病める時も、健やかなる時も・・・、貴女を護り、愛し続けることを誓います。
唇に触れる熱から離れ、ゆっくりと瞳を開けると、まだ閉じたままのの顔。
睫毛が持ち上がり、私の姿を映すと、額へのキスに照れた様子で頬を染めた。
式でのキスは額か頬で、という牧師の言葉に、額がいいと希望したのはだった。
・・・正直物足りないと内心呟いたものの、彼女の愛らしい様子を見て、少しだけ満ち足りた気持ちになる。
仕方ありません。今はこれで我慢するとしますか、と自分を納得させた時。
「 陸遜!そんなんで観客が納得すると思ってんのか、あァン!? 」
・・・思いも寄らぬ野次に、がくりと肩が落ちた。
声のした方向をきっと睨むと、当然甘寧殿だ。隣にいた凌統殿が宥めるように声をかける。
「 まあまあ甘寧、厳粛な式なんだからさ。その要求はないんじゃないの? 」
「 んじゃ、てめえは納得できるってのかよ。違うだろ!?もっとこう、新婚だからこそぶちゅーっとな・・・ 」
「 まあ・・・そこは見せつけてほしいくらいだね。というわけで、せめてアンコール! 」
「 そうだ、アンコールアンコール!! 」
「 いい加減にしないか!凌統、甘寧!! 」
呂蒙さまの怒号が飛べば飛ぶほど、やんややんやと声が大きくなる。
そのうち、前列に居た孫策さままで「 いいぞー、どうせなら派手にやれ!! 」と叫んだものだから
( ちなみに孫堅さまは呵呵大笑するだけだった )収拾がつかなくなってきた。
「 ( 自分は見慣れている光景とはいえ・・・ ) 」
唖然とする新婦側の参列者と、野次が飛び交う新郎側の参列者・・・。
ちらり、と目をやると、先程までの赤面などどこへやら。
可哀そうなほど青くなっている新婦の顔色を見て、はあ、とひとつ溜息。
そして、の両肩へと手を置いた。
「 り・・・りく、そん・・・っ!! 」
大きく肩を震わせたは、今にも泣きだしそうな表情で私を見上げた。
自分に出来る最大級の『 極上笑顔 』で微笑んでみせる。
「 大丈夫ですよ、。たった今、神様に誓ったなかりじゃないですか。
私は、どんな時も貴女を守ります。一度深呼吸して、肩の力を抜いてください 」
私の言葉に首を傾げつつも頷いた素直なは、息を吸う。
置いていた手から、ようやく強張りがとれていくのが解った。
これでいい?と息を吐いた彼女の腰を引き寄せ・・・そっと耳打ち。
「 愛していますよ、。ですから・・・リクエストに応えてやりましょう 」
返事は待たない。すかさず食らいつくように口づけると、さすがの観衆も目を剥いたようだ。
おおお!と野太い声に混ざって、女性の悲鳴にも似た声が響く。
息苦しさも手伝って、真っ赤になったは咄嗟に身体を引こうとしたが、そうはさせない。
右手を腰に添え、左手で彼女の後頭部を抱え込んでしまえば、女性の力で逃れることは出来なかった。
「 ( 無理強いした分、あとできっと怒られるでしょうね・・・でも、 ) 」
甘寧殿や凌統殿に言われなくとも、私だってあの程度のキスじゃ満足できなかった。
好きな人と永遠の愛を誓う、今この瞬間。
もっとも神聖な儀式にふさわしい・・・心からの、情熱的なキスを送りたいと思うのです!
繰り返されるキスの嵐にノックアウトされたのか、とうとう観念したように身体を預けてきた。
油断している彼女の口内に侵入したのを見て、観客からひと際大きな声が上がった。
野次と歓声とが混じり合う教会。
その盛況さは蒼天を突き抜け、隣接する式場まで届いた・・・というのは後から聞いた話。
ディア ブライド
《挙式編》
( 今日のことが笑い話になるくらい、これから君と長い時間を過ごすのだろう )
title:fynch
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