陶酔 
written by 東雲様 
 
 目を開けても見えないものと
 目を閉じなければ見えないもの


 陶酔の時間は、例えるならばそんなもの。




 目ェ開けろよ、と言うゾロに、オレはヤだ、と言って抱きついた。
 瞳を閉じてこうやっていると、ゾロの鼓動が良く聞こえる。
 とくん、とくんって、静かに、力強く打っているのが聞こえる。
「ルフィ」
 呼ばれて、その声音も。
 優しく髪を梳いてくれるごつごつした指も。
 全部。
「ゾロ、すき」
「……る」
 オレの方からキスするなんてのは珍しいから、離れてからそっと目を開けてみた。
 あ、真っ赤になってる。
「お前、なァ……」
 呆れたように言ってがしがしと髪を掻くゾロに、オレはししし、と笑って、また、ぎゅ、て抱きついた。
 頬を触れ合わせていると、背に回ってきた掌がゆっくり背骨の上を撫でてくる。
 それが気持ちいい。
「ルフィ、こっち向けよ」
「やぁだよ」
 碧色の短い髪の手触りを確かめるように何度も撫でていると、首筋に顔を埋められて、そこをぺろ、と舐められた。
「……ゃん」
 身を竦ませたオレに、耳元でゾロが笑う。
「何でこっち向かねェんだ?」
 そんなこと。
「言わねェ」
「ふぅん?」
 服の中に滑り込んできた掌にびく、と体が震えた。
「……これでも?」
「……んっ……」
 首を横に振ると、ゾロは薄く笑う。
「……言えよ、ルフィ」
「やだってば」
 手が腰の辺りを撫でてきて、体が熱くなってくる。
 それに気付いてるはずなのに、ゾロは首筋とか胸の辺りに軽く触れてくるだけで。
 だからどうなのかなと思って聞いてみる。
「ねェ、すんの?」
「……嫌か?」
 嫌か、だって。
 やなわけないじゃん。
 だから、笑ってその頬にちゅーした。
「するんなら、早く」
「いいからこっち向けよ」
 触って、って言おうとしたのに、ひょい、と体の向きを変えられて、真正面から覗き込まれる。
 キレイなキレイな碧の瞳。
 優しい色を湛えたその瞳が、すごく好きだから。
 オレは慌てて目を逸らした。
「ルフィ?」
 多分真っ赤になってるんだろうな、と思いながらゾロの胸に顔を埋める。
「……ずるい」
 いきなり目の前からなんて。
「何が狡い?」
「だって……!」
 言おうとした唇を塞がれて、強く抱きしめられた。
「……俺に見惚れてたのか?」
 面白がるような調子を含ませた声音で意地悪く言われて、オレは頬をふくらませる。
「……ゾロのばか」
「ん?」
「ゾロのばかっ!」
 暴れようとしたのに、簡単に押さえ込まれて笑われる。
「ガキだな」
「……むー」
 ガキじゃねェもん、と呟いたのが聞こえたらしく、ゾロが、ふ、と笑う。
「……笑ったな」
「笑ってねェよ」
 言いながらも笑ってる。
 その瞳を、だから真っ直ぐ覗き込んだ。
「……ゾ」
「やっと」
 抱きしめられた腕に、少し、力がこもった。
「やっとこっち向いたな」
 そんな風に優しく見つめられると。
 体から力が抜けて、ふにゃってなっちゃう。
「……だって」
 オレはゾロが大好きだけど。
 こうやってくっついてるのが、すごくすごく大好きだけど。
 その瞳。
 碧のその瞳がオレを見る度、どきどきがひどくなって、すごく恥ずかしいような気分になって、逃げ出したくなるんだ。
 でも。
「ずっと側にいたいから」
「……?」
 ゾロは不思議そうな顔をして、けれどすぐに笑って。
 ぎゅ、て抱きしめてくれたから、その胸に額を擦り寄せて、オレは瞳を閉じる。
 少しだけ速くなった鼓動に、ああ、ゾロも同じ気持ちなんだなって安心した。
「目ェ閉じてるとさ」
「ん?」
「何か、すごく安心する。こうやってゾロに抱きしめられて、目ェ閉じて。……オレさ、ゾロのこと」
 すごくすごく、好き。
 言ったら、ゾロは笑ったみたいだった。
 そして耳元に唇を寄せて、俺も、と囁いてくれたから。
 何だかちょっと悔しくなって、オレの方がずっとずっと好きだってば、って言ったら、また笑われた。
「笑うなよー」
「笑ってねェって」
 言いながらもやっぱり笑ってるから。
 ぐい、って引き寄せて、キスしてやった。
「……!」
 真っ赤になって面食らってるゾロに、抱きついたまま。
「ね、……しよ?」
 言うと、笑ってる余裕すらなくなったみたいだから。
 オレはくすくすと笑って目を閉じた。




 本当はずっとその瞳を見てたいけれど。
 やっぱり気恥ずかしいから。


 本当はすごくすごく好きなのはその瞳なんだけど、
 甘い時間をただゆっくりと過ごすのには、瞳を閉じてた方がキモチイイから。




End.


◆作者様からの一言◆

1800HITの瑞稀カイさまのリク、『ゾロにベタ惚れなルフィ』でした。
……どーだかな〜(^^;
当初書きたかったのが何だったのかよく判らなくなったんですが。
私の中の裏テーマは『誘いるひ』だったりして。

こんなので良ければお持ち帰って下さいまし。
瑞稀カイさま、1800HITありがとございましたvvv


●カイの一言●

うひぃあ〜〜〜〜〜〜〜〜(>▽<)
素敵すぎなお話ありがとうございましたぁ!!

ルヒがホントベタ惚れ状態で… か、可愛いv<ヲイ
でも、ゾロもきっと同じくらい(以上?/笑)にベタ惚れなんでしょうねぇ〜vv

読んでてトリップしてしまいそうでした。(笑)

東雲様本当にありがとうございました!!(><)
あ〜〜〜〜 まぢ幸せだわvv(只今幸福状態v)



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