マナを想うと、ココロが痛い。




親のいない僕の、親であり。
友達のいない僕の、友達であり。
こんな・・・左手を、そして僕自身を愛してくれた人。
大切だった。僕の人生の中で、最も。


・・・そう想っていたんだ、今、この瞬間まで。


「 アレンが、好き 」


そう、はにかんだ笑顔で言われて、僕の世界は逆転した。








入団した時、握手してくれた柔らかい掌。
( ぎゅ、と心を込めて握り締めてくれたのが忘れられなくて )


図書室でこっそり見てしまった、子供のような寝顔。
( いけないものを見てしまった気がして、ドキドキした )


励ましあいながら、共に潜り抜けた数々の戦場。
( ココロが廃れた時も、君が隣にいてくれたから・・・ )


身体を壊した時に作ってくれた、彼女の手料理。
( 苦手だ、って言ってたけれど、そんなことないですよ )


些細なことで喧嘩して、寂しくてどうしようもなかった夜。
( 仲直りできなかったら、僕は今どうなっていただろう )


ふと、抱き締めた時に鼻をくすぐった、彼女の匂い。
( あの時・・・僕の中で、何かが芽吹いたんだ )








僕、死ぬ・・・んじゃないのかな?
だって、君との思い出が、走馬灯のように頭を駆け巡るんです。
目の前の貴女が、一秒でも早く僕の答えを待っているのに!


「 ・・・あ・・・えっと・・・ 」


どんな答えを返せば良い?


僕は、貴女が好きです。それはホント。
でも・・・これは、『恋人』としての『好き』なのか?
それとも、『友達』としての『好き』なのか?
・・・自信が無いんです。








・・・・・・・・・マナ・・・・・・




僕は、怖いんです
大切なものが増えていくのが、大切な人が失われていくのが
あの時のように、嘆き悲しむことが・・・怖いんです




ここで彼女に『好き』と答えて、僕が死んでしまったら?
ここで彼女に『好き』と答えて、彼女が死んでしまったら?








・・・ああ、そうか


何だ、答えはもう出ているんじゃないか・・・・・・








僕は自嘲して、彼女の名前を呼んだ。
ハッと顔を上げた彼女は、真っ赤に頬を染めていて。


・・・そこがまた、愛しいと想った。






「 僕も、貴女が好きです 」












僕だって、本当は君が好きで好きで堪らなかった、らしい




そんな・・・当たり前の事実に、ようやく気付いたから






01:一人前に恋してる



( どちらにしても『 君が好き 』だと答える僕自身に )

1141より



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01 一人前に恋してる 02 俺だって男なんだよ 03 こども扱いのキスはやめて

04 早くおとなになりたい 05 俺を予約してみない?