” 天地が、ひっくり返る ”
「 ねー、アタシのコト、好きって本当? 」
「 ・・・ぶほァっっ!!! 」
うわっキッタナーイ!と叫んで、が教科書を持ち上げた。
飲んでいたコーヒー牛乳が、気管に入って激しくむせる。
息が出来なくて、何度も何度も苦しそうにもがいていると。
が手を伸ばして、俺の背中を擦ってくれた・・・!( やっさしー♪ )
「 だいじょぶ?ハマちゃん 」
「 ・・・ぇほっ、げほ・・・な・・・何て、い、今・・・ 」
「 ん、だから、ハマちゃんはアタシのコト、好・・・ 」
「 げほっ!げほげほげほげほっっ!! 」
「 ちょっ・・・大丈夫?ってば 」
照れ隠しに咳き込んだ俺を、が心配そうに見守っている気配がした。
・・・ちょっと罪悪感( だって、とっくに咳なんか落ち着いている )
けれど、今の俺は、彼女の顔をまともに見ることなんて、出来なかった。
「 あの、さ、、それ・・・どっから? 」
口元に手を当てたまま、モゴモゴと相手の出方を伺ってみる。
はきょとん、とした顔で、
「 え?ああ、泉が言ってたの 」
「 ・・・泉が!? 」
「 うん。あと、田島。と、隣にいた三橋クン・・・は、頷いてるだけだったけど 」
・・・あンの、野球部連中っ!!
た、田島とミハシはともかく・・・発信源は、泉のヤローか!!!
( チクショー、後でおぼえてろっ )
「 そ・・・その話は後にしてさ、とりあえずこの問題を解かないと、さ! 」
俺は下を向いたまま、現国の教科書に視線を戻す。
・・・おかしいと、思ったんだ。
授業でつまづいた問題を、放課後に教えてあげるよ、とが申し出た理由。
わざわざ教えてもらわなくても、本当は大丈夫だったけれどさ。
片思い中の彼女と2人きりになれる空間なんて、そうそうないじゃん!
二つ返事でお願いしたけれど・・・これを、聞きたかったんだなー、多分・・・。
「 話をはぐらかさないでよ、ハマちん 」
「 は、ハマちん!? 」
「 泉から聞いて、すごーくモヤモヤしてんの、ハマぴー 」
「 ハマぴーっ!? 」
「 イエス or ノー、どちらよハマー 」
「 ハマー!?何だよそれ 」
「 何でもいいの!!とにかく答えて 」
ドン!と机に拳を当てて、教科書の影に隠れた俺を見下ろす。
衝撃で、空の牛乳パックが、ころりと床に落ちた。
・・・こ・・・これは、逃れられそうに、ないなぁ・・・。
「 お・・・お前は、どうなん、だよ 」
「 ・・・アタシ? 」
「 そう!はお、俺、俺のコト・・・ 」
「 好きだよ 」
ケロリと言ってのけた彼女が、一段と魅力的に見えた( キュンってヤツだ! )
俺は、ただもう赤くなるだけで・・・相変わらず、教科書の影に隠れているのに。
「 うあっ!? 」
最後の砦である教科書まで、に取り上げられて。
しぶしぶ・・・顔を、上げた。
「 ・・・ 」
逆光に照らされたは、少しだけ泣きそうな表情。
やべ・・・じらし過ぎた!?いや、でも答えたら・・・。
これって、やっぱり・・・告白、に、なるんだろうか。
泣かせたくない気持ちと、照れる気持ちと、色んな感情が混ざり合ったけれど。
最後に勝ったのは、愛、だった!
( 俺ってば、カッコイイ!! )
「 お・・・俺!、の・・・コト、っ 」
声が大きかった上に、裏返ってしまい( ・・・やっぱカッコ悪ぃ )
彼女がびっくりしたように、肩を震わせた。
その肩を、両手で掴む。の視線が、俺に集中した。
「 俺・・・俺・・・!! 」
ごくり、と喉が鳴る。どきん、と胸が高鳴る。
彼女の肩を抱いた手が、小刻みに震えている。
目の前の潤んだ瞳に・・・真っ赤になった、俺自身が映っていた・・・。
・・・すごく、可愛いと思った
俺・・・・・・やっぱり、のこと・・・
こんな、カタチで告白するなんて予想外だったけれど
( つーか泉たちにノせられたみたいで、嫌だけど )
俺だって・・・オトコだ!
キメる時は、キメてみせるぞっ!!!
生唾を飲み込んで、一度だけ瞳を瞑る。
全身の勇気と、積もり積もった想いを、この言葉に託す。
「 好きだっ!!! 」
少年、万事を休する
( 例えるなら・・・9回の裏、満塁で逆転サヨナラホームラン☆ )
Title:"Rachael"
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