Childhood Story


 それは、幼い春の日のこと。

『遠いところへ行くんだ』
 ぽつりとアスランが言った時、空には沢山の花びらが舞っていた。
『会えなくなっちゃう』
 彼はどんな顔でそれを言ったのだろう。
 僕は泣いたような気がする。でも泣かなかったかもしれない。

 その想い出はあまりにも綺麗すぎて、薄れることなんて知らなかった。
 春が来るたびに桜は泣いて、幾度もの春を見送った。

 そして、また春が来る。
 春は別れの瞬間を幾度も焼き付ける。あれきり連絡が取れず、想い出の中のアスランは成長することのない幼い姿のままだ。でも、キラはもうカレッジに通う歳になってしまった。
 入学式を迎えたカレッジには、今が盛りの桜並木があった。
 はらはらと視界一杯を埋めるほどの花びら。

 その下で、今年もまたキラは足を止めた。



Story of start
《 Story of start 》



Written by Mio,Mizumura