Sea
Written by 羽純 様 [06.6.27]
 
アスラン、何してるの?

波打ち際に佇んでいると、そう問いかける声が聞こえてキラが姿を見せた。戦いの最中、
補給に降りた地での休息。

潮騒の音が聞こえて艦を抜け出して、誘われるままひとり、海を探しにきていた。
その自分を探しにきたらしい。
隣に立って、キラも遠く地平線を眺める。

 「……なんだか、こんなにゆっくり景色を眺めるの、久しぶりだね」

同じことを思っていたことに、苦笑が零れる。それを聞き咎めたのか、
なんだよ、と拗ねるようにキラが言った。

 「俺もそう思ってただけだ。他意はないさ」

そう返すと、納得したのか頷いた。
二人の間に沈黙が下りる。

長い付き合いの仲で沈黙は、居心地を悪くするものではないが、それでもいつも我慢できずに、
話し始めるのはキラだった。

 「時期を過ぎた海って、少し寂しいね」

肌寒い風が過ぎるこの時期、確かにキラが言う通りで、まして誰もいない海となると、
それをより強く感じてしまう。

 「 ――― キラ」
不意に名前を呼ぶと、不思議そうなキラの視線が注がれる。
それを受けながら、続けた。

 「手を繋いでいいか?」

小さく息を呑む音が聞こえる。多分、紫の目は零れ落ちそうなくらい大きく見開かれていると、
想像できる。だけど、すぐに小さな声で頷きが返った。
手の平に触れたキラの手をぎゅっと握る。

 「……時々、海に全部沈めばいいって感じるときがある」
 「それって、この地球(ホシ)全部ってこと?」

ああ、と頷いて、海に向けていた視線をキラに向ける。

 「俺も、お前も。すべて」

見つめ合った目はどこまでも真剣で、キラは一度目を伏せた。それから再び、
海に視線を向ける。
繋いだ手はそのままで、まるで潮騒に紛れてしまうかのような小さな声が聞こえた。

 「 ――― いいよ」

驚いて横顔を見つめていると、キラが柔らかく微笑みながら、繋いでいる手に
力を込めて言う。

 「アスランと一緒なら、どこまでだって怖くないから」

優しく響く声に、伝わってくる確かなキラのぬくもりに、涙が零れそうになった。










... fin ... .





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