻くな・・・・」

と言いながら、わざとらしくないよう自然に
うなじのクルリン毛を指にからめてみた。

クルクルクルリン。

やったやった!やっと制覇した!
2006/6/26

有働


先生は、可愛くて可愛くて可愛くて
もうなんていうか全体にズルイから
たまに残酷な気持ちになる。

どんなに可愛く「いやや」て言うたかて
許してあげへん。

7月 SENSEITO MONOCHROME