流れは、まるで大きな河のよう。


 日差しを浴びて、艶やかな光を紡ぐ。
 せせらぎが聞こえてきても、今なら絶対驚かないわ。
 なーんてバカなことを考えながら、櫛を通す。
 さらら・・・と、黒髪が流れた。


「 ・・・キレイ 」


 うっとりと呟くと、案の定反論する。


「 男にキレイなんて言う奴があるか、阿呆 」


 いいじゃん、ケチ!だってだって、羨ましいんだもん!!
 神田は男の子なのに、誰もが憧れるような素敵なモノを持ってて。
 私は女の子なのに、女の子らしいところなんか一つもなくて。








 ・・・時々
 一緒にいて、とても苦しくなるの
 自分が、惨めな人間に思えちゃうの








「 私も・・・神田のように、なれたらな 」
「 あ? 」


 神田は、ちらりと振り向く。
 櫛を動かしていた手を止めて、彼の黒髪を眺めた。


「 凛としていて、ネコみたいにしなやかで、美人で・・・ 」
「 おい、どれも男に言うセリフじゃねぇっつってんだろうが 」
「 そしたら、私も・・・”可愛い”女の子になれたかなあ 」




 貴方の隣に立っていても、気後れなんかしない”ワタシ”に




 短い舌打ちが聞こえた。
 ぎくり、と身体を強張らせた時には、既に遅く。
 添えていた手を引っ張って、そのまま身体を落とす。


「 きゃ! 」


 ベッドに深く沈みこむと、ぎし、と音をたてた。
 覆いかぶさるように、神田は戸惑う私を抱き締める。


「 か・・・神田・・・そういう行為は、出来れば夜中に・・・ 」
「 本当に、馬鹿だな 」
「 ・・・馬鹿っていう奴が、馬鹿な・・・ 」
「 お前だって、キレイだよ 」


 何のことかわからなくて、きょとんとしていたら。
 触れ合わせていた耳が、熱を帯びていくのがわかった。


「 充分”可愛い”し・・・俺には、最高に魅力的だから 」


 逆光の彼が照れたように・・・ぎこちなく、微笑んだ。
 私を精一杯愛してくれている彼に、また自分を恥ずかしい、と思った。




 ・・・でも、それは・・・








「 神田、大好き 」








 私が”ワタシ”を好きになる、大きな一歩





03:生まれ変わって


裸足で飛んで



chirpyより








拍手、有難うございました。








  01 アイスのように溶けてしまいたかった   02 赤い糸の上はわたれない
  03 生まれ変わって裸足で跳んで   04 芽生えた心は浮かんで消えて   05 君の毒に虜になって