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 沈む意識の中で、彼女の涙を見た
 
 
 
 腰に回された腕をかいくぐるように、必死にもがいて。
 瀕死の俺へと、手を伸ばす。
 
 
 「 神田、神田、神田・・・っ!! 」
 
 
 ・・・馬鹿野郎。
 他人の心配をしている場合か?
 俺のコトなんか・・・どうでもいいから。
 
 
 「 イテテ、暴れるなって!・・・大丈夫、殺してないから 」
 
 
 俺は、その男を知っていた。
 実際に対面するのは、初めてだったが。
 
 
 
 
 
 
 
 
 ・・・いつだったか・・・ふと、彼女が呟いた。
 
 
 ” 私、いつか消えてしまうかもしれない ”
 
 
 最初は、冗談だと思った。冗談であって欲しい、と思った。
 柔らかい陽光に、白く、淡く・・・儚く、佇んだ彼女。
 触れば消えてしまう錯覚に囚われながら、おそるおそる手を伸ばす。
 
 
 ” ・・・俺が、護る ”
 
 
 はっと驚いたように顔を上げて・・・くしゃり、と微笑んだ。
 瞳に浮かんだ涙を堪えて、俺を真っ直ぐ見つめる。
 
 
 ” 有難う ”
 
 
 お互い頬を染めて、絡めた指と指。
 ・・・そんなに昔のコトではないのに。
 
 
 
 
 
 
 
 
 遠い過去のように思えるのは、なぜだろう・・・
 
 
 
 
 
 
 
 
 「 運が良ければ、助かるだろうよ・・・さ、いくぜ 」
 「 イヤっ!!神田、か・・・・・・・・・ 」
 
 
 プツリと途切れた、金切り声。
 二人の気配がなくなった。独り、取り残されたらしい。
 目の前に広がった血の海。
 自分の中に、よくこれだけの血が詰まっているもんだと感心してしまう。
 視界が朦朧としていく。想いと裏腹に、瞼が重くなっていく。
 
 
 
 
 ・・・・・・好きなオンナ、一人護れずに・・・俺は・・・・・・
 
 
 
 
 近づいてくる足音。
 ああ、足手まといだと置いてきた探索部隊か。
 邪険にしている探索部隊に助けられるなんて、運が良いのか悪いのか。
 
 
 「 か、神田殿!・・・担架を!それから至急本部に連絡しろ!! 」
 「 ・・・おい 」
 「 喋らないで下さい、傷にさわりますので 」
 
 
 いや、呪うべきは・・・他にある。
 彼女を取り戻すまで、俺は死ねない。
 
 
 「 俺を・・・何としてでも・・・助けろ 」
 
 
 強がりを言っても、心のどこかで安心したのか、意識が堕ちていく。
 首を傾げた探索部隊員を放っておいて、俺は瞼を閉じた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 ・・・泣いていた・・・アイツ・・・
 
 
 あの涙を拭って、笑顔を取りもどいてやるのは、俺の役目だ
 交わした約束を、もう一度取り戻すためにも
 
 
 
 
 きっと、きっと必ず・・・助けに行くから
 
 
 
 
 
 
 
 
 瞼の裏に貼りついた泣き顔に、心の奥で誓った
 
 
 
 
 
 
02:
過ぎた日の約束は
 
 Air.より
 
 
 
 
 
 
 拍手、有難うございました。
 
 
 
 
 
 
 
 
 01 雨が降ってる
  02 過ぎた日の約束は
  03 ボーダーライン
  04 恋はオレンジ色
  05 戦う者へ
 
 
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