上から5つめ。
 躊躇っていると、声が聞こえた。


「 もしかして、俺が死ぬかもーとかって考えちゃってる? 」
「 ・・・・・・いいえ 」


 強いから。
 カイルはとても強いから。


「 一度くらい、死に目とかに遭遇してきた方が、
 本人の為になるんじゃないかとは考えていますけれど 」


 最後のボタンは、小気味良い音をたてた。
 背中に添えた掌。
 伝わるぬくもり。目を閉じる。


 離したく、なかった。


「 あははー、心配性だなぁ 」
「 オンナは少しくらい心配性な方がいいんです 」


 減らず口を叩いて。
 名残惜しそうに・・・彼の背中から、手を引いた。


「 ・・・・・・・・・ひゃ、っ 」


 彼の背後にいたはずなのに。
 手放したはずの温もりを、今度は全身で感じる。


 突然、身を翻した彼の腕に抱きすくめられた。
 ・・・少し遅れて。
 ぱさり、と彼の長い髪が、アタシの頬を撫でた。


「 死なないよ 」


 頼りにならない約束なんて要らない。
 アタシが欲しいのは、"貴方が必ず此処に帰ってきてくれる"という確かな証。


「 愛してるヒトを待たせて死ぬなんて芸当、俺には出来っこないから 」


 だから、信じて待ってて


 カイルの腕に、力がこもる。
 その優しい嘘を、真実に変えて欲しくて。
 アタシは、彼の胸の中でこくりと頷いた。










 零れ落ちた涙は


 絶え間なく、金色の糸を濡らした





05: 金色の眩暈


平日で5つのお題








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  01 青空白い月の下   02 灯火に浮かぶ   03 水面下の会話   04 うねる木々の向こう   05 金色の眩暈