呟き日記 3月



ラインアウト







稲嶺智晴



180センチを超える大男たちが、空中のボールの奪い合いで
180センチ超100キロ前後の大男を上げるラインアウト。

ダイナミックで惚れ惚れするし、
なによりラグパンの食い込み加減がたまらん。

ポジション
有働雄哉


ラグビーの魅力は、背が高い人、体重が重い人、力が強い人、
走るのが速い人、キックがうまい人、パス廻しがうまい人など、
身体的特徴や得意なことが生かせるポジションがあり
様々な人が楽しめることやと思う。

オレがラグビーをはじめた頃、チビで細くて、
でも走るのが速かったから
バックス(9〜15番)にと誘われたけど、
力強いフォワード(1〜8番)に憧れ、
どうしてもそこでやってみたくて
必死で食べ、牛乳を飲みまくった。

その努力が今になってあらわれてるんやけど(多分)、
半年前のシャツがきつくて着れへんなるぐらい
こんな急激に成長するとは自分でも思わへんかった!

放下着

有働雄哉

「何も持たずに生きるってカッコイイなぁ」
本堂の縁に腰掛けて、石と苔しかない庭を見つめながら先生は言うた。
「何も持ってへんと、いつでも自由に旅立てるもんな」
「・・・・・・・・」
それって、オレなんかいらん、存在が重いていうことかな・・・・。
鳥の鳴き声しかきこえへん、寂れた寺の庭、
こんなとこで別れを告げられるのかと、オレは一瞬凍りついた。

「でも煩悩を捨てきれへんのが人間やもんなぁ、有働とここでこうしてるのもまたええか」
「え・・・・」
先生を見たら、先生もこっちを見て
「キスする?」
可愛く唇を突き出して見せた。
「え・・・・仏さんの前で?」
チラリと背後の仏像に目をやると、
「高校生のくせに信心深いやっちゃな!」
先生は早春の切ない日差しに包まれて、なんにもない庭を見ながら笑った。


携帯

 

稲嶺智晴

「もう実家には帰らへん!」
珍しく有働が激しく怒ってる。
なんでも携帯が欲しいと実家に電話したところ、姉たちに猛烈に反対されたそうで・・・・。

とりあえず怒り狂う有働をドウドウとなだめて、
「そもそも有働くんは、どうして携帯が欲しいのかな?ん?」
先生が生徒を諭すように(そのまんまやんけ)聞いたら、
「・・・・・・先生といつでも自由に話がしたい・・・・」
うなだれて、小さい声で呟いた。その姿はまったくの子供。

「・・・・あ〜・・・・でも、オレは携帯を持つ気ないで?」
オレの言葉に有働はびっくりした顔をする。
「なんで?」
「なんでて・・・・ん〜・・・どこにいても人と繋がる環境て、なんか監視されてるようで嫌やねん」
「・・・・・?」
「オレ、普段から時計も持ってへんやろ。とにかく人や時間に縛られるのが性に合わへんのや」
有働はキョトンとした表情をしてる。
情報社会で育った現代っ子には、ちょっと理解できひんのかな。
オレは頭をかいた。
「ええと・・・・すぐ繋がるけど、体温を感じひんて、つまらんと思わへんけ?
 本当に会いたかったら、いつもみたいに突然会いに来たらええ」
「で・・・でも先生、待たれると迷惑やろ?」
「え?そんなことないで。いつも有働に会えて嬉しいで」
咄嗟に答えて、えらい恥ずかしいこと言うてしもたと慌てて口をふさいだ。
さっきまで怒ったりうなだれたりしてた有働は、すべてを忘れたかのようにニカ〜ッと笑い
「うん、ほなオレも携帯いらん!会いたいときは遠慮せんと会いに来る!」
ガバッとオレに抱きついてきた。

↓後日談↓

さすがに厳しすぎたかな、と反省した姉たちは、結局有働に携帯を買い与えた(甘いなぁ)。
でも、姉たちから毎日何十回もかかってくる電話にウンザリした有働は、すぐに携帯を解約した。


智晴ちゃん

有働雄哉

「いっつも生徒にからかわれるけど、オレの顔ってそんなに可愛いかなぁ?」
ひとつしか持ってへん小さな手鏡を見ながら、いきなり先生は言った。
オレは「うん、可愛いで」という言葉をグッと飲み込み
「いや、どっちかというとカッコイイよ」
できるだけ真剣な表情で答える。
オレもアホやない。ちゃんと(先生の)学習してるんや。
「嘘っぽいなぁ、ほんまかいや」
とか言いながら鏡を見てニヤニヤする先生。
「いや、ホンマ、オレ先生みたいなカッコイイ大人になりたいもん」
「そ・・・・そうけ?」
頬を染めた。

まさか、絶対言えへん。
そのピンクのほっぺが。
その上唇が。
その猫ッ毛が。
そのたたずまい全てが。

子供の頃といっこも変わってへんことを・・・・・!!

そんな恐ろしいこと、口が裂けても言えへんのや・・・・!ぶるぶる。




キャッチボール



稲嶺智晴

「キャッチボールしようや!」
琵琶湖畔で車のトランクからグローブを取り出し、有働に投げつけた。
「え?なんでキャッチボール?」
「息子とキャッチボールは親父の夢や!」
「・・・・オレ、先生の息子とちゃう・・・・」
有働は唇をとがらせた。
「十も年下やったら息子も同然!キャッチボールやろうぜ」
いきなりボールを投げ、有働は慌てて受け止めた。
「おわッ!先生、結構ええ球投げるな」
「野球小僧トモハルチャンといえば近所では有名やど(うそやけど)」
「ほんまかいな」
苦笑して有働が投げ返す。
さすがに怪力有働、バスッと球が重くて手がしびれた。
「このッ!」
負けずにおもくそ強く投げるけど、有働は軽々受ける。
どんなに悪送球を投げても、俊敏に身体が反応して全ての球を受け止めてくれた。
有働が返す球は力強く、重く、でもグローブに真っ直ぐ気持ちよく入ってくる。

・・・・まるで、オレらの関係をそのまま表してるようや。

有働、これからもオレにずっとその球を投げ続けてほしい。