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面白かったもの:LOLシリーズ主よ人の望みの喜びよ風の行方光と影の庭に短編大人向け補完計画


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- PatiPati (Ver 4.3) -

お礼SS その6

「祝福しよう、ギルティエス。どうだ、親になった心持ちは」
「…………複雑だな。これが、娘でなければもう少し……喜ばしかったかもしれないが」
「顔を見せて貰いたいな。お前の子なら、私の子も同然だ」
 セファンは赤子用の寝台に歩み寄る。そして、手を伸ばした。
「馬鹿な…………よせっっ!!」

LOLシリーズ 番外 セファン 18歳

 セファンの手が、赤子の眠る小さな寝台に吊された薄紗を払う。
 そのまま、セファンは赤子の愛くるしい顔に魅入ったまま動けなくなった。
 ギルティエスは制止の間に合わなかった事を悔やみ、伸ばしていた手でただ空を握り締めた。
「………………これは………………」
 もう首の据わる程には育っている。
 生まれて直ぐに駆けつける事は、互いの公務が邪魔をして許されなかった。
 セファンはゆっくりと我に返り、そっと赤子を抱き上げる。
 赤子は泣きもせず、花が開く様な笑みをセファンに向けた。
「…………何故言わなかった」
 赤子故にぷにぷにと愛らしさが前面に押し出されているが、その美しさは隠しようもない。
 まだ顔立ちも確立しないうちから、先が予測される程に……美しい赤子だった。
 それは恐らく、辿り着くであろう顔立ちを知っているからだろう。類似点は幾らでも見つけ出す事が出来た。

「……何故……言わなかった」
 低い問いかけに、ギルティエスは顔を背け応えない。
 少し長めに伸ばした髪が目元を覆っていたが、引き結んだ唇を噛み締めている事までは隠せない。
「この娘に、婚姻を申し込む。異論はなかろうな」
「馬鹿を言うな。年の差をわきまえろ!!」
 セファンの非常識な申し出にギルティエスは顔を上げきつくセファンを睨む。
 秀麗な顔、黒い瞳が怒りに薄赤く染まっていた。
 それに対して、セファンの瞳は何処までも落ち着いた色合いだった。
「たかが18だ。幾らでも前例はある。子をなせる歳まで待っても、私もまだ年寄りでもない。問題はない」
「駄目だ。ティーア王家に繋がる家には、もう少し歳も近く望ましい子もいる」
「何故私ではならぬ」
「今お前は、私の子なら自分の子も同然と言ったではないか。お前は、自身の子に手をつけるのか!?」
 ギルティエスはセファンの手から我が子を取り返そうとしたが、それは許されなかった。
 ギルティエスに比べ、セファンは体格にも身長にも優れ、護身の術にも長けている。
「私の娘だ。返して貰おう」
「我が妻だ。貰い受ける」
 セファンは全く引かない。
 ギルティエスは形の良い唇の色を失くしながら叫んだ。
「生まれたばかりの赤子に何を言う! どの法に照らしても、許される事ではない。五古国会議にかかる事になるぞ」
「私達まだ王ではない。会議も動かぬさ」
「動く。これは国守の問題だ。サディア様やリファス様方が許しはしない」
「あんな年寄りどもに、今更何が出来る」
「口が過ぎる!!」
 黒い瞳に炎気が走る。セファンは渋々腕の中の赤子を父の下へと帰した。

「人が変わるものだな」
 必死の形相のギルティエスを揶揄う。家庭を持ち変わった友人に、さしものセファンも一抹の寂しさを感じないでもなかった。
「お前も……子が出来れば分かる」
「私がもう僅かにでも年嵩であったなら……フィデリア殿を娶れたであろうがな。あの方の次は、この娘だろう?」
「そうとも限らんぞ。世界は広い。アーサラの血を引くティーアの国守の母となるべき女性が、我が国に生まれる保証などない」
「……ふむ。そうだな。今一人いても、おかしくはないか。…………だが、これはお前の娘だ。血といい、身分といい、私の妻にこれ以上相応しい女もないだろう?」
「そう思うのはお前だけだ。せめて……私にもう一人子が出来るまで待て。その後、五古国会議にかけ、他国の王や国守、リーンディルの創始達にも諮った上でシルーナの嫁ぎ先は決める。これはこの子の父としてではなく、アーサラの王太子としての申し出である。ティーア王国王太子セファン殿、よいな」
 寝台に我が子を寝かせ直し、ギルティエスは背筋を伸ばしてセファンを睨み付けた。
 次代を担う王子だけあり自身で意識した時の威厳や気品は圧倒的だったが、セファンも同じ立場であり、体格、性格的に威圧感は上回る。
 口元を僅かに歪ませただけで、セファンはギルティエスを受け流した。
「仕方のない事だ。お前に免じて、そうしてやろう」
 ギルティエスに近づく。
 思わず身を引いたギルティエスに更に迫り、壁際まで追い詰める。
「……離れろ」
「お前に免じてやるのだから、少しは楽しませろ」
「…………この性癖で、よく娘を娶ろうと思うものだ」
 吐き捨てる。セファンは声もなく笑った。
 セファンの膝が強引にギルティエスの足を割る。顔の横に手を突き、ギルティエスの動きを奪う。
「こんなところで」
「なに、赤子には分からん」
「馬鹿を……っん……ぅ……」
 唇が塞がれる。
 顔を振って逃れようとすると、頤を捕らえられた。
 セファンの膝頭が股間を押し上げる様に動いていた。
 視界の端に娘の眠る寝台が映る。不意にそれがぼやける。
「く……ふぅ……っ……」
 鼻へと抜ける甘い声を認識したくもなく、ギルティエスは強く目を閉じた。