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 電気をつけることも忘れて、僕はバスルームに飛び込んだ
 
 
 
 「 タオルタオル・・・と、あった!! 」
 
 
 本当は少しでも綺麗なタオルを、と思ったのに、何色なのかも確認できない。
 部屋の入り口で、到着を待っていた彼女に差し出す。
 
 
 「 有難う!アレン 」
 「 さ、早く拭いて下さい 」
 
 
 うん、と笑って、彼女は頭に被った。
 長い髪から雫が零れて、床を濡らす。
 じわりと染み込んで、広がっていく様子を、ただ見つめていた。
 ・・・その雫にすら、嫉妬を覚えてしまう自分が情けない。
 
 
 「 ・・・アレン? 」
 
 
 大切だから。何より大切な、ヒトだから。
 ・・・自分の欲望より、彼女の気持ちを尊重したいんだ。
 
 
 「 どうしたの??アレン 」
 「 あ・・・いえ、何でも、ないです 」
 
 
 彼女の声に、我に返る。
 心配そうな顔で見上げている彼女に、にっこりと微笑ってみせる。
 すると、つられたように彼女も笑った。
 
 
 「 ・・・風邪、引いちゃうよ? 」
 
 
 自分の頭にタオルを乗せたまま、僕の頭へと手を伸ばす。
 子供の頭を拭くように、彼女は僕の髪を拭いた。
 頬に当たった髪の水気が、少しずつ取れていくのがわかる。
 ・・・タオルを通して伝わる掌の熱が、気持ち良かった。
 まるで、彼女に包まれているようで。
 その幸せに溺れてしまう前に、僕も彼女の頭へと手を伸ばした。
 
 
 「 僕も、お返しです 」
 「 きゃっ 」
 
 
 濡れて、ぺしゃんこになった髪の雫を拭き取る。
 頭の天辺から、毛先まで辿って、耳の裏から首元を伝る。
 
 
 「 ひぁ、ひゃははは!くすぐったい、くすっぐったいよ!! 」
 
 
 イヤイヤと首を振りながら、僕の腕から逃げるように腰をよじった。
 
 
 「 ダメです!ちゃんと乾かさないと!! 」
 「 アレン〜っ、勘弁して〜っ!!あははは・・・っ 」
 
 
 ぐ、っと無意識に引き寄せたら、彼女の顔が目の前にあって。
 故意でなかった分、僕は自分の行動に驚く。
 吐息がかかるほどの・・・距離。
 身体に、熱が宿る。彼女の頬も、みるみる朱に染まる。
 
 
 
 
 
 
 ・・・壊れてしまうだろうか
 今まで我慢してきた想いも、大切にしていた想いも
 この一瞬で、きっと世界は反転してしまう
 
 
 
 
 
 
 「 ア・・・アレ、ン・・・ 」
 
 
 
 
 
 
 ・・・壊してしまったとしても
 全ては、雨の所為だと
 どうか果てない記憶の海に投げ捨てて
 
 
 
 
 だから、今だけ
 
 
 僕が・・・・・・自分に、素直になること赦して
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 重なるシルエット
 静寂の中で、雨の音だけが部屋に満ちた
 
 
 
 
 
 
 
 
01:
雨が降ってる
 
 Air.より
 
 
 
 
 
 
 拍手、有難うございました。
 
 
 
 
 
 
 
 
 01 雨が降ってる
  02 過ぎた日の約束は
  03 ボーダーライン
  04 恋はオレンジ色
  05 戦う者へ
 
 
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