あたしの喉から、小さく悲鳴が上がって。


最後のともし火が、ふ・・・と消えた。
光を失った部屋は、安堵したように暗闇を迎える。
窓の外から雷の光が入るが、ほんの一瞬だ。


そして何より・・・あたしは、雷が苦手だった・・・! ( 致命的 )




「 ・・・怖い、ですか? 」




暗闇の中で、アレンが言った。
バカバカ!あたしがカミナリ苦手だって知っているくせに!!
文句一つ言えずに、部屋の隅で震えているあたし。
塞いだ耳に、コツリ、と足音が届いた。
アレンが、隣に立っているらしい ( 目を開けられないから確認できない )




「 そこまでカミナリ、ダメなんですか? 」




ダメだから、うずくまっているんじゃないのさ!
アレンってほんっとにオンナゴコロわからない男なんだから!!
そんな心中を諌めるかのように、またひとつ。




「 ・・・ひ、っ・・・!! 」




轟いた音に、身体が固まった。
相変わらず・・・アレンは隣に立っている。
彼に、こんな情けない自分を見られるのが、苦痛で苦痛で堪らなかった。
普段突っ張っているあたしを、彼はきっと心の中であざ笑っているだろう。


嫌だ、嫌だ!
こんなことなら、突っ張るのなんて止めておけば良かった。
リナリーのような、『 可愛い女の子 』を演じていれば良かった。
そうしたら・・・こんな失態を見せても、平気だったハズなのに!
( でも、それは本当のあたしではない、とわかっている )


一際大きく、光が疾って・・・!


ぎゅ、と瞳を瞑ったあたしの視界は、更に何かに覆われた。
・・・・・・温か、い。




「 ア、レン 」




かろうじて搾り出したような、彼の名前。返答の代わりに抱き締められる。
空の迸り(ほとばしり)は、彼の背に阻まれている。
幾分落ち着いたあたしは、彼の腕の中で、もがいた。




「 ア・・・レン!あ、の・・・ 」
「 しばらく、こうしていますから 」




肩が震えている。
そんなあたしを胸に抱えて、背中を撫でてくれた。
正直・・・ほっとした。安心する。心地よかった。
けれど、この雷が止んだ時、あたしはアレンにどんな顔を向ければいいのだろう。
カケラほどのプライドが、紅の手を払った。




「 ・・・あ、だ、大丈夫っ、だから・・・ 」
「 何が大丈夫なんですか?こんなに身体を震わせて 」
「 ・・・・・・っ・・・ 」




泣きそうなあたしの表情に、彼は気づいたのか。
にっこり微笑んで、もう一度 ( 強引に! ) あたしを引き寄せた。




「 ・・・これは夢です。夜が明けたら、僕は覚えていません 」
「 アレ、ン 」
「 僕は今、貴女を抱きしめたいんです。
  僕『が』望んでいることですから、貴女に非はないんですよ 」




素直になれないあたしを知っていて。
わざと・・・そう言ってくれているの?




「 僕のせいにしてくれて構いませんから、今だけ大人しくされるがままになって 」
「 ・・・・・・襲わ、ないでね 」




それでも強気なセリフに、アレンは意地の悪い笑みを浮かべて、
保障は出来ません、と耳元で呟いた ( え、それは人間としてどうよ!? )










宵と共に、覚める夢。
雷雨に流れて、跡形も消えていく泡のよう瞬間。


・・・けれど
伝わるぬくもりは、消えゆくには余りに惜しく。








あたしは、彼の首にしがみついた。






03: 嵐の夜


シリアス5のお題








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  01 空も飛べるはず   02 窓辺   03 嵐の夜   04 If...   05 刻印