Sweet Summer
written by 悠衣様 
 
暑い夏のある日。
突然『カキ氷が食いてぇ〜!!』と叫びだした太一の為に、ヤマトは物置代わりの戸棚からなんだか間抜けな顔をしたペンギン型のカキ氷製造機を引っ張り出してきた。
父が飲み会のビンゴ大会で当たったとかで、貰ってきたものだったが結局、ためしに一回使っただけで奥にしまい込まれていたのだ。

「へ〜〜ヤマトん家、いいものあるじゃん」
「使ったの一回きりだけどな」
すっかりほこりをかぶっていたそれをヤマトが洗っている間に、近くのコンビニで太一がシロップを買ってきた。

「やっぱイチゴミルクが基本だよな♪」
「太一は甘党だよなぁ…」
「ヤマトは何が好きなんだよ。渋く抹茶とか?」

そんな会話を交わしながらゴリゴリと氷を削ること十数分。
イチゴシロップと練乳をたっぷりかけた巨大なものと、それよりずいぶん小さな物と二つのカキ氷が完成した。

「く〜〜冷て〜〜っ!!」
「急いで食べすぎだぞ、太一…」
「だって溶けちまうだろ?」

にぎやかに巨大カキ氷を食べてゆく太一を少し目を細めて見つめるヤマトは、ゆっくりと氷をすくって口へと運んだ。
自覚もないくらいにかすかに、幸せそうに唇の両端が持ち上がる。
シャクシャクと心地よい音が響き、時折思い出したように風鈴がちり、と鳴った。
幸せってこういうときがきっとそうなんだって、そんな風に思うようになったのはいつからだったろう?
外ではセミ達が精一杯の歌声で夏を彩っていて。

「オレ、夏って好きだ」
ふいに太一がつぶやいた。

「俺は、夏が好きだって笑う太一が、好きだ」

ヤマトはそう言うと、とっさに言葉を選べないでいる太一に微笑んで、また氷を一口、口へと運んだ。
カキ氷を食べ終わって、ヤマトが器を流し台へ運んで戻ってくると、ソファに座った太一がなにやらかすかに眉を寄せて唇を触ったり、舌を出したり引っ込めたりと奇妙な動作をしていた。

「……何やってるんだ?」
「ん〜〜…なんか、口ん中が冷えすぎて舌がしびれて変なカンジ…」

その仕草がなんだか色っぽい感じがして、無意識のうちに両手を軽く握り締めた。

「お前、俺の二倍は食べてたからな…」
「口の中をあっためれば良いんだろうけど…」

太一のその言葉に、ヤマトは何か思いついたようで。

「そうか、あっためればいいよな…」

この時のヤマトの顔を太一が見ていたなら、何を思いついたかに気付いただろう。
でも幸か不幸かそれに気付くことはなくて…

「太一」

上から降ってきた声に顔を上げれば、言葉も出せずに唇をふさがれて。
まさに氷のように冷たくなっていた太一の唇には、いつもよりほんの少し冷たいヤマトのそれでも、とても熱く感じる。
無意識に逃げようと身体を引くが、腰と頭の後ろにヤマトの腕が回され、しっかり固定されてしまう。

「…んっ……ふ…」

文字通りの熱い口付けに息も出来ない。
頭の中まで熱くなってきて…進入してきた熱に、冷たくしびれていた舌を絡めとられて大きく身体が震える。
ぼんやりとしてきた意識の片隅で、ぴったりくっついた二人ぶんの鼓動が聞こえた。
ようやく唇を離したヤマトは、涙の滲んだ、ぼうっと揺れるような目で自分を見上げる太一の瞳の中に自分が映っているかを確かめた。

「温まった?」

からかうように耳元でささやくと、太一は一瞬きょとん、とした顔をして、でもすぐにその意味を悟ったらしく頬に血を上らせる。

「冷たくて気持ちよかったぜ?…それに」
とどめのように、イジワルな笑みを浮かべて。

「甘かったし」

むくれてそっぽを向いた太一が
「…甘いの苦手なくせに……」

恨めしそうにつぶやいた。

「お前のせいで余計暑くなっただろ」

ぐで〜〜っとだらしなくソファに沈み込んで、目線だけあげてにらんでくる太一の髪の間からのぞく、柔らかそうな耳たぶはまだちょっぴり赤いままで。ふてくされたように軽く突き出した唇に、もう一度触れたいとヤマトは思った。
「じゃあ、もう一杯カキ氷作ってやろうか?」

笑いながら手を伸ばして太一の額にかかっていた前髪を一房つまむ。

「お代は、先払いで」
「ばーか……」

そう言いながらも、太一は素直に目を閉じて優しい口付けが降ってくるのを待った。
風鈴がまた、ちり、と笑うように揺れた。





●END●





●カイの一言●

悠衣様の携帯HP『空の飛び方』のキリ番を踏んでゲットさせて頂きました!
ヤマ太夏の1コマです!(><)
ヤマトさんの行動も太一さんのセリフも全てがツボです。
ヤマトがさり気に強きだし、かっこいいし!!
もうもう、最後の太一のセリフがかなりツボですよーーーーー
愛があるセリフだわ!!(>▽<)
読んだ後、顔がにやけてたまりませんでした。(笑)
こんな素敵なお話もらえるとは…
キリ番踏めて良かったv

様素敵なお話、本当に有り難うございました。




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