秋茜 written by 悠衣様 |
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しゃくっ!しゃくっ!しゃくっ!…ぱす。 「あ。ハズレだ」 「ハズレ?」 「そっ! ハズレ」
笑う太一の足元には、濃いきつね色に染まった落ち葉。
「…楽しいか?」
ヤマトもやってみるか?
しゃくっ!
悔しそうにする太一を見て笑いをこらえながら、ヤマトは「…確かに楽しいな」と言った。
「・・太一?」 戸惑ったように眉を寄せるヤマトをよそに、太一は再び前を向いてゆっくりと歩き出した。 「…なんてな。オレ、らしくもなく感傷的?やっぱ秋だからかな」 ヤマトは少し早足になって、くすくす笑う太一の隣に並んだ。
「ヤマト」 さっきよりも強い風が、落ち葉を舞い散らせてゆく。
「太一」 「…ヤマト、キスしよっか」 不意をつかれて軽く目を見開いたヤマトは、それでもすぐにからかうように言葉を返した。
「何だよ、突然。それも秋だからか?」
外気によってほんのり冷えた唇が重ねられ、すぐに離れる。 「…痛ぇよ、ヤマト…」 吐息と一緒に吐き出された言葉は、弱々しくて、でも確かな熱を持っていて。 「…それなら」 何がそれならなんだろう、と自分でも思いながらヤマトは太一の瞳を覗き込んだ。 「…二人一緒に、冬眠しようか。春が、来るまで」 秋風が立つ前に。 「ああ…いいぜ」
秋がきて、冬がきて、そしたら必ず春がくるから。 「ヤマト!後ろ見ろよ、すっげー綺麗な黄昏色!!」 その言葉に振り向けば、かすかに覗く青空と、溶かしたバターみたいに所々白くかすんだ金色と、鮮やかな茜色のグラデーション。 「ヤマトみてぇ…」
あの、青と金が。
「ヤマト」 甘えるように覗き込むのは、確信犯。勝てるはずもない戦いに挑む気などないヤマトは苦笑をこぼした。
「…わかったよ」
いかにもしょうがない、という口調。
「太一」 ヤマトのささやかなお返し。 「例えば……とかは?」 これからの冬を乗り切るためには、必要だろ? 何処か不敵に笑うヤマトに、やられた…とはにかんだようにつぶやいた太一。
「…じゃあ、それももらっとく」
秋風が、街の通りを抜けてゆく。 ●END●
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悠衣様の携帯HP『空の飛び方』の2度目キリ番を踏んでゲットさせて頂きました!
ヤマ太秋の1コマです!(>▽<)
なんだかほんのりもの哀しくって、でもはんわかラブで!
私の中の秋のイメージにぴったりでした!!
秋ってなんだか寂しい感じしますよね。
悠衣様素敵なお話、本当に有り難うございました。