白煙が、天へと昇っていく。
 手を伸ばしたら捕まえることが出来そうだったのに。


 亡き人の、魂の姿を・・・・・・


「 おい 」


 終始無言だった私に声をかけたきたのは、神田。
 彼の団服は所々破れていて、灰色に煤けていた。
 それは、いかに激しい死闘を乗り越えてきたのかを物語っている。


 ド、スン


 瓦礫に身を預けている私の隣に、乱暴に腰掛けた。
 語ることも、語りかけることもなく。
 ただ、目の前の夕陽が沈んでいくの見つめる二人。


「 ・・・ねぇ 」


 沈黙を破ったのは、私の方だった。
 隣人の視線が、自分に注がれるのを感じた。


「 どうして、ヒトは死んでいくの? 」


 堰を切った言葉は、思考から溢れて唇を伝い落ちる。


「 いつになったら、この戦いは終わるの? 」


 傷つかない、ワケなんてないのに。
 誰にも、答えられるワケないのに。
 無意味だとわかってても、ぶつけられずにいられない。


「 ねぇ、神田!! 」






 ・・・違う。
 こんなことを、言いたいんじゃないのに。
 どうして私は、自ら大切なヒトを傷つけてしまうの?






「 ・・・・・・ 」


 いつものように怒鳴られて。
 きっとこの場を去ってしまうかと思っていたのに。
 神田は、何も言わなかった。去りもしなかった。


 泣き出した私の隣に・・・座っていた。


「 神田・・・ごめんなさい 」


 誰一人、死んで欲しくないの。
 町のヒトも、犠牲になったAKUMAの魂も、教団の仲間も・・・貴方も。
 愛しているから。心から愛しているから。


「 ・・・つまらないことを考えすぎるからだ 」


 厳しい口調とは裏腹に、吐き出された優しいセリフ。
 振り向いて彼を仰ぐ時に、コツン、と何かに当った。






 小指に触れた、熱。






 指先から、身体中の体温が上がっていく。
 驚くほどの、胸の早鐘。押さえつけようとすればするほど、鳴り響く。
 嗚呼、このままでもう少し居させて。どうか、彼が気がつきませんように。
 偶然触れた貴方の温もりが、涙じゃ洗い流せない腐ったココロを溶かしていく。








 ・・・ほら


 貴方も私も、今、生きている







05: いつまでもこの時間が



続けばいいのに



鳥籠:青春5題








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  01 きみがすきだと叫びたい   02 青い空の下の、君の笑顔   03 どうしようもない、だけど
  04 手を繋いで何処までも   05 いつまでもこの時間が続けばいいのに