「 好きなヒト?いるよ 」
「 へ!? 」


 オレンジジュースをずずーっと勢い良く吸って、
 ( 氷がごごご、と音を立てて転がっていく )
 彼女は含み笑いをしながら、俺の目を真っ直ぐ見つめた。
 見つめられた俺は、マヌケな返事に恥ずかしさを覚えつつ・・・




 ・・・・・・内心、物凄く、焦っているさっ!!




「 私だって、年頃の女の子だっもーん♪恋のひとつやふたつ・・・ 」


 と、切ないオンナの恋心とやらを熱く語りだしたけれど、
 それどころじゃない俺の耳は、当然シャットアウト。
 い、いや、落ち込むトコロはそこじゃない。問題は相手、さ!!


「 ・・・教団の、ヤツ?? 」
「 ううん、違うー 」
「 い、一般人、なんさ?? 」
「 それでもなーい 」
「 ま、さか・・・ノアとかAKUMAじゃねーだろ・・・? 」
「 ラビ・・・さすがにそこまで道、踏み外さないよ。死んじゃうよ、私 」


 ・・・あーっ、もう!ますますわかんねぇ!!
 陽気な彼女とは対照的に、俺は頭を抱える。
 ぐるぐる、答えを探して廻るアタマ。くらくら、眩暈を起こすヒトミ。
 混乱した俺を見かねたのか・・・彼女は、俺を覗き込んだ。


「 私が誰を好きなのか、気になるの?ラビ 」
「 え、そ、そりゃぁ・・・ 」


 彼女の唐突な質問。思わず素に戻って、たじろいだ。


「 どうして? 」
「 ・・・ど・・・どうして、って・・・ 」








 君が、好きだから








 答えはいたって、シンプル
 けれど・・・それを、今、ここで告白する勇気は・・・なかった


 こんなに人の多い、昼下がりのカフェとかじゃなくて
 ロマンチックな夜景でも眺めながら、とか・・・心の準備、とか








 俺だって、その・・・・・・年頃、なんさ








「 ・・・嘘だよ 」
「 え、何?? 」
「 嘘だってば。そんなに落ち込まないでよ 」


 絶句した俺を、一蹴する。思考回路は追いつかない。
 彼女は唇を持ち上げて、にやりと笑う。でも俺は・・・まだ、笑えない。


「 ・・・どこから、どこまでが・・・? 」
「 さあ。それは内緒 」










 華は、刺々しくも美しかった
 

 自分の指が刺されるのがわかっているのに
 それでも、触れずにはいられない・・・惹かれずには、いられない










 彼女という、『魅惑』な存在に








「 すいませーん、オレンジジュース追加でー 」


 通り過ぎたウェイトレスに、氷だけのグラスを持ち上げてみせる。
 コトン、とテーブルの上に置くと・・・そのまま、硬直した俺の拳に重ねた。
 水気を帯びた、彼女の掌は冷たかったのに。
 心臓がぴょこんと跳ねて、物凄い速さで身体中が熱くなっていく。
















「 ・・・ごめんね、ラビ 」
















 まるで詩でも口ずさんでいるのかと思うくらい


 でもね・・・、と彼女は付け足すように、さらりと告白する





02:「悪いね、好きな子は



虐めたくなる性分で」



( 彼女の真意を確かめられる余裕が、今の俺にはなくて・・・後悔 )

恋する台詞








拍手、有難うございました。








  01 「幸せになるなら、お前とがいい」   02 「悪いね、好きな子は虐めたくなる性分で」
  03 「うーんと……じゃあキス10回分で」   04 「ちょっと黙って目ぇ瞑れ」
  05 「あー……愛されてるって感じ」