Kiss Written by 羽純 様 [06.6.27] |
アスラン、と声をかけようとして慌てて言葉を呑みこんだ。 ――― 珍しい。 テーブルに突っ伏して眠っている。 しかも、これだけの距離まで近づいているのに起きないということは、熟睡しているということだ。 「ほんと、珍しいや」 苦笑して、できるだけ音を立てないように、隣に座る。 テーブルに頬杖をついてその寝顔を見つめた。 意志の強い光を宿す翠の目は今は閉じられていて、自分よりも常に大人びている姿は一転、 子どもっぽくすやすやと眠りについている。 むくむくと沸きあがってくる悪戯心。 その頬をつんつん、と指で押してみる。 「う、……キ…ラ……」 名前を呼ばれて、ぎくりと慌てて手を引っ込める。だけど、それっきりの反応だった。 ほっと胸を撫で下ろして、その顔に苦笑する。 「まったく、そんな幸せそうな顔しちゃってさ。どんな夢を見てるんだよ」 恐らく名前を呼んだことから、その夢には自分も出てきてるんだろうけど、と想像しながらも、 夢の中のキラにさえ、嫉妬してしまう。不満そうに言って、ふとアスランの唇に視線が止まった。 起きているときには、恥ずかしすぎてとてもできないけれど。今は、すっかり熟睡中。 悪戯心やら、嫉妬やら複雑な感情に支配された気持ちは、収まりがつかない。 どきどき、と高鳴る鼓動を感じながら、そっと顔を近づける。 優しく触れるだけのキスをして、そのまま離れる。 「幸せのおすそ分け、貰ってくからね」 唇に感じたぬくもりに愛しさが溢れてくる。 自然と笑顔を浮かべながら、幸せに寝入っているアスランに背中を向けた。 ... fin ... .
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