いちばんにきみがほしい。





























sweet my lover
Written by 潮崎 とあ 様 [2004.7.27]






























今日は世界で2番目にうれしい日。

「ハロハロ」「トリィトリィ」
「ん…」

さっきまでしずかだったリビングに家のさわがしい住人がいきなりやってきて、
キラは小さく声をもらした。
部屋にさす光は張るから夏のものへと着実にかわりつつあるけれど。
まだまだおだやかで。
2人というよりは2ロボの声があっても、なお。
キラを眠りにまどろわせていた。

「キラキラ!オキロ!」

ただかまってほしたがりの住人は許さないで、
ソファの上でねこけかけている彼にダイビングをしかけた。

「っ!?」

おなかをおそった衝撃に、キラはおどろいて息をのむ。
結果、意識は覚醒して。
キラはやっかいな住人に手をのばした。

「ハーロー?」

ぎゅうと両手ではさみこんで、むぅと眉根を寄せて。
キラは住人である紫色のハロ…パープルちゃん(ちなみに命名はラクス)を軽くしかりつける。

「キラ。ハロ。ゴメン!ユルシテ!」

認識したパープルちゃんは耳をぱたぱたとさせて返す。
少しかわいい感じがして、キラはくすりと笑みをこぼした。

「わかったから。…けど、ちょっとしずかにしててね」

小さい子をなだめるように言って、パープルちゃんを床においた。
すると、パープルちゃんはころころとソファの脇をころがって、ときどき存在をしめすよう、
機械音を邪魔にならない程度に出した。
キラは認めると視線をずらして。

「トリィも、ね?」

足のほうから眺めているロボット鳥に微笑んだ。
それは、言葉にうなづくよう、「トリィ」と鳴き声をあげた。
2人…もとい2ロボの様子に満足げな表情をうかべると、
キラはふたたび眠りの世界にまいもどろうとゆっくりと瞼をとじた。

けれど、はたと気付く。

2ロボがいまここにいるということは…と。
さっきまで居心地のいいソファで眠れていたのは、朝から同居人がなにやら作業をしてるから。
いつもなら作業をするときはきまって2ロボをまかせっきりにする彼が、今日に限っては連れて行って…。
自分にはゆっくりしていろと声をかけて。



