Moon
Written by 羽純 様 [06.6.27]
 
キラは見上げた月の眩さにふっと、目を細める。此処から見上げる暗闇を照らし出すあの月は、とてもキレイで。
どうして人間はあの場所に基地を作ったのか、疑問を覚える。
月に憧れて、空を夢見て、宇宙に未来を見ていた。
その全てを叶えて、まだ人間の欲望は果てしなく続いている。

 「キラ?」
不意に呼びかけられて、窓にアスランの姿が映った。

ふわり、とまるで包み込むように抱き締められて、その胸に身体を預ける。
手の平で窓に触れる。ひんやりとした冷たさが心地よかった。

 「僕の願いは……」

だけど、どんなに欲望に塗れた中で戦うことになったとしても、
ひとつの信念があるからまっすぐ突き進むことができる。

翠の双眸と窓越しに視線が絡み合う。

 「 ――― アスラン。君といることなんだ」

それだけが、この暗闇の中。まるで月の光のように、差し込んでいる確かな願い。希望。

 「キラ……」

嬉しそうに微笑むアスランにそっと、笑い返して、このぬくもりだけは失えないものだと強く自覚する。

月に憧れて、空を夢見て、宇宙に未来を見ていた。
その果てしない欲望と、ただひとつと執着してしまうこの想いと、どちらがより愚かなのか。
だけど、ただひとつのことだから、失わせないで、とキラは遠く月を見つめながら、願った。









... fin ... .





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