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「 子供の頃、何になりたかった?? 」
 
 ・・・と、彼女。俺は動じることなく、六幻の手入れに集中する。
 唐突に質問したり、会話をかき乱すのは、彼女の悪い癖だと思っている。
 ( が、生憎、もう慣れた )
 
 
 「 さあな、考えたこともなかった 」
 
 
 そう答えると、ベッドに腰掛けていた彼女が笑った。
 そのままゴロン、と寝転ぶと、少し黄ばんだ天井を見上げる。
 
 
 「 だよねー、私もだよ・・・そんなこと、考えたことなかったな 」
 「 ・・・・・・ 」
 
 
 黒光りした刃に、自分が映っていた。
 これを・・・イノセンスを握りしめて、もうどのくらいが経っただろう。
 
 
 
 
 
 
 
 
 俺も彼女も、幼少期からエクソシストとして戦闘に参加した
 子供らしい夢も抱かず、親に甘える日々もなく
 ただ目の前の悲劇に、戦場を生き抜く現実に・・・釘付けだったから
 
 
 
 
 当然といえば、当然の結果なのかもしれない
 
 
 だけど、それは・・・とても悲しいことなのかもしれない、とも思う・・・
 
 
 
 
 
 
 
 
 鞘に収めると、カチンと六幻が音を立てた。
 俺は席を立つと、そのまま寝転んだ彼女の傍らに座る。
 振動に、彼女の身体が震えた。俺は、そっと彼女へと手を伸ばす。
 
 
 「 あんまり思い詰めると・・・ハゲるぞ 」
 「 ・・・それが女の子に対するセリフ?ドキドキして損したー 」
 「 うるせぇ、望みなら今、全部抜いてやる! 」
 「 きゃー、最低ーっっ!! 」
 
 
 甲高い声で、頭を撫で回す俺の掌を、追い払おうとした。
 俺のとは違う、柔らかな彼女の髪が、指に絡まる。
 
 
 
 
 その度に・・・ドキドキしているのは、こっちの方だ
 
 
 
 
 「 あのね、ひとつだけ、言えることがあるの 」
 
 
 ひとしきり暴れて、荒い息を吐いたまま、彼女は言った。
 
 
 「 あ? 」
 「 『幸せ』になりたいな 」
 
 
 ぽつん、と呟いたのは、心からの本音だったから。
 驚いた様子の俺に、彼女は照れたように舌を出した。
 
 
 「 ・・・なーんてね 」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 何もわからない未来に・・・賭けてみようか
 
 
 不安定な未来の自分たちに向けた、心許ない約束を
 どうせ信じるなら、『幸せ』なほうが良いに決まっているから
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 「 大丈夫、神田のお嫁さん♪なーんて言わないからさー! 」
 「 ・・・別に。俺は構わないぜ? 」
 
 
 一瞬。
 呆然としていた彼女の顔が、みるみる真っ赤になっていく。
 耐え切れず、両頬を押さえて俯く様子に、自然と唇の端が上がった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 堪らなく、愛しい彼女
 
 
 
 
 いつかやってくるかもしれない、幸せな未来でも
 ずっとずっと・・・・・・隣にいて欲しいから
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 陥落寸前の彼女の耳元で、俺は、『とっておき』を囁く・・・
 
 
 
 
 
 
 
01:「幸せになるなら、
 
 
 お前とがいい」
 
 
 ( ”神田のお嫁さん”の夢が叶う日・・・いつか、訪れるといいな )
 
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 拍手、有難うございました。
 
 
 
 
 
 
 
 
 01 「幸せになるなら、お前とがいい」
  02 「悪いね、好きな子は虐めたくなる性分で」
 03 「うーんと……じゃあキス10回分で」
  04 「ちょっと黙って目ぇ瞑れ」
 05 「あー……愛されてるって感じ」
 
 
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