常ならずの行動。



今日誕生日をむかえる身としては、少なからず。
いや、かなり期待してしまっていて…。

待っている時間さえももどかしくて。

だから寝てしまったのだということを。
そして、目を覚ましたときがきっと「作業」が終わっているだろうことを思い出す。

思い出してしまったら、現金なもの。
眠気は覚めてしまって。
でも、起こしてほしくて。
キラはそのままソファの上、横になったまま、彼を待った。

少しして。
かちゃりとドアノブがまわった、パタパタとスリッパの音がして。
キラはそれだけでもうれしくなる。

『彼』が近づいてきて、ソファに着くと。

「おはよ。アスラン」

キラはのこりと笑みをうかべて、出迎えた。
むかえられた相手はあきれたような、どこかこまったような曖昧な表情を浮かべると、そのまま。

「おはようって…。もう昼だぞ?」

溜息とともに言われる。
キラとしては少々的外れな言葉。
彼は少しだけ拗ねて。
でも、えへへとはにかむように笑って。

「アース?」

求めるように腕を伸ばした。
なのに、相手は気付かないで。

「…なに??」

きょとんと首をかしげて、きいた。
キラとしては完璧に的外れな言葉。
今度は完全に拗ねて。
きっと見上げて。
アスランは困ったように眉をたれて。



沈黙がおちる。



どこか気まずい空気。
アスランは少しの逡巡のあと、それをやぶる。

「あの…キラ。実はケーキをつくったんだけど…食べるか?」

「ぇ??」

いきなりの問いに、キラは止まる。
うかがうように見つめてくる翠色の瞳。
いつもはない不安がそこにうかぶ。
その色に、キラは思考をひきよせて…。

「えぇえええ!?」

一気に身体を起き上がらせると、相手を見上げた。

「…アスラン、が…ケー…キ?」

おそるおそる確認を投げかける。
と、相手はどこか気まずげに視線をそらして。

「あぁ」

うなづいて、伝えた。

「うそ…」

キラはたった一言だけこぼして。
まじまじと相手を見つめた。

「信じ…られな…い…」

ぽつりと感想がもれる。
ありえないことに結局思考が追いついてないなと、ぼんやりと思いながら。
キラはじぃっと相手に見入る。
アスランはつきささる視線にむっと眉根を寄せて。

「…うるさい…」

気恥ずかしげに。
見るなとばかりに、言った。
憮然としている横顔。

「だって…アスラン、だよ?」

問いともとれるようでとれない言葉。
応えない相手。
キラは構わずつづける。

「料理がまったくできない、あのアスラン…だよ?」

ご丁寧に枕言葉までつけていう相手に、アスランは一言。

「わるかったな…」

より憮然として。
今度は完全にそっぽを向いてしまった。
だけど、見上げる先。
きれいな濃紺の髪からのぞく耳は真っ赤で。
キラはやっと思考をおいつけて。

こみあげてくるうれしさ。

そのままに表情をとろけさせると。
ぎゅっと、相手の手を握って。

「アスラン…」

呼びかけて。
視線を求めた。

握った手に応えるよう、力がこめられて。
でも、相手は無言のまま。
求められたものを向けた。
キラはそれによろこんで。
穏やかに微笑んだ。
その不意打ちのような笑みにあてられて。
アスランは心もち視線をずらす。

「…なんだよ?」

ねだられた理由を問われて。
キラは正直に答えた。

「ケーキ。たべたいんだけど…」

相手は一瞬驚いたように目を丸くした。
けれど、すぐにもどして。

「どうして?」

問いかけてきた。
アスランの様子から、今度は彼が拗ねてしまったらしいことがわかって。
キラは小さく甘苦い笑みを浮かべた。

「だって…アスランがつくってくれたの、たべたいよ?」

言葉のうら、ちがう想いを含める。
相手は気付いたのか、はぁと溜息をついて。

「味の保証はできないけど、な…」

こちらも甘苦い笑みをこぼした。
キラは首を横に振って、言葉を否定する。





「僕にとってうれしいのは、アスランがケーキを作ってくれたことじゃなくて、
 そういうことして僕にちがう君をみせてくれたことだよ?」





うっとりと微笑んで、想う。
心にみちてくるうれしさを。

うれしいのは、大好きで大切な人が自分のためにしたことのない何かをしてくれたから。
今まで知らなかった。見せてくれなかった。
そんな姿を自分に見せてくれたから。

彼は、それを自らの全てで伝えて…。

「キラ…」

アスランは参ったというような表情で、呼んで。





「誕生日、おめでとう」





とてもおだやかに、やさしく微笑んだ。

そうして、キラはゆっくりと瞳を閉じて。
ケーキよりも先に甘いキスを強請った。





























Happy Birthday,Kira!





●お礼の一言●

潮崎 とあ様の企画に参加して頂いたキラバースデイ創作です。
転載OKとあったのでまたまた転載許可を頂き展示でございます。

料理の出来ないアスランがキラのためにケーキを作る所とか、
キラに突かれて拗ねてる所とかなんか可愛いです!!(><)
でも、それだけキラを愛しちゃってるんですもんね!
なれない事だって愛の力で何とかなるんだ!!(笑)
それに、キラの最後のセリフが!
凄く嬉しそうに綺麗に微笑んでるキラが目に浮かぶようですvv

潮崎 とあ様、素敵な創作をで幸せを分けて頂き、ありがとうございました!

とあ様の素敵なお話が沢山読めるサイトこちら《Fatal fate





見終わったらブラウザのバックでお戻り下さい。