Ever Written by 羽純 様 [06.12.15] |
淡い桜の花びらに埋め尽くされたその光景は、まるで桜色の絨毯の上に立っているみたいで、 かまわずにごろり、と横になる。見上げると、満開に 咲き誇る桜の花びらが、視界を覆った。 どうしてもこの花を見ると、あの幼い頃にアスランと別れてしまった瞬間を思い出す。あれから長い年月が過ぎて、再び出会って、いろんなことがあった。 たくさんの出来事が二人を巻き込んでいった。 その中で、強く結ばれていった二人の絆。 アスラン、と唇が名前を紡ぎかけるより先に、桜色の中に翠の双眸が現れる。 「……キーラ」 こんなところにいたのか、と。優しく名前を呼ばれて、目を瞬かせる。じっと見つめてくる翠の目に、今にも泣き出しそうに目を潤ませている自分の顔がうつった。 「アスラン……」 名前を口にした瞬間、堪えてきた感情が溢れてくる。両手を伸ばして、その首に抱きついた。 ぎゅっと抱き寄せる。 「わっ、キラ。どうしたんだ、どっか痛いのかっ?!」 慌てるアスランに自然と笑いが零れる。それを聞き咎めたアスランから溜息が零れ落ちる。 「まったく、お前はいつまで経っても手がかかるよな」 呆れ交じりのその声には、だけど愛しさが滲み出ていて、それに気づけないほど、 アスランのことがわからないわけじゃない。だから、いつまでも変わらないアスランが嬉しくて、 自然と頬を涙が伝っていた。ぎゅっと目を閉じる。 そのぬくもりを手放したくなくて、抱き締める腕に力を込めた。 「もう、どこにも行かないで」 優しく宥めるような動きで、アスランが髪を撫でてくる。その感触が心地よくて ―― 。だけど、どこか懐かしさを覚えるそれに、胸が締め付けられる。 「約束、しただろ?」 不意に耳元でそう声がした。驚いて目を開けると、優しく微笑むアスランの顔があった。 「俺たちは永遠に一緒だ」 そうだね、と頷くと、風が強く吹きつけた。 ――― ずっと、な。 桜の花びらが舞い上がり、再び視界を覆い尽くした。 ... fin ... .
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