sakura Written by 羽純 様 [2004.04.20] |
「キラ?」 スタスタと、先を歩いていくキラの背中に声をかけながら、道を歩いていく。 街から、もう随分と離れたはずだ。 「どこに行くんだ」、「どうしたんだ」と、いくら訊いても「いいから、いいから」と 口にするだけで答えは返らなかった。 さすがに人気のない通りまで来ると、不安を覚える。 「待てって、どこまで行くんだ?」 今までより少し強めの口調で訊いた、その瞬間。 ひらり、と。 何かが舞い降りてくるのを視界の中に捉えた。 ―――― ひらひら、と。 それが桜の花びらだと気づくのに、一瞬の時間がかかった。 どこからくるのか、と顔をあげてようやく視線の先に桜の花が満開に咲き誇っているのが見えた。 そうしてキラがそこを目指しているのに遅れながら気づいた。 キラは満開に咲き誇る桜の木のもとに辿りつくと、顔をあげて花を見つめた。 隣に立って、同じように見上げる。 こうして桜の花びらの舞い降りる中にいると、どうしたって過去にキラと別れたときのことが思い起こされて、何年経っても変わらずにずきん、と胸が痛む。 その痛みに耐えるために顔を伏せると、キラの声が聞こえた。 「昨日、見つけたんだ。綺麗だよね」 素直にその風景に見入って、そう言葉にするキラに、同じ想いを抱いていないのか、と。 愕然とした気持ちになりながら、それでも歯を食いしばって無表情を作って頷いた。 「 ――― ああ」 沈黙が降りる。 次々に舞い降りてくる桜の花びらの中で、切ない想いだけがわきあがりただ、胸が痛んだ。 先に沈黙を破ったのは、「アスラン」と優しい声で名前を呼ぶ、キラだった。 その優しい音に、思わず顔をあげてキラを見ると、同じようにキラも視線を向けていた。 じっ、とまっすぐに見つめてくるその瞳の中には真剣な光がある。だから、逸らせなかった。 「小さいとき、桜の花びらの散るなかで、僕たちの思い出は終わったんだ」 一瞬、キラの目の中に苦しげな想いがよぎったのを見たような気がした。 「・・・・キラ」 大丈夫か、と。声をかけようとした言葉は、遮られる。 「でも、こんなに綺麗な花を見るたびに悲しい思いになるなんて、嫌だから」 思わずハッ、と。息を呑んだ。 あのときの ―― 幼い頃のキラの、泣きそうな顔とは違って。 強さを得た笑顔で。だけど、変わらないままの微笑みを浮かべて、キラは続けた。 「だから、ここで。この花びらの中でまた、僕たちの思い出を始めよう」 だめ? 上目遣いで訊いてくるキラの頼みを断れるわけもなく。 自然と、口元が緩むのを感じながら。 キラの手を取る。 「わかった。キラ。俺たち、またここから」 始めよう ――― 。 その言葉は、口付けの中で交わされた。 新たに。強い誓いとなって ―――― 。 ●END●
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またまたまた羽純様から、頂いてしまったアスキラ創作です!
桜の悲しい思い出を新しい思い出にしようとするキラがステキです!!
そして何げに強いです!
桜が見守る新たな始まり。
そしてその中での誓いのキスがぁぁぁぁああぁああぁ〜
ツボです。ツボ。ツボ。想像出来ちゃってたまりません。(笑)
羽純ちゃんまたまた素敵な創作ありがとうでした!!