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夕空に、ノンビリと漂った紫煙を眺めながら。
 
 俺は独り、目の前に広がった瓦礫の山と
 膝の上で気を失っている少女を見つめる。
 前髪が、汗を吸って額に張り付いていた。
 少し悩ましげに眠った彼女の頬に、左手を添えた。
 
 
 彼女の名前は・・・何といったか。
 とても綺麗な音だった。
 初めて逢った時、彼女がエクソシストだと知っていたのに
 また彼女の声を聞きたいと思った。
 ( 殺さなかった理由なんて、とても単純だ )
 2回目に逢った時、『 また逢えた 』と胸が高鳴った。
 彼女は仲間の遺体を抱えて、俺に『 殺してやる 』と叫んだ。
 
 
 
 
 
 
 ・・・いいよ、殺されてやっても。
 ・・・でもそれじゃあ、ダメなんだよな。お前は納得しないんだよな。
 
 
 
 
 
 
 欲しいモン、手に入れたら、素直に殺されてやってもいいよ。
 だからさ・・・・・・俺のモノになってよ。
 3度目。
 次に逢った時が、運命の瞬間だ。
 その時まで、お前が死んじゃってたら、意味ない約束かもしれないけどさ。
 その時まで、俺の気持ちが変わらずお前を欲していたら。
 意思なんて関係なく・・・さらっちゃうよ?
 
 
 
 
 
 
 この世界から
 
 
 
 
 
 
 ・・・そして、約束は果たされた。
 拒絶した彼女の意識を、底へと落として。
 深い眠りに落ちている間に、闇の世界へと引きずり込んでやろう。
 
 
 
 
 「 いいのォ?そんなことして。伯爵に怒られちゃうよ、ティッキー 」
 
 
 
 
 背後に現れたロードに振り向くことなく、空へと煙草を噴かせた。
 上昇気流に乗り、身体をくねらせて天高く昇っていく。
 
 
 
 
 「 説得する 」
 「 無茶なコト、言うなあ。相変わらず 」
 
 
 
 
 ロードに向かって紫煙を吹きかけると、『 最低〜 』と怒られた。
 俺は、彼女を起こさないようにそっと抱き起こして、闇への扉を開いた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 ・・・・・・説得でも何でもしてみせるさ
 
 
 彼女はきっと、俺を愛さない
 彼女はきっと、俺を見ない
 彼女はきっと、どんなに時間をかけようとも、俺のものにはならない
 
 
 それでも、構わない
 
 
 何百年も、何千年も・・・いやきっと、この世に生を受けた時から
 欲しくて欲しくて堪らなかったモノを
 
 
 
 
 
 
 俺は、ようやく見つけたのだから
 
 
 
 
 
 
 
02:赤い糸の上は
 
 わたれない
 
 
 chirpyより
 
 
 
 
 
 
 拍手、有難うございました。
 
 
 
 
 
 
 
 
 01 アイスのように溶けてしまいたかった
  02 赤い糸の上はわたれない
 03 生まれ変わって裸足で跳んで
  04 芽生えた心は浮かんで消えて
  05 君の毒に虜になって
 
 
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