「アスラン、起きてよ。アスラン?」
「ん、キラ?」
どうやら僕は炬燵の中で寝てしまっていたらしい。
目の前にはキラの顔があった。
「ほら、寝ぼけてるの?もうすぐ『ゆく年くる年』はじまっちゃうよ。」
キラは昔から『ゆく年くる年』が大好きで。
紅白を見ている時には僕が寝ていても起こさないくせに何故か『ゆく年くる年』の時間の前になると必ず起こしてくれる。
「ほら、アスラン。いい音だよね、お寺の鐘の音って。」
しみじみとキラが言う。
これも毎年言う台詞。
この後に続くのは。
「「あけましておめでとう、今年もよろしくお願いします。」」
「なっ、アスラン。何で判ったのさ。」
「そりゃあ毎年言われてれば覚えるさ。」
慌てふためくキラを見ながら少し笑う。
そんな僕が少しお気に召さなかったようで、キラが顔を膨らませる。
「ごめんごめん。そういうつもりじゃなかったんだよ。あけましておめでとう、キラ。」
それを見て取り繕う僕にキラが機嫌を直すのが判った。
「じゃあ、どうする?もう寝る、それとも初日の出を見るまで起きてる?」
「初日の出まで起きてるのは大変だよ?」
僕の言葉にキラが微笑む。
「大丈夫だよ、僕だって16歳になったんだし。」
その言葉にはっとする。
思うように言葉が出てこない。
ただ、これは夢ではないかとそう言えばいいだけなのに。
どうして気がついてしまったのだろう。
気がつかなければまだこの夢で遊んでいられたのに。
「嫌な初夢だ。」
涙を流しながら僕は呟く。
16歳になった僕達は実際には『ゆく年くる年』なんて見れずに。
ただ戦いに明け暮れている。
でも・・・・・・例え夢でも。
キラを見る事が出来て、僕はとても嬉しかったよ。
--- 終