ぽた、ぽたり。


 床を濡らした2粒の涙。
 泣いているのは、私。
 縋りついて、泣いて、何て醜いの。


「 いい加減、離したら? 」


 それでも・・・


「 嫌 」


 学ランの裾を掴んで離さない私に、頭上から降る、冷たい言葉。
 雲雀はため息を一つ吐いて、その手をひゅ!と叩いた。
 痛みに、悲鳴を上げる暇もなく。
 ふらついた私の両手を、ねじ上げた!


「 う・・・くっ!! 」
「 僕の前に立ちはだかる者は、君であろうと許さない 」


 雲雀の手に、力が篭る。
 ギリ・・・と、骨のきしむ音がした。


「 ・・・僕が、負けるとでも思ってるの? 」


 頬と頬が触れ合う。
 その間に溢れた涙が伝って。
 一瞬の冷たさが、ぬくもりに溶けていった。
 雲雀は、囁く。


「 君の瞳には、僕の無様な姿が映っているの? 」


 離れた頬に、また一筋の涙。
 漆黒の闇色が、酷い顔をした私を映し出した。


「 ・・・ひ、ば・・・っ!! 」


 言い訳なんか、聞かないよ。
 塞がれた私の唇。黒髪が視界を奪って、瞳を閉じた。
 両手の呪縛を解いて、彼の腕が背中に回る。
 ・・・言葉とは裏腹な、優しいキス。








 そんな彼を、私は・・・・・・とても、愛している。








 銀の糸を絡めとって。
 赤い唇を、ぺろりと舐めた。


「 ・・・続きは、帰ってから 」


 座り込んだ私の頭を、撫でて。
 雲雀の双眸に、みるみる強い光が満ちていくのがわかった。
 オオカミに喰べられてしまった、私の一欠片の勇気は。


「 じゃあね 」


 ためらうことなく、振り返ることなく、去っていく背中。
 想いが、彼の中に宿っていると信じて、私は小さく祈った。









 ・・・・・・どうか、どうか、彼をお守り下さい





05:君の毒に虜になって


chirpyより








拍手、有難うございました。








  01 アイスのように溶けてしまいたかった   02 赤い糸の上はわたれない
  03 生まれ変わって裸足で跳んで   04 芽生えた心は浮かんで消えて   05 君の毒に虜になって