「 それでね、彼ったらあっという間に敵を蹴散らしてね 」


 ポリポリと頭を掻いていたら、「 聞いてるの!? 」と怒られた ( 聞いてるよ )
 いつ、その”彼”の英雄譚が終わるのかと飽き飽きしていたら、


「 もーカッコ良いのなんのって〜っっ!! 」


 きゃー♪と黄色い声で叫んで、ようやく終焉を迎える ( 助かった・・・ )


「 はいはい、良かったねー 」
「 ・・・カイルってば、真面目に私の話、聞いてくれてないでしょう 」


 1時間も見知らぬ男の話を聞かせといて、そのセリフはないでしょ。
 ・・・って言ったら、今後一切彼女は俺に相談を持ちかけてこなくなるだろう。
 そんなことないよ、と適当に濁し、拗ねた彼女を横目で見つめた。
 そして、何百回と唱えた、俺からの最高級アドバイス。


「 告白しちゃえば? 」
「 無理 」


 毎度お馴染みの答えに、俺は何度溜息を吐いただろう・・・。
 そして、その後に決まって言うのが、


「 だって、彼、私のことを好きかどうかわからないんだもん 」


 相手が自分を好きかどうかなんて、事前にわかってたら告白の意味なんてないよ。
 わからないから、告白して確かめるんでしょ・・・”気持ち”ってヤツを。
 欲目を差し引いても確実に可愛い彼女を、振るヤツなんているんだろうか。
 もったない、と思う同時にほっとする ( 俺の手の届かない所に行ってしまわないから )


「 ありがとうね、カイル。いつも相談に乗ってもらっちゃって 」


 いや、構わないよと、彼女を見つめる。
 ・・・半分以上聞いていない上に、こうして二人きりの時間を過ごせるのだから。






 いつから。
 俺はこんなにも、臆病な人間になってしまったのだろう。
 恋愛で竦んでしまうことなんて ( 手を出し過ぎることはあっても )あり得なかったのに。






 俺の思惑なんか知らずに、彼女はにっこり微笑んで。
 ・・・左頬に、そっと唇を寄せた。


「 本当にありがとう。また、相談に乗ってね 」


 お礼の言葉なんて・・・ただ、俺の耳を通過するばかり。
 じゃあ、と身を翻した彼女は、たまらなく魅惑的な蝶のよう。
 スカートの裾だけでも掴もうとした手が、宙をさ迷った。


「 ・・・また、相談に乗ってね・・・か・・・ 」


 仰いだ空は、悔しいほど青かった。
 笑われているようで・・・怒りよりも、悲痛なまでの寂しさがココロを支配する。








 俺の為、を思うなら


 どうかその手を・・・・・・俺に差し伸べて







03: どうしようもない、



けれど



鳥籠:青春5題








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  01 きみがすきだと叫びたい   02 青い空の下の、君の笑顔   03 どうしようもない、だけど
  04 手を繋いで何処までも   05 いつまでもこの時間が続けばいいのに