とうに息は上がっていた。
甲冑の下で伝う汗が、触れた着物に吸い込まれていく。
「 彼女なら、図書館ですよ 」と、リオン。隣でコクコクと頷く王子。
「 庭園に行くって言ってたよ 」と、サイアリーズ。
「 えっとぉ・・・どこに行っちゃったと、思いますぅ?? 」と、ミアキス。
「 親切に母上の御前に呼ばれていたと教えてやらんか!! 」と、リム王女。
「 ふふ、職務に戻ります、と言って、そなたを探している様子でした 」と、陛下。
「 すれ違いか?追い掛け回し過ぎて、彼女を困らせるなよ(にやり) 」と、フェリド。
( ・・・余計なお世話だ )
トン、と近場の柱に手を置いて、一旦身体を休ませる。
黒髪から、雫が零れ落ちた。改めて、”何て広い宮殿だ”と思わずにはいられない。
何十人、何百人が生活している宮殿だ。広くて、当たり前なのかも、しれないが。
『 ゲオルグ様を、お慕いしています 』
そんな中で・・・・・・出逢った、彼女。
胸に握った拳が、震えていた。長い睫(まつげ)が、染まった頬に影を落とす。
美しかった。両手で抱き締めて、閉じ込めてやりたい衝動に駆られた。
・・・けれど。
『男』としての欲情を、『女王騎士』の理性が押し留めた。
残酷な返事に、彼女は笑顔で応えた。
次の日になっても、その次の日になっても。
何ごとも無かったかのように、彼女は忠実に職務をこなす。
傷つかない訳ないのに。どうしてそんなに・・・微笑っていられるんだ?
ようやく気づいたんだ。
それが・・・俺に対する、彼女の・・・精一杯の”気遣い”だということに。
そして・・・そんな”強さ”を持った彼女に、とても惹かれていたということに。
「 あ、ゲオルグ様! 」
階段上の踊り場で。
窓から差し込む優しい光を背に・・・微笑む、彼女の姿。
「 良かった、探していたんです。あの・・・ 」
「 その前に、俺の、話を、聞いて欲しい、んだが! 」
ぜぇぜぇと荒い息の俺の剣幕に押されて ( ・・・ちょっと格好悪かったが )
彼女は口を噤んで、小首を傾げた。
・・・まだ・・・
『 告白 』が、もう一度取り戻せるものならば
『 想い 』が、まだそこに存在するものならば
『 恋心 』が、彼女の心の中に生きているならば
俺は、何度でも
01:
きみがすきだと
叫びたい
鳥籠:青春5題
拍手、有難うございました。
01 きみがすきだと叫びたい
02 青い空の下の、君の笑顔
03 どうしようもない、だけど
04 手を繋いで何処までも
05 いつまでもこの時間が続けばいいのに
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