ザザザザ・・・


 風の音。葉の擦れる音。荒い息遣い。
 僕らを取り巻く空気は、熱気に満ちていた。
 繋いで手は・・・もっともっと熱かった。


「 アレン 」


 乱れた呼吸の彼女が、眼前を走る僕の名を呼んだ。
 振り向くと、紅色に染めた頬がこっそり僕を欲情させる。


「 どこまで行くの? 」
「 もうすぐ、ですよ 」






 見せたい景色があるんです、と僕は彼女に声をかけた。
 ここから少し離れた場所なんですが、日暮れまでには戻ってこれる距離ですから。
 親友のリナリーも不在で、珍しく彼女一人でオフなのだ、ということを僕は知っていた。
 ・・・一瞬迷って。読んでいた本を、ぱたん、と閉じる。
 彼女は嬉しそうに微笑んで、頷いた。






「 ハァ、ハァ、ハァ・・・ 」


 散歩がてら、という気分で歩いていたはずなのに。
 次第に早足になり、駆け足になった。休まることなく、目的地を目指した。
 いつもなら・・・絶対に、そんなこと出来やしないのに。
 ・・・いつの間にか手を繋いでいた。


「 アレン 」


 彼女といるだけで、気持ちが高まった。
 彼女といるだけで、今の僕なら不可能なんてないんじゃないかと思った。


「 どこまで行くの? 」


 世界は僕らの、この瞬間のためだけに存在しているんじゃないかと思った。


「 もうすぐ、ですよ 」






 だから。
 そんな貴女を、最高に喜ばせたいから。






 流れる緑が、終焉を迎える。
 開けた世界。これが・・・僕の見せたかった、君の為の景色。
 繋いだ掌の力が、少しだけ緩まる。そして。


「 ・・・素敵 」


 感動に、それしか言葉に出来ない、とでもいうように。
 彼女は・・・静寂を破って、ぽつりと口にした。
 背中から吹き抜ける風に押されるように、一歩、また一歩踏み出す。








「 連れて来てくれて、ありがとう・・・アレン 」








 最高の笑顔と、君のその言葉を聴く瞬間だけを




 僕は、こんなにも恋焦がれていたんだ







04: 手をつないで、



どこまでも



鳥籠:青春5題








拍手、有難うございました。








  01 きみがすきだと叫びたい   02 青い空の下の、君の笑顔   03 どうしようもない、だけど
  04 手を繋いで何処までも   05 いつまでもこの時間が続けばいいのに