「アスラン、起きてよ。アスラン?」
「ん、キラ?」
紅白が終わったのを合図にアスランを揺り起こす。
アスランは何故か炬燵にはいると寝てしまう体質らしく。
止せばいいのに毎年毎年炬燵にはいって僕に起こされている。
「ほら、寝ぼけてるの?もうすぐ『ゆく年くる年』はじまっちゃうよ。」
目を擦っているアスランにそう言う。
本当は『ゆく年くる年』なんてどうでも良くて。
確かに鐘の音は好きだけれど、本心ではアスランと新年を迎えたい。
だから内心はアスランに謝りながらTVに目を向ける。
「ほら、アスラン。いい音だよね、お寺の鐘の音って。」
少ししんみりとした気持ちになってそう呟く。
「「あけましておめでとう、今年もよろしくお願いします。」」
「なっ、アスラン。何で判ったのさ。」
「そりゃあ毎年言われてれば覚えるさ。」
毎年言ってるなんて言われて少し凹んだ。
僕ってそんなに単純だったのかな、とか。
他の誰にでもなく、『アスラン』に言われたから。
笑っているアスランを見て心の中で、僕って本当にアスランに依存しているなと思う。
「ごめんごめん。そういうつもりじゃなかったんだよ。あけましておめでとう、キラ。」
あけましておめでとうと言う言葉がこんなにも嬉しい物だなんて、アスランと離れて初めて気がついた。
嬉しすぎて笑みが漏れる。
「じゃあ、どうする?もう寝る、それとも初日の出を見るまで起きてる?」
「初日の出まで起きてるのは大変だよ?」
アスランに言われて少しムッとする。
「大丈夫だよ、僕だって16歳になったんだし。」
その言葉にアスランがハッとしたのに気がついた。
ああ、気がついてしまったんだなと、そう思う。
そう、これは夢。
まだもう少し君といたかったと、消えゆく君を見ながら深くそう思った。
「アスラン・・・・・。」
僕達は何時まで戦い続けるんだろう。
どちらかが死ぬまで戦い続けなければいけないのだとしたら、どちらが死ぬのだろう。
枕の下の宝船はまるで明るい未来を象徴するかのよう。
余りの違いに涙が出た。
「アスラン、どうして・・・・・。どうして僕達は戦わなければいけないんだろうね。」
涙を流しながら僕は呟く。
遠い君に、届かないとは知りながら。
--- 終